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頭蓋骨骨折乗り越え…水本が127試合連続フル出場の新記録樹立

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[5.16 J1第1ステージ第12節 鹿島2-2広島 カシマ]

 運命のめぐり合わせを感じていた。サンフレッチェ広島のDF水本裕貴がフル出場し、フィールド選手ではJ1新記録となる127試合連続フルタイム出場を達成した。頭蓋骨骨折からカムバックした2011年8月20日の第22節・鹿島戦から4年弱。同じカシマスタジアムの鹿島戦で、前人未到の大記録を打ち立てた。

「あのケガをしてから、ちょうどここで復帰した。ヘッドギアを付けていたし、あの試合のことはよく覚えている。カシマでスタートして、カシマで記録をつくって。運命的なものを感じる」。感慨深げな表情を浮かべた水本は「1試合1試合の積み重ねでここまで来た。毎試合、メンバーリストに名前を書いてくれる監督に感謝したいし、一番は家族の支えがあったから。家族に感謝したい」と、胸の内を語った。

 2011年5月7日の甲府戦で頭部を負傷し、救急搬送された病院で頭蓋骨骨折および急性硬膜外血腫が判明。緊急の開頭血腫除去術を受けた。一時は「サッカーをやめようかと思った」が、懸命のリハビリを経て約3か月半後の鹿島戦にヘッドギアを着用して復帰。以降、127試合連続でフル出場を続け、J1通算300試合出場の節目の一戦で新記録を樹立した。

「2011年は恐怖心との闘いだったけど、2012年からはヘッドギアを外したし、恐怖心を感じずにやれた」。あのケガがあったからこその自分自身の変化も感じている。「気持ちの波がなくなったというか、いい意味で楽観的に見れるようになった。自分自身をより知った部分もあるし、毎日毎日サッカーがやれていることが幸せで、なおかつ試合に出て、みんなと一緒に喜べるのは何よりも幸せだと感じている」。当たり前のようにサッカーができることへの感謝の気持ちは、4年経った今も忘れていない。

 大きなケガなく、退場処分や累積警告による出場停止を受けることもなく、体を張ったディフェンスとフェアプレーで連続フル出場を続けてきた。2012年、2013年には広島のリーグ連覇に貢献。2012年にはJリーグベストイレブンにも選出され、昨季は警告ゼロでフェアプレー個人賞を受賞した。

 この日の前半25分に警告を受け、2013年9月14日の川崎F戦以来となるイエローカード。「思い切って行かないといけないときは行くし、去年はたまたまフェアプレー賞をもらったけど、それを狙ってプレーしているわけではない」。約2年ぶりのイエローカードにも臆することなく、その後もタイトでハードな守備を続けた。

 悔やまれるのはチームの結果だ。4年前の鹿島戦は0-2の敗戦だったが、この日も2-2の引き分け。「勝たないとね。勝つチャンスがあっただけに」。偉大な記録を勝利で祝うことはできなかった。それでも“鉄人”は前を向く。「今日の2失点は悔いが残る。次はゼロに抑えられるようにしたい」。毎試合毎試合の経験を糧にし、自分自身が成長しながら連続フル出場の記録も伸ばし続けるつもりだ。

(取材・文 西山紘平)

[J1]第1ステージ第12節2日目 スコア速報

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