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[選手権]元Jリーガー指揮官の執念…「メンタリティがある」中京大中京が長崎総科大附下す

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[12.31 全国高校選手権1回戦 中京大中京1-0長崎総科大附 NACK]

 第93回全国高校サッカー選手権大会の1回戦が31日に行われ、NACK5スタジアム大宮の第2試合では、中京大中京高(愛知)が長崎総合科学大附高(長崎)を1-0で退けた。1月2日の2回戦では、米子北高(鳥取)と対戦する。

 3年ぶりの出場となる中京大中京高を率いるのは、かつて名古屋グランパスなどで活躍し、“ミスター・グランパス”とまで呼ばれた岡山哲也監督だ。「タフなゲームだった」。ただまずは初戦を突破したことで、「嬉しいのと、ホッとしたのと、両方ですね」と白い歯もこぼしてみせた。

 緊張からか、互いに動きの固い序盤となった。そんな中で長崎総科大附が先に動く。前半21分、普段のパフォーマンスが出せていないと感じた定方敏和監督は、DF知念哲矢(2年)を交代させることを決断。MF太田宏司(3年)を送り込み、立て直しを図った。しかし互いにこれ以上の動きを見せられないまま、前半の40分は終えた。

 だが後半、岡山監督に「判断が遅い。思い切りが足りない」とハーフタイムに檄を飛ばされていた中京大中京が試合を動かすことになる。10分、中央をドリブルで持ち込んだMF大城佑斗(3年)がスルーパスを通すと、斜めに走り込んだFW小原羽矢駄に渡る。「大城が良いパスをくれた。あとはゴールに流すだけだった」。体勢を崩しながらも、小原は冷静に左足でゴールに収めた。

 しかし岡山監督が「タフなゲーム」と振り返ったのは、このあとの展開があったからだった。17分の小原がGKをかわす場面を外し、追加点のチャンスを逃すと、同点ゴールを目指して長崎総科大附が勢いを強めてくる。岡山監督は、次々と守備の強い選手や、フィジカルに勝る選手を投入。「プランにはあった」と話したDFラインを5枚、さらに中盤もボランチを3枚にするなどの執念を見せて、長崎総科大附の猛攻をしのぎ切った。

 GK矢内大介(3年)の奮闘も忘れるわけにはいかない。後半20分の長崎総科大附DF高倉拓起(3年)のクロスをMF安藤翼(3年)が頭で合わせたシュートを防ぐと、同37分にも安藤に振り向きざまの強烈シュートを弾き出す。「正直言うと、来たシュートは全部自分に近いボールだった」。守護神はあくまで「運が良かった」ことを強調したが、チームに勢いをもたらしたことは事実だった。

 岡山監督は2011年に名古屋グランパスから出向という形で、中京大中京の監督に就任した。就任4年目の今季は、自らがスカウトした最初の世代が最終学年を迎えている。岡山監督は自身の現役時代のプレースタイル同様、選手たちには「メンタリティ」という言葉を使い、気持ちの入ったプレーを求めている。「過去と比べるとこのチームにはメンタリティがある。3年間積み上げてきたことを表現してほしい。絵を作って欲しい」。そう話した指揮官の目は完全に勝負師のものになっていた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 児玉幸洋)
【特設】高校選手権2014

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