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[選手権]流経柏が作陽との死闘制す…2-0から逆転許すも後半ATに追いつきPK戦勝利

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[12.31 全国高校選手権1回戦 流通経済大柏高3-3(PK8-7)作陽高 フクアリ]

 第93回全国高校サッカー選手権は31日、各地で1回戦を行い、フクダ電子アリーナの第1試合では流通経済大柏高(千葉)と作陽高(岡山)が対戦した。1回戦屈指の好カードは流通経済大柏が2点を先行するも、作陽が3ゴールを奪って逆転。しかし、流通経済大柏も後半アディショナルタイムに途中出場のFW福井崇志(3年)が劇的な同点ゴールを決め、土壇場で3-3の同点に追いついた。8人目までもつれ込んだPK戦を流通経済大柏が8-7で制し、初戦を突破。1月2日の2回戦では矢板中央高(栃木)と対戦する。

 序盤の主導権を握ったのは流通経済大柏だった。運動量と球際の競り合い、セカンドボールで優位に立ち、作陽を押し込む。前半21分にはDF本村武揚(2年)の右クロスから相手DFの背後を取ったFW高沢優也(3年)が左足ダイレクトでシュート。豪快にゴールネットを揺らし、先制点を奪った。

 一気にたたみかける流通経済大柏は前半25分、ハーフウェーライン付近からMF小川諒也(3年=F東京内定)がゴール前にFKを放り込むと、DF山田健人(3年)が頭で落とし、さらに高沢がヘディングでつないだボールを本村が頭で押し込んだ。空中戦に3度競り勝って生まれた追加点。しかし、得点場面で頭部を打った本村がいったんピッチの外へ。すぐにプレーに戻ったが、直後に今度は競り合いで腰を痛め、前半33分に交代を余儀なくされた。

 2点を追う展開となった作陽も直後の前半27分にセットプレーの流れからDF谷口翔大(3年)の左クロスのこぼれ球をDF山下裕司(3年)が右足で押し込み、1点を返す。さらに前半28分には「ケガをしていてフル出場は難しい」(野村雅之監督)というFW浜野雄太(3年)を投入し、一気に流れを引き寄せた。

 1-2で折り返した後半4分、MF伊藤涼太郎(2年)の左CKからゴール前にこぼれたボールを山下が倒れ込みながら左足でシュート。決定的な場面だったが、ボールはクロスバーの上を越える。流通経済大柏も同7分、後半開始から途中出場したMF相澤祥太(3年)が左45度の位置から右足で直接FKを狙うが、わずかにゴール左へ外れた。

 一進一退の攻防が続く中、流通経済大柏は後半17分、千葉県予選の全3試合に途中出場で決勝点を決めているスーパーサブの福井を投入。高沢を左サイドハーフに下げる攻撃的な采配で3点目を狙いに行った。

 ところが後半23分、作陽は浜野の横パスから伊藤涼が右足を一閃。PA手前から弾丸ミドルをゴールネットに突き刺し、2-2の同点に追いついた。2点差を追いつき、勢いに乗る作陽。すると迎えた後半33分、左サイド深い位置でボールをキープした浜野がマイナスに戻し、伊藤涼がドリブルで仕掛ける。相手選手の股間を抜き、PA左からエリア内に切れ込んだところで右足でループシュート。これがGKの頭上を越えて鮮やかにファーサイドのゴールネットへ吸い込まれ、3-2と逆転に成功した。

 2点リードをひっくり返された流通経済大柏も後半35分、小川がPA内でドリブルを仕掛け、左足を振り抜くが、GK西本圭斗(1年)の好セーブに阻まれる。これで万事休したかと思われたが、後半アディショナルタイム3分、PA内左から高沢がゴール前に折り返すと、相手GKが弾いたボールを福井が左足で押し込み、土壇場で3-3の同点に追いついた。

 直後に後半終了のホイッスルが鳴り、試合はPK戦にもつれ込んだ。流通経済大柏はPK戦の開始前に右膝を負傷したGK鳥井翔太(3年)に代えてGK瀬口隼季(2年)を投入(競技規則では、交代枠が残っている場合、PK戦を行っているときもGKの負傷時に限り、GKの交代が認められている)。PK戦は両チームが5人目まで全員成功し、サドンデスへ。7人目まで全員が決めて迎えた8人目、先攻の作陽は谷口がGKに止められたのに対し、後攻の流通経済大柏は劇的同点弾の福井が落ち着いてゴール右へ蹴り込んだ。PK8-7。死闘を制した流通経済大柏が初戦を突破し、2回戦へ駒を進めた。

 試合後、報道陣の前に現れた流通経済大柏の本田裕一郎監督は「すごい試合でしたね」と第一声。「毎回、こんな試合で肝を冷やします」と苦笑いを浮かべた。千葉県予選でも初戦となった準々決勝・柏日体戦(2-1)、準決勝・習志野戦(2-1)ともに後半アディショナルタイムに決勝点。市立船橋との決勝(3-2)も2点ビハインドを跳ね返す大逆転勝利だった。

 PK戦に関しても「こんなにPKが下手な代はないぐらい。毎日、練習しているけど、日替わり交代で外していた」と勝算があったわけではなかったという。しかもPK戦直前にGKが負傷交代するアクシデント。4大会ぶりの出場となった全国高校選手権初戦は、まさに薄氷を踏む思いで勝ち上がった。

 一方で、2大会ぶり出場の作陽は一時は2点差を逆転しながらPK戦で敗れ、初戦敗退。野村監督は「トータルで次に進めるか、進めないか。最終的には完全に勝ち切る力がなかった」と試合を総括し、本田監督も「作陽さんは本当にいいチームだった。1回戦で帰るにはもったいないチーム」と称えていた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)
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