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八百長疑惑に関するアギーレ監督会見要旨

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 2011年5月21日に行われたリーガ・エスパニョーラ最終節のレバンテ対サラゴサ戦をめぐる八百長疑惑でスペイン検察当局から告発された日本代表のハビエル・アギーレ監督が27日、都内で記者会見を行った。

以下、会見要旨

ハビエル・アギーレ監督
「本日までみなさんの前で発言することがなかったのは正式なものが何もなかったからだ。このたび訴状が提出されたということで、私の意見を申し上げたいと思っている。

 私の弁護士から聞いたが、私はこれまでスペインあるいは欧州のリーグ、大会などで450試合指揮を執ったが、そのうちの1試合が調査されているということだった。調査されている試合に関わった36人の選手プラス、クラブ関係者ら5人と法人としてのサラゴサがこれから調査されるということだった。それが1月になると予想している。そこで41人の個人が証言する。この証言が終わったところで、裁判官が裁判を始めるかどうかを決定する。本格的な調査、捜査は1月に入ってからになると思う。その調査がどれぐらいの期間に及ぶのかはまだだれも分からない。そして調査が終わったところでこの件が終了するのか、裁判に発展するのかということもまだだれにも分からない。

 私はスペインサッカーの正直さとクリーンなところを信じていると申し上げたい。私は12年間、スペインのサッカーにいたが、倫理やプロフェッショナリズムに反するものは認知していない。試合に勝つための唯一の方法は努力だ。私はだれにも何もプレゼントされていないし、それを望んでもいない。私はスペイン当局に協力し、この件を最後まで見守りたいと思っている。

 そして私に対するサポートを表明してくれた選手、監督、幹部、友人、家族に感謝したい。サポーターの方々には落ち着いてくださいとお願いしたい。サポーターの方々の力がアジア杯連覇のために必要だと思う。そして私は日本がもう一度アジア杯を制覇できるように、集中して準備していくだけだと思っている。

 本日の質疑応答で答えられない質問もある。その理解をお願いしたい。スペインにいる弁護士からの勧めで、裁判でのみ発言するようにということもある」

―口座にボーナスの形でお金が振り込まれているという報道があったが、自身の口座の確認はしたのか?
「こちらは裁判で司法当局に対して答えたい。そのご理解をお願いしたい。私がそこで発言すれば、それはメディアに載るので、それをお待ちいただければと思う」

―サッカーファンはクリーンであると信じていいのか?
「もちろんです。私はプロサッカーに関わって39年だ。スペイン、メキシコ、アメリカ、日本で仕事をしている。この39年の中に汚点はまったくない。それは信じてほしい」

―予審開始が1月になるだろうということだが、アジア杯中に調査の要請を受けた場合はどうするか?
「弁護士の話によると、仕事には影響しないところで(裁判所に)呼んでいただけるということだった。アジア杯中も、アジア杯を優勝するための仕事以外のところに1分も割こうとは思っていない。本日の会見が終わってから、100%アジア杯のための状態になる」

―アジア杯以降でも日本代表の強化に影響が出る可能性もあるが? 選手も不安に思っていると思うが、29日から始まる合宿では選手にどういう姿勢で臨むか?
「選手たちに伝えるのは今、私が発言していることとまったく同じことだ。私は落ち着いているし、長いキャリアがある中でスペインのサッカーがクリーンであるということを確信している。サッカーの監督だから、私は現場で仕事をすることに集中している。私が今、発言していることの裏付けを取るために、みなさんには私のキャリアの39年間を調査していただきたいと思う。我々は今後、証言しないといけないという状況があると思うが、それはあらゆる形で証言できる。だから代表監督の仕事に影響することはまったくない。それは100%保証する」

―今後の進展が見通せない中で、監督自身は次のW杯まで指揮を執れると確信しているか?
「もちろんだ。この問題によって私の監督の仕事に影響があったり、睡眠時間が削られたりするということはまったくない。私自身も1か月半か、2か月ほど前にメディアを通じてこの件を知った。39年間、毎週末、私は戦い続けてきた。1000試合以上になる。そういう事実があるので、私は落ち着いている。こういった状況は私自身にとっても新たなものだが、問題になっている試合にもちろん私が関わっていたので、こういう状況になっている。それに関する質問にはあらゆるところで答えていこうと思っているが、今は日本代表に集中したい。日本代表にエネルギーを注入し、まずアジア杯、そのあとはW杯予選を戦いたい。仕事にも選手にもサポーターの方々にも協会にも私は満足して、非常にいい環境で仕事をさせていただいているので、私の持っているエネルギーのすべてを日本代表の仕事に注入したい」

―捜査の結果、潔白が証明できなかった場合、監督として身を引くという決断をすることも想定しているか?
「それは想定の話なので、お答えすることはできない。私は今、発言しているが、そういった想定の話はできない。39年間、私が仕事を辞任したことは一度もない。繰り返しになるが、私は落ち着いている」

―このような疑いの段階で日本代表に良くない影響を与えているとは感じないか?
「そういうことはないと私は思っている。それまでにも443試合戦っているし、キャリアで考えると、1000試合戦っている。その中で、その試合で何か私が悪いことをしたと考える要素がない」

―15日に告発されたからどう過ごしていたのか? 29日から始まる合宿で大仁会長が選手に説明するということだが?
「15日から本日までの過ごし方についてだが、まず協会の弁護士、私のスペインの弁護士と話をした。その結果、落ち着いていていいということを聞いた。私自身、もともと落ち着いていたし、自分のキャリアのことを顧みても、まったく問題ないと思っているので、落ち着いた気持ちで試合の映像を見たり、練習の準備をしたりしていた。

 大仁会長は会長としてメディアの方々と話をする、あるいは選手たちと話をするという権利を実行するのだと思う。そういう権利はもちろん会長にあるので、とても良いことだと思う。選手たちにとっても、この件に関して説明があるほうがいいと私も思っている。これから調査が始まるという段階だが、その調査の結果、裁判が始まるかどうかはまだ分からない。その間、私は努力して仕事をこなしたいと思っている」

―告発状によると監督の口座に8万5000ユーロが2度に渡って振り込まれたとあるが、口座にお金が振り込まれた事実はあったのか?
「申し訳ないが、弁護士のアドバイスによって答えることができない。そういった詳細については司法当局に対して発言したい。ただ、司法当局に同じ質問をされた場合も、私は落ち着いた気持ちで答えられる。私は自分のことをよく分かっているので、自分を疑うことはまったくない。その日、どういったことが起こったのかは自分の中でハッキリしている」

―協会が後任をリストアップしているということについてはどう思うか?
「それに関しては初耳なので答えられない。私は私としてアジア杯に向けて準備していくだけだ」

―なぜこの問題が監督に降りかかったと考えるか?
「私が指揮を執った450試合の中の1試合がこの試合だったからだ。その現場にいたからだ。時間の経過とともにすべてがハッキリして、落ち着いて仕事ができる状況を望んでいる。私自身も、みなさんと同じようにこの状況に驚いている」

―450試合のうちの1試合がクローズアップされているというが、サラゴサが残留を決めた試合で覚えていることは?
「450試合どの試合も変わらず、同じように勝ちに行った試合だ。勝つための準備を行い、勝つための交代を行った。非常に密度の高い試合で、相手キーパーが素晴らしいセービングを見せた。こちらの得点は、キーパーが止めることができない素晴らしい2得点だった。その後、1点押し込まれ、試合終盤まで危ない状況だったが、昨日のことのようによく覚えている。両チームとも勝つために戦い、サラゴサのサポーターもバレンシアまで1万2000人駆けつけた。非常に雰囲気のあった試合だった。非常に密度の高い試合で、苦しんだが、最後に勝利をつかむことができた試合だった。私が(サラゴサの監督に)就任してから長い道のりだった。最下位のチームを最終節でその状況まで持っていき、最後に残留を決めることができた」

―この状況がしばらく続くと思うが、潔白を示すために何か努力をするか? アジア杯以降について協会と話をすることは?
「私の努力、力、エネルギーはすべてアジア杯に注入する。サッカー以外のところでは1分も無駄にしたくない。アジア杯が終了すれば、そこからの目標がまたあるので、そこに向かっていきたい。私はメキシコのクラブ、メキシコ代表、スペインのクラブ、そしてアメリカのクラブで仕事をしたが、契約の途中で辞めることは一度もなかった。私はプロフェッショナルで、契約を守る人間だ。今まで関わってきた選手、コーチングスタッフ、クラブの幹部に問い合わせてもらえれば分かると思う。唯一の真実が日々の努力であることが分かると思う。それが試合に勝つ唯一の秘訣だ」

―口座に振り込まれたことは知っているが、それに手を付けなかったのか。あるいは会長に返したのか。それとも振り込まれたことはまったく知らなかったのか。
「繰り返すが、それに関しては司法当局に答えたい。3か月前からしか私のことを知らないから、そうやって繰り返して質問されると思うが、30年間私のことを知っていれば、そういう質問はしないと思う」

―日本では大騒動になっているが、この状況についてはどう考えるか?
「3シーズン前の、とある試合が調査されているという段階だ。その試合に関わっていた36人の選手、監督であった私、プラス4人のクラブ関係者が調査の対象になっている。相手の監督はそのとき出場停止だったので含まれていない。私のことをよく知っているスペイン、メキシコ、アメリカの方々にはこういった質問はされていない。日本では私のことがあまり知られていないということで、このような会見を設け、質問を受けることになったが、私自身は落ち着いている。あとは時間の経過とともに状況を見守っていきたい。あの試合に私は関わっていたので、証言するときには私の視点からどういうことが起こったのかを説明するだけだ。それを説明することによって日本代表の仕事が影響される、時間を取られるということは一切ない。あとは時間が経過するのを待つのみだ」

―これだけの騒動になっていて、日本代表のサポーターや選手、スポンサーに対して申し訳ないという気持ちは?
「これが大騒動だというふうに私は思っていなかった。スペインでもメキシコでもアメリカでもスキャンダルになっていないのに、日本でこうやってスキャンダルになっているということ。私にとっては非常にクリアな状況だ。3シーズン前の、とある1試合が調査されていて、その試合に関わっていた人々が呼ばれて、証言するということ。そのときを待てば、事実がすべて明るみに出てくると思うので、それをお待ちいただきたいと思っている。あまり慌てて、今、憶測で話をしてしまうのはよくないと思う。スポンサーの方々、選手、サポーターの方々には全員で一丸となってアジア杯を戦おうと言いたい。それ以外のところは時間が経過するのを待って、結果を待つしかない」

―真実が明らかになるまでかなりの時間がかかりそうだが、それまで身を引くような考えは?
「選手たちは試合で戦い続けている。この試合に関わった選手たちは今でも試合に出ているし、このような質問で責められてはいない。毎週末、通常どおり彼らは戦っている。サラゴサの幹部も今までどおり幹部としての仕事を続けている。その試合のレフェリーも今でも笛を吹いている。なぜ彼らと同じように私も仕事を続けることができないのか。有罪を証明されるまでは、何人たりとも無罪だと思うので、それまで仕事をする権利はあると思う。推定無罪というのは法によって定められている。有罪が証明されるまでは無罪だ。

 例えば、私の財布が今ここでなくなったとすれば、財布が現れるまでだれも部屋から出るなということにはならない。みなさんもそれぞれ仕事を続けないといけない。財布がなくなったら調査しないといけないが、仕事は続けないといけない。この試合に出場していた選手でチャンピオンズリーグを戦っている選手もいる。それでいいと思う。家に引きこもっている必要はないと思う。私も後悔するようなことは何もしていないので、仕事を続けたいと思っている」

(取材・文 西山紘平)

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