beacon

「履けば良さを分かってもらえる」サッカー界に革命を起こすアンダーアーマー

このエントリーをはてなブックマークに追加

 アンダーアーマーは、そのブランド名が表す「ユニフォームの下(アンダー)に着用する戦うための鎧」であるインナーウェア(コンプレッションシャツ)を原点に、スポーツ界で急速に広まってきた。サッカー界における歴史はまだ浅いながらも、Jリーグの大宮アルディージャツエーゲン金沢、海外ではプレミアリーグのトッテナムにユニフォームを提供している。最近ではアンダーアーマーが持つ「カルチャーオブイノベーション」の姿勢とテクノロジーを結集し、最高のフィット感を実現させたスパイク「UAクラッチフィット フォース HG JP」を発表した。サッカー界に新たな風を吹き込むアンダーアーマーが目指すものとは――? フットボール担当の中村健太氏に話を聞いた。

―アンダーアーマーがサッカー界に進出した理由は何だったのでしょうか?
「アンダーアーマーのコンプレッションシャツにはパフォーマンスアップにつながるたくさんのメリットがあり、かつサッカーにはインナーを着る文化がなかったことです。そこでまず、『コンプレッションシャツを着ることがパフォーマンスアップにつながることを伝え、サッカー界にインナーの文化を浸透させる』という使命感のもと、2005年ごろから全国各地の高校を回って啓蒙・啓発活動を行ったのが始まりでした。2年半ぐらいかけて全都道府県を回りました。そんな中、全国高校選手権で優勝した高校の選手がアンダーアーマーのインナーを着ていたことが、サッカー界に浸透していくきっかけとなりました」

―全国の高校を回ったのですか?
「北海道から沖縄まで、日本全国の高校を回りました。商品サンプルが詰まった大きなバッグと説明用のパネルを持って高校を訪問し、部員が十数人でも、100人以上でも、大小問わずです。どうしてコンプレッションシャツがパフォーマンスアップにつながるか、当時は新しい概念ですから、実験をしながら説明しました。アンダーアーマーの生地は、裏から水滴を垂らすと、生地をちょっと伸ばしただけで水分が外に出る仕組みになっていて、外気と自分の体温ですぐ蒸発するんです。最初は手品を見るような驚きの声があがりますが、すぐに、このウェアには吸汗速乾性や伸長性などの機能性があり、その機能性がパフォーマンスアップにつながるんだ、ということを理解してもらえました」

―今までになかった文化を浸透させるのは大変だったのではないですか?
「今でも難しいですよ。でも、僕らには『To Make All Athletes Better』、つまり選手を進化させるというブランドミッションがあります。常に現場に張り付いて、選手と一緒に企画してきました。選手がウェアを気にする素振りを見せれば、ウェアが引っかかっているということなので、その部分のパターンを検討し伸縮素材を入れたり、選手が走り出すときに嫌な顔をしたら、何が問題なのか、何がベストなのかを突き詰めて素材を変えたりしています。選手を進化させるという目線でしかモノを作っていません」

―大宮アルディージャのユニフォームサプライヤーも務めています。
「2009年に初めて大宮アルディージャにユニフォームを提供したとき、選手たちは着た瞬間に『気持ちいい』と言ってくれました。『衣類を着て初めて気持ちいいと感じた』と。それがうれしかったですね。アンダーアーマーは生地が生命線ですし、繊維1本1本にこだわっているので」

―大宮のユニフォームはシルエットの細いタイトなデザインが印象的です。
「試合におけるパフォーマンスを追及した結果、タイトなシルエットになりました。実は最初にシルエットを細くしたとき、選手からは『もっとリラックスして着たい』という声もあったんです。しかし、シーズンを通して実際に着用していただいた結果、翌年には『もっと細くしてほしい』『もっとタイトにしてほしい』という声に変わっていました。何がベストなのかを追求した結果が、選手にもしっかりと伝わったなと感じました。大宮のユニフォームはシルエットにこだわっていますが、ウェアは伸縮しますし、吸汗、速乾にも優れていて、風合いもよく、着心地も快適です。裸が一番動きやすいわけで、それに近づけるために改良を重ねて完成したのが2015シーズンのユニフォームです。選手を進化させるためにどうすればいいのか。それを突き詰めていって、今のユニフォームになりました。満足はしていませんが、現時点ではこれがベストだと思っています」

―インナーウェアやユニフォームに続いて、スパイクの開発にも力を入れ始めたのはなぜでしょうか?
「当然、サッカー選手にとってスパイクは重要なギアだからです。しかし、スパイクの開発は本当に難しい。そのための専門家を採用し、プロジェクトチームを作り、2年かけて『フリーリー』というスパイクを開発しました。全国各地を回って、グラウンドが硬いところや悪環境の中でテストを繰り返しました。そうしないと選手が満足できるスパイクは絶対に作れませんから。

 また、Jリーグの選手と接していて、靴擦れしながらスパイクを履いている選手が多いなと感じていたんです。『なぜ靴擦れしているのに履いているのか』と聞くと、『格好いいから』『契約で』と、本当の意味でパフォーマンスに満足していない場合もあるんです。高校生もそうですよね。派手なスパイクや格好いいスパイクはたくさんありますが、選手が本当に求めているのは足にフィットするスパイクです。選手が足を入れた瞬間に足と一体化するスパイクを目指そうと思ったら、デザインどうこうではないんです。とにかくテストをしないといけない。相当、気合を入れて作りました」

―そうした思いを込めて2月15日に発売した「UAクラッチフィット フォース HG JP」について教えてください。
「コンセプトは『フィットをコントロールする』。プレー中のあらゆる足の動きに対応し、常に最適なフィットを実現しています。足は、地面に着いているときと比べて、ボールを蹴ろうと浮いているときは1cmほどやせているんです。言い換えると、靴の中で足がブレたままボールを蹴っているんです。『クラッチフィット フォース』はプレー中のダッシュ、ジャンプ、ステップ、ターンなどの動作によって常に変化する足の形状に合わせてフィットをコントロールしています。足が浮いたときは横幅が縮まり、逆にグッと地面を踏み込むと必要に応じて広がる。アッパー部分にプリントされたオーゼティック構造が大きいところは、より伸びるようになっていて、“棚落ち”するところは小さくして滑りを軽減しています。一見、デザインに見える部分も、すべて計算されたものです」

―デザインではなく、機能を重視しているということですね。
「僕らがこだわったのは機能だけで、それがたまたまデザインに見えているだけです。商品を手に取った人が『アンダーアーマーならこのデザインにも絶対に意味があるんだろうな』と思ってくれる。僕らはそういうギア開発をしています。『格好いいから履こう』ではなく、『機能性が高いから履こう』と思っていただけるよう、毎日がんばっているアスリートを全力でサポートしていきたいと思っています」

―実際に履いてもらえれば気に入ってもらえる自信があるということですね。
「実際に履いてもらえば、手に取ってもらえば、アンダーアーマーの良さを分かってもらえるという自信はあります。これまでにも高校生100人に対してきちんと機能性を説明して、試し履きをしてもらった結果、その場で40、50人に購入いただいたこともあります。普通ならあり得ないことだと思います。僕らはトレンドだったり、流行の商品を参考にすることはありません。『To Make All Athletes Better』がミッションなので、これからもとにかく選手を進化させることだけを考えて、新たな製品を企画、開発していきます」


▼関連リンク
UA×ゲキサカ特設ページ

TOP