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[プリンスリーグ関東]先輩たちの映像から学んだ戦う姿勢、山梨学院が無敗の首位・浦和ユース撃破

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[5.9 高円宮杯プリンスリーグ関東第6節 浦和ユース 1-2 山梨学院高 埼玉スタジアム第3G]

 高円宮杯U-18サッカーリーグ2015 プリンスリーグ関東は9日、第6節1日目の浦和レッズユース(埼玉)対山梨学院高(山梨)戦を行い、ここまで1勝4敗と苦戦していた山梨学院が無敗で首位の浦和を2-1で撃破。今季2勝目を挙げた。

 ここまで4勝1分で首位を走る浦和を山梨学院が止めた。後半はほぼ一方的に攻められる展開。自陣で再三FKを与え、セカンドボールも拾うことができずに何度もクロスやロングボールを放り込まれた。それでも怪我の186cmCB中山裕己哉(3年)に代わってプリンスリーグ初先発となった183cmCB纐纈大雅(3年)が空中戦で期待に応え、こぼれたボールはCB大沼士恭主将(3年)たちが集中力高い動きでクリアして行く。同じくプリンスリーグ初先発となったGK三枝慎弥(3年)のキャッチングも最後まで安定。試合終了の笛が鳴り響くと、浦和の強烈なプレッシャーから開放された山梨学院イレブンは抱擁を繰り返して喜びを分かち合った。

 試合は前半3分、MF影森右京(3年)のスルーパスから浦和MF伊藤敦樹(2年)が決定的な右足シュート。これを三枝の好守で阻んだ山梨学院は逆に6分、敵陣でMF阿部優澄(3年)がボールを奪い返すと、FW渡辺太一(3年)の左クロスからファーサイドのFW五百蔵準(3年)がポスト直撃のシュートを放つ。互いにミスが見られるなどやや落ち着かない立ち上がりの中、浦和が先制点を奪う。9分、CB小木曽佑太(3年)の縦パスで相手の最終ラインをブレイクしたFW松澤彰主将(3年)が飛び出してきたGKをチップキックでかわし、頭で先制ゴールを押し込んだ。

 その後、ゲームをコントロールしながら、左SB堀内千寛(3年)の攻撃参加を交えて攻める浦和だったが、17分にポゼッションでミス。抜群のスピードを活かしたプレッシングと突破や球際での頑張りなど、この日、山梨学院の最前線で獅子奮迅の動きを見せていたFW前田大然(3年)がこれをインターセプトしてそのまま左足でゴールへ流し込む。「自分は結構CBとか、GKを追いかけて、かっさらって点取るというのを持ち味にしているので、それを狙っていた。たまたまGKがミスしてくれて良かった」という前田の貴重なゴールで1-1となった。

 この後、山梨学院は今年のチームの特長である高速3トップが攻守両面で存在感を放つ。22分には中盤のキーマン、MF酒井健(3年)が左サイドへ展開。渡辺が縦への仕掛けでDFを外してクロスを入れると、ニアサイドへ飛び込んだ10番MF阿部が勝ち越しゴールを突き刺した。その後も酒井やコンタクトで強さを発揮するMF塚田士文(3年)を起点にスペースを突く攻撃。また、前田が相手DFのキックをチャージして独走するなど、前線からの守備が利いていた山梨学院は相手にPAまで攻め返されるシーンも多かったが、反応速いカバーリングと空中戦の奮闘光る纐纈や大沼、右SB佐藤公介(3年)、左SB吉浜颯(3年)がゴール前で辛抱強い守りを続けて行く。

 浦和は後半開始から主力FW松尾佑介(3年)を投入。2分にカウンターから山梨学院FW前田に決定的なシュートを放たれたものの、3分に松尾のスルーパスから伊藤が決定機を迎え、17分にも松尾が中央突破から出したスルーパスに松澤が反応するなど同点機をつくり出す。後半は大半の時間帯でボールを握り、U-17日本代表MF渡辺陽(2年)のFKやMF中塩大貴(3年)のロングスローでも圧力をかけた浦和だが、大沼が「中盤も良く走って前からハメに行ってくれていた。前の試合までは剥がされてというのが多かったけれど簡単にやられなかったので、(最終ラインも)守備の陣形を整えられて助かりました」と振り返ったように、山梨学院はチーム全体が集中した守りで得点を許さない。

 浦和は後半38分から小木曽を前線に入れて強引に1点をもぎ取りにいく。だが47分に前線でボールを収めた松澤の左足シュートはゴールマウスに阻まれ、48分に松澤のラストパスから小木曽が放った右足シュートも枠外へ。守りに人数をかける相手をこじ開けることができずに今季初黒星を喫した。
 
 先輩たちのひたむきに戦う姿勢が、勝ち切ることのできなかった山梨学院に火をつけた。山梨学院は第2節の前橋育英高戦こそ3-1で勝利していたが、その後昇格組の昌平戦に2-3で競り負けるなど3連敗。それもわずかな隙を突かれての失点などで勝ち点を落としていた。「上手いけれども、戦う姿勢とか伝わってくるものがない」と感じた吉永一明監督は浦和戦の2日前に昨年のチームの映像を選手たちに見せたという。FC岐阜入りしたMF小川雄大やともに日本高校選抜に選出されたDF渡辺剛(現中央大)、DF大野佑哉(現阪南大)、現在中央大で1年生レギュラーを務めるDF山中登士郎と言ったタレントのいた昨年の山梨学院だが、10人での戦いとなった選手権県予選決勝・帝京三高戦や1点勝負となった選手権・滝川二高戦など先輩たちはギリギリの戦いを戦い抜いて白星をもぎ取っていた。

 前田が「去年はみんなが身体を張っていた。今のチームはそれが足りない」と語るように、最後まで身体を張るというて点は今年の課題となっていた部分。それを先輩たちの映像から学んだチームは意識が変わった。「(映像を見た)その後の練習で雰囲気が凄く良くて、みんな『このままやっていけば勝てる』と言っていたので良かった」と振り返る大沼は浦和戦で見せた戦いを今後も続けていく意気込み。「自分たちは飛び抜けた選手いないですけど、去年と同じように全員がひとつになってきょうみたいにやっていけば絶対に勝てる。レッズに勝てたことを自信にして、きょうみたいな泥臭い勝ち方でもいいんで勝っていって日本一になりたいです。それは絶対(の目標)です」。プリンスリーグ関東は6月27日の第7節から再開。その間に関東大会予選や全国総体予選が行われるが、山梨学院は浦和に立ち向かったものと変わらない姿勢で白星を掴み続ける。

(取材・文 吉田太郎)
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