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[選手権]ライバルたちのターゲット、夏の王者・東福岡は3回戦で姿消す

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[1.3 全国高校選手権3回戦 東福岡高 0-3 静岡学園高 ニッパ球]

 夏の全国高校総体優勝校、東福岡高(福岡)は3回戦で姿を消した。東福岡はヴィッセル神戸内定のMF増山朝陽(3年)が強引なドリブルでボールを引っ掛けて局面を打開し、U-18日本代表のエースMF中島賢星主将(3年)が力強い突破でDFの前に出てから決定的な右足シュートを打ちこむ。空中戦や球際で強さを発揮する東福岡はその攻防戦を制していたが、今大会3試合目のチームはどこか動きが重い。また静岡学園の積極的なディフェンスの前にミスが出るなど相手に圧力をかけることができない。今大会の全5ゴールを奪っていた後半の爆発に期待が高まったが、逆に3点を奪われて敗退が決まった。

 守備の柱であるCB小笠原佳祐(3年)がピッチに泣き崩れ、呆然とした表情を浮かべる選手たちもいたが、王者は敗戦にも堂々としていた。仲間たちへの挨拶では目に涙を浮かべていたものの、悔しさをそれほど表には出さずに会場を後にした。自分たちのスタイルを出し切れずに終わる「完敗」。増山は「きょうは完封負けだった。悔しいですけれど、すっきりしたって感じなので。自分たちの力が足りなかった」と力負けを認め、中島も「負けてしまったんですけど、あそこまでやられるとも思っていなかったですし、悔しいというより凄く清々しい想いです」。言い訳はしなかった。

 全国総体では1試合平均4得点以上をたたき出して圧巻V。東福岡に敗れたチームだけでなく、全国の強豪たちが「打倒・東福岡」を掲げ、夏の王者をターゲットとしてきた。もちろん、東福岡の選手たちも選手権との2冠を目指して予選を突破してきたが、負けた悔しさを持つライバルたち以上の日々を送り、成長ることは難しかったのかもしれない。森重潤也監督は「謙虚に自立心を持って自分たちのサッカーの質を上げるだけでは物足りなかったのかなと感じています」。全国総体決勝では後半終了間際の同点ゴールから逆転勝ちしたが、この日3点のビハインドを受けたチームに巻き返す力、気迫は残っていなかった。意地を見せられずに0-3敗退。指揮官は「(逆境の中で)これをどう打開して自分の将来につなげていくか。残り数分の中でひっくり返すのは難しかったとは思うけれど、意地を出して欲しかったとは思います」と残念がっていた。

 J内定の中島、増山やU-17日本代表GK脇野敦至(2年)を擁し、全国総体優秀選手9人がいたチームでも選手権の優勝を成し遂げることはできなかった。ただ、その姿を見た下級生たちは、先輩たち以上の努力をして選手権制覇に挑戦するはずだ。森重監督は「長友(佑都)たちも、本山(雅志)たちも先輩たちが築き上げてきたものがまた来年につながっていくと思う。それが東福岡だと思う。ボクも含めて引き継いで来年また絶対に帰ってきたいと思います」。14年の高校サッカーを沸かせた“赤い彗星”はより逞しくなって選手権に帰ってくる。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 吉田太郎)
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