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日本に無敗のクロアチア代表スタンコビッチ監督「結果よりも、内容が重要」

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 フットサルクロアチア代表は、18日に駒沢体育館でフットサル日本代表と親善試合を行う。16日に来日したクロアチア代表は、17日に試合会場で前日トレーニングを行った。練習後、取材に応じたマト・スタンコビッチ監督は、かつてリビア代表を指揮していたときに日本代表と対戦し、1勝1分の結果を出している。今回は他国リーグでプレーする複数の選手を、クラブの事情により招集できなかったが、「次の欧州選手権に向けたスタートに位置付けていて、非常に重要視している」と、日本との2試合への意気込みを語っている。

[写真]日本と対戦するクロアチア代表。後列中央がスタンコビッチ監督

以下、インタビュー

―日本について知っていることは?
「私はリビア代表の監督をしていた2009年に2試合、日本代表と対戦しているんだ。1試合目は私たちが勝って(6-3)、2試合目は3-3の引き分けだった。それから対戦はしていない。それでも、日本についてはよく知っている。過去4年間アジアのチャンピオンだし、10月にクウェートで行われた大会も見に行っていたからね」

―知っている選手はいますか?
「ミゲル・ロドリゴ監督は、世界でも最高の監督だ。すべての監督がそうであるだろうが、決して一人の選手に頼るようなチームづくりはしない。多くの良い選手が構成するチームをつくろうとする。日本の試合はたくさん見たし、アジア選手権の決勝でイランに勝った試合も見た。日本は世界ランキングでも9位にいて、クロアチアは16位だ。私たちは、日本と対戦できるこの遠征を、次の欧州選手権に向けたスタートに位置付けていて、非常に重要視している」

―クロアチア代表は、どんなスタイルを確立しようとしている?
「まず、日本サッカー協会に呼んでもらえたことを感謝したい。次に、申し訳ないと思っている。というのは、今回はFIFAの定めた国際Aマッチデーではない(※フットサルに現時点で国際Aマッチデーはない)ため、クウェートやイタリアといったクロアチア以外のリーグでプレーしている選手たちを招集できなかった。ベストメンバーをそろえられなかったんだ。その一方で、若い選手たちを多く呼ぶことができた。相手にプレッシャーをかけ、スピードがあり、1タッチ、2タッチと少ないタッチ数でボールを運ぶような、モダンなスタイルを心掛けたいと思っている」

―この2試合は、どう戦う?
「何も隠すことはない。選手たちには、すべての力を出し切ってもらい、試合を見に来た観客に楽しんでもらいたい。『良い試合を見たな』と思って帰ってもらえるといいね」

―日本と戦ううえで警戒することは?
「公式戦であれば、スコアを気にするだろう。ただ、明日は親善試合だから、結果はそれほど気にしない。それよりも、どんな試合をするかが重要だ。次の大会に向けてチームをつくっていくうえで、つながっていく発見を探したい」

―来日から2日目で初戦があり、その2日後には再び試合とスケジュールはハードだが?
「確かに大変だね。でも、親善試合だから問題ない。ミゲル監督は私の大事な友人だし、日本に来ることができてうれしい。できれば、今度は日本代表にもクロアチアに来てもらいたいね。日本の環境は素晴らしいし、プレーするために来ているから問題ないよ。公式な大きな大会であれば、このスケジュールは勘弁願いたいが、親善試合だからまったく問題ない」

―クロアチアでは、どれくらいフットサルが盛り上がっている?
「この数年で盛り上がってきているね。2012年に欧州選手権がクロアチアで開催され、そこで私たちは準決勝まで勝ち進んだからだ。2014年のベルギー大会でも、8強まで勝ち進んだ。そこでも前回大会優勝のスペインと引き分けるなど、結果を出して世界を驚かせた。それまでフットサルはそれほど人気があったわけではないけど、良い結果を出しているし、欧州のランキングでも16位から4位までジャンプアップした。私たちの国は人口450万人の小さな国だ。日本は東京だけでも、1300万人もいるだろう? その小さな国にとっては、十分な成果で、人気も出てきている。国内のリーグ戦には、年間10万人が観戦しに来ているし、イタリア代表との試合は2万人が集まったよ」

―クロアチアでは、子供たちはサッカーを始める?
「クロアチアはフットサルにもU-21代表、U-17代表、U-15代表がある。また、国内トップリーグに所属するすべてのクラブに、下部組織をつくることを義務付けている。だから、子供たちもフットサルをプレーする子供は多い。フットサルとサッカーの両方をプレーしている子もいるよ。でも、私は個人的な意見として、良い選手になるためには、最初はフットサルをプレーするべきだと思っている」

―監督自身は、フットサルとどうかかわってきた?
「私はスポーツ大学でサッカーとフットサルをプレーもしていた。それから、フットサルだけをプレーすることを選び、引退後にフットサルコーチを始めた。クラブの指揮を執って、5年連続でタイトルを獲得した。それが評価されてリビア代表の監督となり、アフリカ王者になり、2度アラビア王者にもなった。そこから、今度はクロアチア代表の監督になった。最初は欧州のランキングで24位だったが、今は4位になっている」

―なぜ、リビア協会は監督として招いてくれたのか?
「たしかに、フットサル界で働くためには、ブラジル人か、スペイン人でなければ難しいことだね(笑)。ブラジルやスペインで生まれたら、良いコーチだと分かるだろう。ところが、リビアにはその考えすらないほど、フットサルの知識がなかったんだ。私がリビアに行ったとき、何もなかった。まさにゼロからのスタートさ。リビア協会は、世界でどこが一番強いかを知らなかった。もし知っていたら、彼らは私を招聘せずに、ブラジル人かスペイン人を招聘していただろう (笑)。たまたま、クロアチア人のサッカーコーチがリビアにいて、彼が推薦してくれたことで、リビア協会から誘いをもらったんだ。でも、最初は大変だったよ。選手選考にしても、自分で車に乗って、ある町のストリートサッカーを見る。そこで3人くらい選手を選び、今度は別の街に行き、5人選ぶ。そういった選考を繰り返し、首都のトリポリに100人の選手を集めたんだ。そこでセレクションを1か月行い、20人を選抜した。そこからアフリカ選手権に向けて、チームはスタートした。そして6か月後、アフリカ王者になったんだ。2008年のW杯にも出て、私はリビアのスポーツ界で初めて世界大会に出た監督になったよ」

―ミゲル・ロドリゴ監督とは、いつ知り合いになった?
「リビアで2試合したときだ。それから電話やメールをするようになった」

―ミゲル・ロドリゴ監督は、クロアチアは世界ランキング16位だが、もっと上にいるべきチームと話していたが?
「そうだね。ランキングは、親善試合も計算されているはずだ。ブラジル、イタリア、スペイン、日本のような強いチームと試合をしたら、私たちの選手たちは成長し、私も得られるものは大きい。でも、弱い国と対戦すれば、ランキングは上がるかもしれないが、得られるものはない。言っていることが分かるかい? それが私の哲学だ。重要なのは、試合によって試合で何を得られるかであって、ランキングを上げることじゃないと思っているよ」

(取材・文 河合拓)

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