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[プレミアリーグ参入戦]「勝ち切る力」磨く履正社、静岡学園に撃ち勝ち公式戦19連勝でプレミア王手!

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[12.14 高円宮杯プレミアリーグ参入戦1回戦 履正社高 4-3 静岡学園高 コカ広島ス]

 高円宮杯U-18サッカーリーグ2014 プレミアリーグ参入戦1回戦が14日、広島県内で開催され、プリンスリーグ関西優勝の履正社高(大阪)とプリンスリーグ東海2位の静岡学園高(静岡)との一戦は、履正社が4-3で撃ち勝った。履正社は15日の2回戦で前橋育英高(群馬)に勝てば、初のプレミアリーグ参入が決まる。

 昨年度の全国高校選手権8強メンバーの大半を残す履正社は今季、プリンスリーグ関西で序盤の3敗1分から見事に立て直し、破竹の14連勝でタイトル奪取。一方、静岡学園は3年間戦ったプレミアリーグから降格しながらも、プリンスリーグ東海の後半戦9試合を無敗で駆け抜けて同2位で参入戦進出を果たした。初のプレミアリーグ昇格を狙う履正社とプレミア復帰を懸けた静岡学園。ともに全国高校選手権出場を決めている注目校対決は「逃げ切るのではなくて、勝ち切るサッカー」(平野直樹監督)を目指す履正社が制した。

 周囲の注目度も上がる中で迎えた参入戦1回戦で静岡の名門を下してまた自信を掴んだ履正社のMF多田将希(3年)は15日の参入戦2回戦、そして選手権全国大会へ向けて「一個下(の世代)も十分プレミアで通用すると思う。お土産として残したいですね。(選手権へ向けた周囲からの期待は)感じてなくはないですね。きょう勝って自信になりましたし、狙えるんじゃないか、十分やれるぞと思う。(自分たちは)まだまだだし、時間もないですけど、できることを全部やって(選手権では)日本で一番長くサッカーしたいですね」と語り、主将の左SB小川明(3年)は「こんなもんでやっていたら日本一にはなれないと思う」とこの日の試合内容について反省しつつも、「大阪の高体連でプレミアにいるチームいない。プレミアに参入するのは大きいと思う。(15日に前橋育英を)しっかり倒してプレミアに参入したいと思います」と誓った。高校年代最高峰のリーグ戦であるプレミアリーグ参入まであと1勝。浪速の実力派がより高いレベルで個人、チームを育てるチャンスを掴もうとしている。

 前半、先に主導権を握ったのは履正社だった。PAの脇までボールを運び、そこからの連動した崩し。ラストパスを通せなくても着実にCKを獲得していく。そして、前半7本奪ったCKのうちの1本が、先制ゴールとなった。13分、履正社は10番FW牧野寛太(2年)の左CKが相手GKのミスを誘ってオウンゴールとなり、リードを奪う。静岡学園も16分に10番MF名古新太郎(3年)の右クロスのこぼれをFW薩川淳貴(2年)が左足で狙い、30分には右サイドを切れ込んだMF中澤史伝(3年)のラストパスのこぼれを名古が右足で撃ちこむ。チャンスもつくり返していた静岡学園だったが、中澤、MF旗手怜央(2年)のスピードある両ワイドが警戒され、また中央では相手の出足の速い守りにハマり、縦パス、クロスは履正社の平野監督も評価していた多田と田中駿汰(2年)の両MFや、CB安田拡斗(2年)、CB長尾悠平(3年)の前に次々と弾き返されてしまう。またセカンドボールを履正社に拾われると、スペースでボールを収める牧野やFW西村光明(2年)、MF川畑隼人(2年)に仕掛けられるなど苦しい時間帯が続いた。  

 そして後半3分、履正社はゴール正面右寄り、PAやや外側の位置でFW林大地(2年)がFKを獲得すると、キッカーの多田が壁の外側を巻く鮮やかな左足FKを決めて突き放す。だが、静岡学園は10分、MF西山大輝(2年)のスルーパスで抜け出した名古が左足シュートを決めて1点差。直後に怪我明けのため、ベンチスタートだったDF石渡旭主将(3年)とMF大坪岳(3年)を同時投入した静岡学園は13分、ディフェンスラインからボールを動かすと、左サイドへ飛び出したMF荒井大(2年)がアーリークロスを入れる。これにFW加納澪(2年)が反応すると、クリアしようとしたDFの足に当たって角度の代わったボールがそのままゴールへと吸い込まれた。

 さらに、こちらも怪我明けの主力MF本藤風太(3年)を投入して畳みかける静岡学園。だが履正社は17分、左サイドからクイックのスローインで抜け出した交代出場FW瀧本高志(3年)がパワフルなドリブルでゴールライン際を攻略すると、対応した相手DFがたまらずファウルを犯してPKが与えられた。このPKをキッカーの牧野が右足で左隅へ決めて3-2。さらに履正社は22分、牧野の左CKをファーサイドの長尾が競り勝つと、最後は瀧本が頭でコースを変えて4点目を奪った。

 静岡学園も名古、本藤を前線に上げ、中央からの切り崩しで反撃。運動量が落ち、ドリブルへの対応がやや甘くなった履正社に対し、静岡学園は37分に大坪のスルーパスで抜け出した本藤が決定的な左足シュートを放つなど、アタックの回数を増やす。そして39分、中央でセカンドボールを拾ったMF小寺将意(3年)のスルーパスから本藤が右足シュートを流し込んで1点差に迫る。完全に勢いに乗った静岡学園。だが履正社はしたたかに攻め返してチャンスをつくる。“時間稼ぎ”のためにサイドでボールをキープする“常套手段”を好まず、スペースでボールを受けた選手がゴール方向を向き直してから仕掛け、クロスやCKからダメ押し点を奪いに行く。5点目を奪うことはできなかったものの、試合終了間際に静岡学園DF加佐怜人(3年)が放った決定的なヘディングシュートはGK安川魁(3年)がキャッチして試合終了。注目対決を制し、また連勝記録を伸ばした。

 昨年度の高校選手権準々決勝で後半終了間際の失点によって四日市中央工高に追いつかれ、PK戦の末に敗退している履正社はその反省を武器に変えて、今年の好成績につなげている。技術と運動量、そして相手の心理含めて勝ち切ること。総体予選で敗れたあと、プリンスリーグ関西の13試合、選手権予選5試合、そして今大会での連勝は課題だった守備の強化と、目指してきた形の成果だ。ただ、より選手たちに成長を求める指揮官は「(きょうは)走り切れなかったし、3失点してしまった。勝ち切るサッカーではなくて、逃げ切るサッカーになってしまったのは残念」と及第点を与えず、「もう一歩。もっとソツのないゲームをして欲しい。選手権までもう2ランクアップしてほしい」と高い期待を口にしていた。

(取材・文 吉田太郎)
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