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「またあの舞台に行こう」選手権準Vからスタート切った新生・前橋育英、群馬新人戦決勝進出

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[1.31 群馬県高校新人大会準決勝 前橋育英高 2-0 常磐高 前橋育英高高崎G]

 平成26年度群馬県高校サッカー新人大会は1月31日に準決勝を行い、全国高校選手権準優勝の前橋育英高はFW野口竜彦とMF金子拓郎(ともに2年)のゴールによって常磐高に2-0で勝利。2月1日の決勝で桐生一高と戦う。

「チームは時間かかりますね」。前橋育英の山田耕介監督は試合後、厳しい表情で口にした。そして「リズムが全くないでしょう。ドリブル、ドリブル、そうなっちゃうと相手のツボですよね。ポン、ポンと繋いで逆サイドへというようなコンビネーションが全くない。(ボールを持ちたがる選手が多いが)サッカーはボールを持って、持ってじゃないから。そのためには判断が必要になってくる。今のところ全くないですよね」と指摘。日本一まであと一歩に迫った選手権決勝から約3週間。新チームは走り込み中心のトレーニングで攻守の連係を深めることはほとんどやってこなかった。この日は選手権でも存在感を見せたMF横澤航平(2年)や金子、右SB外林樹(2年)らが局面をドリブルで打開するシーンは何度も見られたが、MF尾ノ上幸生(2年)とMF大塚諒(1年)の14年国体準優勝ボランチコンビから展開を変えたり、連係で崩すようなシーンはわずか。単独での仕掛けや、一発狙いの背後へのボールで奪われるなど、いい面をほとんど出せなかった。

 昨夏の総体予選決勝でも対戦した常磐は地力のある好チーム。佐藤樹生(2年)を中心に五十畑翔と五十畑凌(ともに2年)らが構える5バックやMF奥山徳弘(2年)、MF副田健一郎(2年)が前線に入ってくるボールをしっかりと潰していた。そしてスピードのあるFW柿沼弘樹(1年)が仕掛ける常磐は、前半5分に右サイドを強引に突破した柿沼がPAのこぼれ球に反応して左足シュートを打ちこむ。だが、前橋育英はスピードに乗ったドリブルでDFを置き去りにする外林や高いボールスキルを発揮した金子が右サイドから簡単に相手ゴール前までボールを運んでしまう。19分には右サイドから仕掛けた金子が左足シュート。21分には右ロングスローから野口が強引にシュートへ持ち込んだ。また8分には左SB渋谷由馬(2年)が、29分には金子がいずれも連係から左サイドを抜け出して決定機を迎えたが、全体的に攻撃は単発。積極的なディフェンスに加えて球際も強さを見せる常磐に上手く守られてしまっていた。

 それでも前橋育英は前半31分にセットプレーから先制点を奪う。左CKからショートコーナーを選択すると、クロスをファーサイドのCB大川夏輝(2年)が頭で折り返し、最後は野口が身体ごとゴールへ押し込んだ。「相手は左右に揺さぶったりするのに弱かったので、一回頭を大きく越して折り返しを狙った。いいところに来た」と野口。ただ、この後もチャンスはつくるものの、やや利己的なプレーが目立つ前橋育英は追加点を奪うことができない。逆にアディショナルタイム突入後の41分にはカウンターからの縦パスに常磐FW柿沼が反応。執念の一撃がGK不在のゴールへ向かう。前橋育英はこれをDFがクリアして失点を免れたが、直後にMF関川優太(2年)、横澤が迎えたビッグチャンスを活かせず、相手を突き放すことができない。

 強風の影響もあったかミスも出た後半。尾ノ上のアーリークロスに野口が頭から飛び込み、金子のクロスのこぼれ球を尾ノ上が左足で狙うシーンもあったが、GK和田進馬(2年)中心に集中した守りを見せる常磐の前に2点目が遠い。逆にセカンドボールを拾って早めに前線へ入れて来る相手の攻撃に自陣へ押し返された。常磐はMF相子晃儀(2年)が高い位置でボールを収めたり、交代出場のMF柏瀬浩汰(2年)がPAへクロスを入れるなど反撃。またセットプレーから同点ゴールを目指してきた。

 それでも、空中戦で強さを発揮した大川とCB小畑達也(2年)、安定したキャッチングを見せたGK平田陸(2年)中心に相手の攻撃を封じた前橋育英は後半アディショナルタイム、中盤でボールを拾った金子がDFを引き付けて左前方の横澤へパス。絶妙なファーストタッチからDFを振り切った横澤の折り返しをゴール前に詰めていた金子が押し込んだ。

 2-0。選手権準優勝からスタートしたチームの意識は高いが、チームとしてはまだまだこれからだ。山田監督は「(初めは連係など)上手くいかないだろうと。でも、これから徐々にやっていけば上手くいくので我慢強くやろうと。(目標を達成するために)今、何をしなければいけないか。もっとやらないといけない」と日々の努力を期待する。野口は「去年はチームでやっていたのがあったので、しっかり助け合いながら。そこは見習っていきたい」。先輩たちから学んだものを発揮して、先輩たちを越えるチームづくりを目指す。

 リーダーとしてチームを引っ張る尾ノ上は「相手からも準優勝のチームとやれるとか言われていた。でも自分たちは天狗になったらダメ。足元を見つめながらやっていかないといけない。またあの舞台に行こうと言っている。今は走りが多いんですけれども、あの舞台に行くためにキツイこともやろうとみんな言っています」。横澤も「きょうのように県大会の試合も難しい試合なので、みんなで一個一個行って、また最終的にああいうところに行けたらいい」。先輩たちの出した結果に奢ることなく、自分たちの力を積み重ね、この1年で新たな歴史を築く。

[写真]後半アディショナルタイム、前橋育英は横澤のアシストから金子が左足でゴール

(取材・文 吉田太郎)

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