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[選手権]PK戦の末に敗退、流経大柏DF廣瀧「今までの人生で一番濃い時間だった」

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[1.10 全国高校選手権準決勝 流通経済大柏高 1-1(PK4-5)前橋育英高 埼玉]

 決勝へのチケットは、手の届くところにあった。時計の針は後半45分を指そうとしている。流通経済大柏高は1-0とリードしており、あとは逃げ切るだけだったが、同点に追い付かれるとPK戦の末に敗れた。キャプテンマークを巻くDF廣瀧直矢(3年)は溢れ出そうな涙をこらえ、3位の表彰を受けていた。

「前半を無失点で抑えてこい」と本田裕一郎監督から送り出されたチームは、体を張った守備で指揮官の言葉を体現。スコアレスのまま後半に入ると、MF相澤祥太(3年)とFW福井崇志(3年)が投入され攻勢を掛ける。最終ラインから見守っていた廣瀧が、「後半勝負と言われていて、相澤や福井が入ってから流れが少しずつ良くなった」と語ったように、攻撃にリズムが生まれ始め、後半27分にはDF小川諒也(3年)が鮮やかなループシュートを沈めて先制に成功した。

 プラン通りの後半勝負で奪った1点。しかし、ここから歯車が狂い出す。「守備ブロックを築いて、前線に残っている選手の前のスペースにボールを送るという、試合前から言われていた1-0の戦い方ができませんでした」と廣瀧が話したように、相手攻撃をしのぎ、隙を突いて2点目を奪いに行こうとするが、前橋育英の波状攻撃にさらされてしまう。その理由を廣瀧は「相手に押し込まれてディフェンスラインが下がってしまい、長いボールを出せなかった」と語った。試合終了間際に同点ゴールを奪われると、ここまで2度のPK戦をモノにして準決勝まで勝ち進んできたチームは、3度目のPK戦で苦杯を舐めることとなった。

「PK戦は誰も責められません。キャプテンとしてチームメイトを励ましたかったし、自分が泣いていたらチームが落ち込むだけだと思った」とPK戦直後には気丈に振る舞ったが、3位の表彰式では「空を見上げていました。どこかにピントを合わせたら涙が出そうだったので、ずっとボカしていました」とこみあげてくる涙を止めることに必死だったと明かした。

 この試合を最後に、廣瀧の高校サッカーは終わる。3年間を「簡単には振り返れません。…でも、本当に今までの人生で一番濃い時間だったと思います。辛いこともありましたが、最後に選手権に出て、最高の舞台の中で戦えたのは良かったです」と語ると、バトンを渡す後輩に向けて、「千葉を勝ち抜くことは難しいと思いますが、下級生はチームワークがあるチームだと思うので、来年もこの舞台まで勝ち上がり、僕たちの借りを返してもらいたいです」とエールを送り、高校サッカー最後の舞台を後にした。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 折戸岳彦)
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