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[選手権]中津東が悲願の初白星…“すっぽんマンツー”で青森山田を封じる

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[12.31 全国高校選手権1回戦 青森山田高 1-1(PK2-4) 中津東高 駒場]

 第93回全国高校サッカー選手権の1回戦が31日に各地で行われ、浦和駒場スタジアムの第1試合で、青森山田高(青森)と中津東高(大分)が対戦した。前半33分に中津東が先制した試合は、試合終了間際に青森山田が追い付き、勝負の行方はPK戦に持ち込まれた。迎えたPK戦を4-2で制した中津東が、選手権出場4度目で悲願の初勝利を挙げた。2回戦に駒を進めた中津東は、2日に郡山高(奈良)と対戦する。

 相手は強豪校の青森山田。堅守速攻を謳う中津東は特異な守備で、相手攻撃を防ごうとした。青森山田の前線に配されたFW松木駿之介(3年)にはDF河野史勇太(3年)、FW丹代藍人(3年)にはDF山田大雅(2年)、そしてMF野口雄輝(3年)にはDF福井康平(3年)がマンツーマンで監視下に置く。それだけではなく相手の2列目、さらにSBにもマンツーマンで対応。青森山田の選手で自由にボールを受けられるのは、2CBのDF平松遼太郎(3年)とDF菊池流帆(3年)、ボランチのMF岸本悠生(3年)に限られたが、彼らにも2トップのFW山本隼斗(3年)とFW松浪竜希(2年)が激しくプレッシャーを掛けて決して自由を与えなかった。

 青森山田が相手だからの特別措置ではなく、中津東の松田雄一監督は普段どおりのスタイルだと話している。「県予選のときから、何番には誰がつこうというのは決めています。マークの受け渡しができれば、受け渡すことも考えていますが、それができなければついて行く形でやっています」。その言葉どおり、狙いを定めた相手を執拗に追い掛け回して自由を奪い取る。青森山田にボールを持たれる時間こそ長かったものの、簡単にはPA内までの侵入を許さなかった。

 なかなか攻撃の形を作れない青森山田は最終ラインから前線へのロングパスを試みるが、ここで効いたのがフリーマンのDF松永康汰(2年)だった。最終ラインに配された松永康は唯一特定のマーカーを持たずに、的確なポジショニングと秀逸なカバーリングで危機の芽を何度も摘み取った。

 そして、守備でリズムを生んだ中津東が、前半33分に先制に成功する。右サイドのMF泉成哉(3年)からボールを受けたMF湯口泰成(2年)が果敢に狙ったシュートは相手DFにブロックされるも、そのこぼれ球をMF奥尚輝(3年)が冷静に流し込んで1-0とした。

 後半に入ってもスタミナは落ちることなく、マンツーマンディフェンスで青森山田の攻撃を封じ込める。細かいパス回しに翻ろうされそうになるだけでなく、野口の個人技に突破を許す場面を作られながらも、1人が抜かれたら、すぐさま周囲の味方がカバーに入って簡単にはシュートまでは持ち込ませない。後半18分には、ここまでゴールを守っていたGK久保政博(2年)が負傷交代するアクシデントに見舞われたが、代わりに入ったGK小倉海斗(3年)が体を張った守備でゴールマウスを守った。

 しかし、このまま逃げ切るかと思われた後半37分に青森山田に同点に追い付かれる。投入されたばかりのDF原山海里(2年)が、驚異的な飛距離を誇るロングスローを投げ入れると、こちらも途中出場のFW鈴木将馬(3年)に豪快にヘディングで合わせられて、スコアを振り出しに戻された。「あのロングスローは計算に入れていなくて、まさかあそこまで飛んで来るとは思っていませんでした」と松田監督も脱帽するしかなかった。

 セットプレーから失点したものの流れの中からは得点を許さずに1-1のまま、試合はPK戦に突入する。ここで途中出場の小倉が相手のシュートを2本ストップ。PK戦を4-2で制し、選手権出場4度目にして悲願の初白星を獲得した。

 歴史的な勝利を挙げた一戦を振り返った指揮官は、「PK戦で『自信のないのは手を挙げろ』と言ったら、何人か手を挙げたんですよ(笑)。でも、試合を通して選手たちは本当に堂々とした戦いを見せてくれました」とおどけながらも選手たちを称賛すると、「青森山田さんと対戦して、そこで1勝ということしか考えていませんでした。ただ、これから対戦相手の分析を進め、中津東の歴史を変えていきたいと思います」と次戦で選手権2勝目を目指す。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 折戸岳彦)
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