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悪コンディションでタフさも示したU-15日本代表候補、高校生との練習試合で1勝1敗

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 神奈川県内で合宿中のU-15日本代表候補は1日、2試合のトレーニングマッチを行い、湘南ベルマーレユースに0-1で敗れたが、厚木北高を1-0で下した。

 2月20日から23日まで大阪府で開催された西日本メンバー中心の候補合宿に続き、U-15日本代表は2月27日から東日本中心のメンバーで候補合宿を実施している。対外試合2試合が組まれたこの日、U-15代表候補はそれぞれの試合でフィールドプレーヤー24名全員を起用(GK4人は45分ずつプレー)。メンバーを繰り返し入れ替えながら、試合を進めた。湘南ユース戦で90分間振り続けていた雨は、3時間後に開催された厚木北戦でさらに強さを増した。ショートパスが3m先で止まるような悪コンディション。特に2試合目では冷たく強い雨の中、タフさが求められる戦いだったが、その中で2000年生まれ以降の“ゼロゼロ・ジャパン”の選手たちは逞しく戦い抜いて白星を挙げた。

 1試合目の湘南ユース戦の前半は、年上の相手に押し込まれる展開となった。FW中村敬斗(三菱養和SC巣鴨ジュニアユース)がPAへ入っていくシーンもあったが、なかなか高い位置までボールを運べず、守勢となる我慢の展開。それでも出足のいい守りでピンチの芽を潰すCB池田蓮(札幌U-15)が健闘し、敵陣でインターセプトした右SB白土大貴(浦和ジュニアユース)を起点にショートカウンターへ持ち込むシーンもあった。前半15分にはサイドを個で破られて決定的なヘディングシュートを許したが、右MF町田福人(Nagoya S.S.)が1タッチパス、角度をつけた展開など配球よく攻撃を組み立てるなど反撃する。そして前半終了間際、FW棚橋尭士(横浜FMジュニアユース)がいい形でのカットから右足シュートへ持ち込んだ。また守備面ではボールを支配され、仕掛けられる回数が多かったものの、ゴール前でDF陣が身体を張るなど前半を0-0で折り返した。

 メンバーが全て入れ替わった後半は相手がメンバーを落としたこともあり、U-15代表候補が押し込んで試合を進める。3分、PAやや外側で上手くDFを外したMF平川怜(F東京U-15むさし)の右足シュートがゴールを捉える。13分には強引な仕掛けを見せたFW宮代大聖(川崎F U-15)がそのまま独力でフィニッシュまで持ち込んだ。平川をはじめ、攻守両面において1対1で健闘したU-15代表候補は敵陣で何度もボールを引っ掛け、仕掛けやクロス、相手の背後を狙う回数を増やしていく。

 18分にはこぼれ球を拾った右SB渡辺俊介(大宮ジュニアユース)が右サイドを打開してクロス。ニアサイドへ飛び込んだ宮代が決定的なヘディングシュートを放った。セカンドボールの攻防戦で上回って攻撃を繰り返すU-15代表候補は27分にも宮代が自ら獲得したFKから右足シュート。30分にはFW池高暢希(SSSジュニアユース)のインターセプトからFW山谷侑士(横浜FMジュニアユース追浜)が左足でゴールを狙う。そして34分にはFKのこぼれ球を回収したMF江口輝(Honda FC)が抜け出してGKと1対1に。だが左足シュートは枠を捉えず、先制することができない。逆に37分、一瞬集中力が途切れたU-15代表候補は最終ラインが背後を取られると、右サイドからパスを2本つながれて、湘南ユースMF井上恵武に左足シュートを叩き込まれた。ここから巻き返したかったU-15代表候補だったが、終盤失速。0-1で敗れた。

 CB大桃伶音(浦和ジュニアユース)が「0-1で負けたのは悔しかったし、2試合目はキャンプ最後の試合だったので、みんなで絶対に勝とうという気持ちで入っていた」と振り返る2試合目。立ち上がりから積極性のあったU-15代表候補は8分に先制点を奪う。悪コンディションの中、「優先順位は前に行くことだと思った。球際を自分は強く行こうと思って、あそこで取ったらチャンスだと思ったので一気にいきました」というMF遠藤正志(アンフィニMAKI.FC)が敵陣PAやや外側での競り合いを怖れずに思い切って突っ込むと、ボールを引っ掛けて一気に縦へ抜け出す。そのラストパスをセットプレー後でゴール前に残っていた大桃が、トラップから冷静に右足でゴールへ流し込んだ。

 その後も重馬場で馬力ある突破、球際の強さを見せる遠藤が果敢に動き回り、池高のシュートが鋭くゴールを襲う。だが厚木北も前線の力強いアタックで攻め返すと42分、右サイドからボールを動かしてPAへ持ち込む。ここで体を投げ出してシュートを阻止しようとしたU-15代表候補の大桃がファウル。PKを与えてしまったが、森山佳郎監督は味方のピンチで何とかしようとしたその姿を讃えた。「もう1個前の試合だったら足を出さずにやられていたかもしれない。(湘南ユースに敗れた後ということもあって)気持ちがあったからこそ足を伸ばした。ギリギリのところで何とかしようとしたのはちょっと成長したかなと」。加えて厚木北がこのPKを失敗したことによって、U-15代表候補は1-0で前半を折り返した。

 後半はよりピッチ状態が悪くなり、困難な環境の中でのプレー。その中でCB新井秀明(川崎F U-15)がスライディングタックルで相手の抜け出しを阻止し、カウンターでは最前線まで駆け上がるなど闘志を前面に出したプレーを見せる。U-15代表候補は思うように前へボールが運べない中、相手にとって嫌なところを突くこともできていなかったが、それでも愚直に攻める姿勢を見せ続けた。対する厚木北も混戦から推進力を持って前に出て、バックラインの背後へボールを送りこんだが、U-15代表候補はGK小久保玲央ブライアン(柏U-15)が落ち着いて処理するなど得点を許さず。周囲の想像以上に「戦える」部分も示して1-0で試合を終えた。

 守備面の奮闘が光った一方、合宿で好調だったという攻撃陣が試合では力を発揮しきれなかった。それでも森山監督は「一番大事なのは気づき、あるいは刺激を受けて、日常のトレーニングの積み重ねでしか成長はないと思う。完全に通用した選手はいないですし、『コイツはもうこのメンバーの中心だぞ』というのはまだ名乗りを挙げていないと思う。みんなにとってチャンスだし、みんなが課題を持ってクラブに帰るのはいいことかなと思う」と微笑んだ。そして「2か月後集合と言ったときに自分で自分の武器とか、課題とか認識してそれを磨く努力というかね、どうやったら磨けるか、いろいろな頭とか、心とかを使って問題解決したり、あとは努力の継続はエネルギーがいるし、そういうことができる選手は人間性があって、感受性があって、頑張れると思う。そういう完ぺきな選手はいないけれど、それは今から言い続けて少しでもその姿に近づいていけることは大事だと思います」。2年後の17年U-17W杯へ向けてスタートを切ったU-15代表候補。2日までの合宿で感じた課題を持ち帰り、成長して、競争を勝ち抜いてまたこの場に帰ってくる。

(取材・文 吉田太郎)

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