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日本一目指す名門、静岡学園はこだわって技術を磨き「オンリー・ワンのチーム」へ

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 目標はテクニックを前面に出した「オンリー・ワン」のチームになること――。プロ選手を70名以上輩出している伝統校、静岡学園高は1月の第93回全国高校サッカー選手権でベスト8進出。全国高校総体王者の東福岡高を3-0で下すなど、インパクトある戦いを見せた。そのチームから新主将のFW加納澪(2年)、日本高校選抜MF旗手怜央(2年)、MF鹿沼直生(2年)、GK山ノ井拓己(1年)らが残った新チームは2月の静岡県新人大会で決勝進出。決勝では延長戦の末に清水桜が丘高に1-2で敗れたものの、MF荒井大(2年)やMF戸田大智(1年)、CB嶋―駿(1年)ら主力候補の選手たちを欠く中でCB戸松剛志(2年)ら新戦力が台頭して5試合を戦い抜いた。

 決勝では加納や旗手がドリブルで強引に局面を打開してミドルシュートへ持ち込み、中盤の底の位置で鹿沼がミスなくボールを動すなど相手を押し込んで攻めていたが、前に強い清水桜が丘守備陣を崩したシーンはわずか。ロングボールが増えてしまい、伝統的にボールをゆっくりと運んで局面をドリブルとショートパスで打開する“静学らしさ”を見せることができなかった。

 昨年のチームは例年に比べると技術的に評価されたチームではなかったが、それでも攻守の切り替え、守備の頑張りによって静岡予選を突破。そして全国大会ではその頑張りに加えて、地道に磨いてきた技術とアイディアを要所で発揮して会場を沸かせ、ゴールをもぎ取った。1、2年生たちは新人戦でその新しい伝統を受け継ぐような頑張りが光った。

 その点についてはコーチングスタッフ陣からも評価されたが、本当の“静学らしさ”とは、やはりテクニックを全面に押し出したサッカー。新人戦期間中はCチームの指導をしていた川口修監督は新人戦終了後最初のトレーニングでAチームの選手たちへ向けて「どこでもやっている攻撃。それじゃ寂しい。相手の頑張りを消すのはテクニック。まだ『テ』の字もいっていない」と厳しく指摘した。頑張る姿勢は認めている。それでも、静岡学園は“他のチームが表現できるようなサッカー”をすることを目指しているのではない。「オレたちがやりたのはオンリー・ワン」。選手たちの前でそう語った指揮官は、多彩なドリブル、正確且つアイディアあるショートパスでの崩しなど「技術で相手を困らせる」静学にしかできないサッカーにこだわっていくことを確認した。

 これから厳しい競争が始まる。選手権全国大会では予選で登録メンバー外だったMF後藤真(3年)と鹿沼が先発でダブルボランチを組むなど、努力してチャンスを掴んだ選手に出場機会が与えられた。川口監督は新人戦後の再始動初日、全国大会で主力として活躍しながらも新人戦では良さを出し切れなかった旗手やMF薩川淳貴(2年)に対して「このままでは1本目では使えない」と鼓舞。例年通り、実績関係なしにいい選手を起用していく方針を口にした。Bチームからの昇格組4名を含めて、競いながらチーム力を高めていく。

 トレーニングでは「悔しいっすね。ああやって厳しいこと言ってもらえたので。自分もっとやんないとダメだと思う。(新人戦のパフォーマンスを)挽回できるように果敢に得点狙いに行った」という旗手や「新人戦では選手権でやっていたような自分のプレーができなかった。停滞してしまっているのでもう一歩、二歩成長していかないといけないんですけれど、それを要求されていると思う。自分はシュートを決めることと、あとテクニックで相手を圧倒できるようにもっとドリブルを練習していかなければならない」という薩川が目の色を変えてトレーニングし、居残り練習でも最後までボールを蹴っていたシーンが印象的だった。

 もちろん、MF西山大輝(2年)やMF小宮嶺(2年)といった新人戦の先発組や他の選手たちも虎視眈々とスタメンの座を狙っている。個性のある選手が多いだけにこれからどう成長して、結果を残していくのか注目だ。エースFWの加納主将は「一人ひとりが努力すればいいチームになると思います。この1年は勝負の年だと思っているので、自分的にもチームとしてもいい結果を残せればいい。新人戦では全然らしさを出せずに負けたので、これからは“静学らしく”勝てればなと思います」。目標としている姿に到達するのは簡単ではない。地道な努力が必要。それでも静岡学園は周囲からも認められるような「オンリー・ワン」のチームになる。

(取材・文 吉田太郎)

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