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[総体]「公式戦全勝」で予選に臨む、都の技巧派集団・関東一

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 平成27年度全国高校総体「2015 君が創る 近畿総体」サッカー競技(兵庫)の東京都予選で主役を張るのは、連続した細かいパス交換に多数の選手が関わる攻撃に特徴を持つ、関東一高だ。道願翼浦川眞世のダブルボランチとトップ下に位置する2年生MF冨山大輔のトライアングルを中心としたパス回しは、小野貴裕監督が「動いているところにボールを入れていく練習は、すべての年代で行っている。(オフ・ザ・ボールの)動きが出て来てボールがズレることより、動きが出ないことでズレることの方が多い」と話すように、流動性がある。軽やかなボールタッチと意外性のあるパスが魅力の冨山は「普段からコミュニケーションを取るようにして、3人のパス交換が多くなって良くなってきた」と攻撃に手ごたえを示した。中盤から外へ、中へとパスを散らしながら高い位置まで押し込み、タイミングよくSBも加わってなだれ込むようなアタックは、見応え十分だ。

 連係プレーによる攻撃は、今年に限った話ではなく、関東一の特徴として関東圏ではよく知られている。しかし、現在まで全国に名を轟かせるには至っていない。全国大会の出場が07年の高校総体の1回のみという経歴が、その理由を物語る。「巧いが勝負強さを欠く」という一面も併せ持っているのだ。

 しかし、今季は高校総体の予選を前にして、公式戦13試合(東京都1部リーグ8試合、関東大会東京都予選5試合)で全勝とかつてない勝負強さを見せている。最前線で精力的に走るFW岡崎仁太朗は「1、2年生の頃、藤山(竜仁=現・FC東京U-12育成担当)コーチから、理不尽に耐える力やハードワークの必要性をずっと言われ続けていた。走りの練習などはきつかったけど、自分たちで(全国大会になかなか出られない)歴史を変えていくんだぞと言ってくれていたので、必要なのかなと思い、多少は文句を言いながらもやっていた。あれが、今の無失点で抑えられる粘り強さにつながっていると思う」と、変化の一端を証言した。

 攻守両面で我慢が効くようになった印象がある。中央突破にこだわり過ぎる傾向があることや、崩れたときの脆さという例年の弱点が、今は鳴りを潜めている。持ち味には磨きをかけ、新たに得た手堅さを携えて突き進む。小野監督は「いくつかの試合で大勝しているけど、点差ほどの力は絶対にない。今の結果は、まぐれ。狙ってできることではない。いつ負けてもおかしくない。周囲に期待していただくことで選手が敏感になる部分はあると思うけど、それはあくまでも見る人の目。やる人は、毎日の練習が勝負。周囲の人の見方が(選手やチームの考え方の)中心になるような勘違いはさせたくないし、僕もしたくない」と13戦全勝の結果におごらずに進み続ける決意を明かした。

 MF道願は「総体予選は準々決勝からの出場になる(ので難しい部分もある)けど、東京で1番を取って、全国で活躍できればいい」と意気込んだ。総体予選でマークが厳しくなることは間違いない。その中でどこまで連勝を伸ばすのか、目が離せない。

(取材・文 平野貴也)
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