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[デンチャレ]先制されるも小林弾で追いついた全日本が大会2連覇!!

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[2.27 第29回デンソーカップチャレンジ決勝 全日本選抜1-1(PK5-3)九州選抜]

 第29回デンソーカップチャレンジ広島大会の最終日が28日に行われた。決勝戦では全日本大学選抜と九州選抜が激突。1-1でもつれ込んだPK戦の末に、全日本大学選抜がPK5-3で勝利し、大会2連覇を達成した。6年ぶりの決勝進出を果たした九州選抜は先制したものの追いつかれると、PK戦での悔しい敗戦となった。

 連覇を目標に、ここまで圧倒的な実力差をもって決勝に勝ち上がってきた全日本大学選抜。今年7月に光州で開催されるユニバーシアード大会のため、2013年末のチーム始動から、約1年にわたり強化を続けてきた。短い期間しか練習していない他地域の選抜と比べると、チームとしての成熟度が抜きん出ていたのは間違いない。主導権を奪われることはほとんどなく、常に自分たちのペースでサッカーをしてきた。

 6年ぶりの決勝進出となる九州選抜との決勝戦も、他の試合と同じように全日本が立ち上がりからボールをキープし、主導権を握る展開となった。なかでも、試合開始直後から積極的にゴールを狙いにいったのが、今大会初スタメンのFW澤上竜二(大阪体育大3年=飛龍高)とMF和泉竜司(明治大3年=市立船橋高)だ。

 しかし、立ち上がりに決定的なチャンスを決めきれなかった澤上が「今日の全日本の“外す”雰囲気は、自分のあのプレーから始まったという感じ」と苦笑いしていたように、何度となく訪れる好機にも、ふたりのシュートは枠をとらえきれない。前半13分には和泉がゴール前に抜け出して澤上からのパスを受けるも、これはオフサイド。

 同26分のMF松下佳貴(阪南大3年=松山工高)からのCKに合わせた澤上のヘディングもバーの上。同28分にはボランチのMF木本恭生(福岡大3年=静岡学園高)がドリブルでゴール前まで攻め上がって右サイドのMF八久保颯(阪南大3年=秀岳館高)にボールを預けるが、八久保からのクロスに合わせた和泉のシュートは枠外に。その後松下も決定的なシーンを外すなど、澤上の言葉ではないがチーム全体に決定力不足が伝播しているような状況だった。

 失点をしていないとはいえ、立ち上がりから防戦一方となった九州選抜は、前半32分にDF森山智史(佐賀大3年=大津高)を下げ、突破力のあるFW野嶽惇也(福岡大2年=神村学園高)を投入。中盤に攻撃的な選手を増やすことで、MF中原優生(鹿屋体育大3年=佐賀東高)からのパスを起点とした攻撃や、MF松田天馬(鹿屋体育大1年=東福岡高)のドリブルで攻め込むなど、少しずつボールを持つ時間を増やし始める。

「前半の最後10分間は、完全に相手に押し込まれていた」(神川明彦監督)というように、立ち上がりから飛ばし続けてきた全日本には、どこか攻め疲れしていた部分があったのかもしれない。後半開始早々、その隙をついてきたのが九州だ。

 後半開始直後の1分、DFからのロングボールに反応したのは、後半から投入されたFW薗田卓馬(福岡大3年=鹿児島城西高)。「開始から5分というのは点の入りやすい時間帯なので、そこで点を取ろうという気持ちでいたら、いいボールがきた」(薗田)。頭で合わせたシュートは全日本のGK福島春樹(専修大3年=静岡学園高)にブロックされるが、そのこぼれをそのまま右足で押し込んで、九州が先制点をあげる。昨日の関西選抜戦で2点をあげた“点取り屋”が、投入早々に大きな仕事をやってのけた。

 この大会で初めての失点、そして先制点を許し、追いかける立場となった全日本。後半から入ったMF小林成豪(関西学院大3年=神戸U-18)、MF長谷川竜也(順天堂大3年=静岡学園高)が中心となって高い位置でポゼッションし始めると、後半8分、9分に松下、長谷川が決定的なチャンスを作るなど、すぐさま自分たちのリズムを取り戻すが、九州の好守もあってどうしてもゴールを割ることができない。

 転機が訪れたのは後半14分。GK福島のロングキックをキープした澤上が、「サイドチェンジは狙っていた」と逆サイドの小林にクロスを送る。これを「相手の右サイドバックが中に絞っていたので、その裏をつけたらいいと思っていた」という小林が、冷静に収めると右足でゴールを突き刺し、全日本が同点に追いつく。九州の薗田同様、2試合連続のゴールに小林は「イメージどおりだった。昨日のゴールで勢いに乗ったのかもしれない」と笑う。

 逆転優勝を目指す全日本はその後もたたみかけるような攻撃を見せるが、なかなか九州ゴールを割ることができない。終了間際の後半44分には、FKからのこぼれを拾ったFW呉屋大翔(関西学院大3年=流通経済大柏高)が右サイドからクロスを入れ、これを小林がダイレクトで合わせる決定的なシーンも。しかしシュートはバーの上を行き、ゴールを確信してシュートと同時に繰り出したガッツポーズは幻に。結局、これが最後のチャンスとなり、試合は1-1のまま終了。勝負はPK戦へと委ねられた。

 PK戦の先攻は全日本。和泉、MF差波優人(明治大3年=青森山田高)、MF高橋諒(明治大2年=国見高)と3人目まで順調に決める。対する九州は、野嶽、薗田まで決めるものの、3人目の松田のシュートが左ポストに当たってしまう。全日本は4人目の小林が成功、九州もMF稲葉修土(福岡大3年=立正大淞南高)が決めて迎えた全日本5人目のキッカーには、当初呉屋が予定されていたが、その場でGK福島が自ら5人目を志願。

「アミノバイタルカップのPK戦でも決めている」と自信満々で臨んだPKを冷静に蹴り込みPK戦5-3で試合終了。目標とする“無失点連覇”はならなかったものの、全日本が今大会初めて追い掛ける展開の中で勝利し、2連覇を達成した。

 この結果を「またとない良い経験、教訓になった」と捉えているのが神川監督だ。「ユニバではPK戦の機会もあるだろうし、公式戦で相手にリードされて追いつき、PK戦で勝つということは、ユニバに向けていい経験になった。そういう意味でも、九州さんには感謝をしたい」。練習試合などで1試合も勝てず、危機感をもったまま大会に臨んだ昨年と違い、今年は滅多に負けることのないまま大会に臨み、「順調すぎることが不安といえば不安」だった全日本。この試合では、ロングボールへの対応やラストプレーの精度、詰めの甘さといった課題も明確になったが、その中でも勝ち切れたことが大きな経験になる。「PK戦であっても勝って、優勝したという事実がいちばん大切」。無失点連覇にこだわっていた主将・福島の言葉が、この試合の結果の大きさを物語っている。

(取材・文 飯嶋玲子)

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