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[MOM1309]星稜MF前川優太(3年)_攻撃をリードする“回る”司令塔

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.10 全国高校選手権準決勝 日大藤沢高 0-3 星稜高 埼スタ]

 偶然生まれたゴールではない。試合後に「狙いましたよ」と即答したように星稜高MF前川優太(3年)の右足から繰り出されたループ気味のシュートは、チームに先制点をもたらした。

 試合は序盤から星稜ペースで進み、前半22分にMF藤島樹騎也(3年)がPA内で倒されてPKを得る。キッカーを務めるMF平田健人(3年)がボールをセットするが、ここで前川はポジションを右へと移していた。「平田は大体、右に蹴るので、仮にGKに止められたら絶対に右に来ると思っていたんです」。平田が狙いを定めて蹴ったコースは前川の読みどおり右に。しかし、GK鈴木孔明(2年)に弾き出されてしまうが、そこに現れたのが前川だった。

「こぼれ球をダイレクトで決められればとイメージしていました」と語ったように、躊躇なく右足でボールを蹴り出す。鮮やかな軌道を描いたボールは、そのままゴールに吸い込まれるかと思われたが、クリアを試みた相手DFに当たってゴールラインを越えた。記録はオウンゴールとなり、前川は「狙ったのに悔しかったですよ」と苦笑したが、「でもチームが勝つのが一番なので、良かったです」と2年連続での決勝進出に貢献したことを喜んだ。

 ボランチの位置でプレーする前川は、攻撃の組み立て役を担う。ほとんどの場面でボールサイドに顔を出し、ボールホルダーのサポートに入ると、ボールを引き出しては正確なパスを左右に散らして攻撃にリズムをもたらす。本人も「チームには『前に、前に』という選手が多いので、僕はバランスを見て遅攻と速攻を使い分けるようにしています。それが自分の仕事ですから」と自らの役割を語った。

 そして、ボールキープ時にはターンを駆使して、相手をいなし続ける。相手が寄せてくれば、クルリと回転。ボールを奪われる場面はほとんどなく、攻撃をリードした。このターンには本人もこだわりを持っているようで、「小学生のときからターンは身に付いていました。バルセロナのシャビのターンを良く見ているのですが、ボールを奪われないところに置けるのも自分の持ち味かなと思っています」と語ると、「ずっと回ることは得意でした」と自分の武器を誇らしげに話した。

 昨年は2年生ながらも決勝のピッチに立った。しかし、後半42分まで2点をリードしながら、逆転負けを喫して涙をのんだ。「ずっと、この1年、あの悔しい思いを胸に戦ってきました。やっと、ここまで来たなという感じです」と1年間の思いを語ると、「自分に与えられている仕事をしっかりこなして、プラスアルファで得点に絡みたい」と自身2度目となる決勝戦へと思いを馳せた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 折戸岳彦)
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