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[総体]選手権日本一後に味わったどん底の1年、悔しさを力に変えた富山一がまずは全国狙う

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歓喜の1年から、どん底の1年。

 ジェットコースターのような2年間を過ごした富山一高(富山)が、今、大きく成長を遂げようとしている。

 星稜高(石川)との「北信越ダービー」となった一昨年度の全国高校選手権決勝を0-2からの劇的な逆転勝利で制し、北信越勢初の全国制覇を成し遂げた。しかし、昨年度は選手権優勝メンバーがごっそりと抜け、高円宮杯プレミアリーグWESTで勝ち星から遠ざかると、過去10年間で9度優勝していた全国高校総体富山県予選でも準決勝で高岡一高にまさかの敗戦。さらに選手権予選においても、準決勝で水橋高に敗れて優勝旗を全員で持ち帰ることができなかった。そして、追い討ちをかけるように、プレミアリーグWESTでは12月の最終節に8位から9位へと後退して降格が決定。一気にどん底へとたたき落とされた。

 しかし、この1年間は決して無駄ではなかった。選手権優勝メンバーのMF西村拓真は、プロの世界(ベガルタ仙台)へと旅立っていったが、苦しい戦いを経験したメンバーの多くは1、2年生。プロへの扉をこじ開けた先輩と共に戦った後輩たちが、今年のチームの強固な屋台骨を築き上げている。

「今年のチームは攻撃力がある。後はいかに守備を安定させられるか」。

 大塚一郎監督がこう語ったように、アタッカー陣に個性派を揃える。中でも1トップの坂本裕樹、トップ下の河崎輝太、左MFの柴田丈一朗のトライアングルの破壊力は凄まじい。坂本が抜群のキープ力で起点を作ると、河崎の敏捷性溢れるプレーと、柴田のドリブルとパワーで、一気にゴールを陥れる。さらに攻撃的な左SB村澤亮斗、パスセンスが光るボランチの早川雄貴が絡んで攻撃のバリエーションを増やしていく。高い連動性を持った攻撃は、全国でも十分に通用するレベルだ。

 指揮官が「課題」と語る守備も、鋭い反応が光るGK相山竜輝、対人に強いCB能松大河と、ポイントとなる選手がおり、周りが成長をしてくれば、安定感は自然と増していくはずだ。

「去年の悔しい思いがウチの根底にある。昨年1年間での経験の上に、今年はしっかりと積み上げていきたい」(大塚監督)。

 平成27年度全国高校総体「2015 君が創る 近畿総体」サッカー競技(兵庫)の富山県予選は23日に開幕し、富山一は24日の初戦を19-0で大勝。この予選をしっかりと制し、全国で再び富山一の名を知らしめたい。大塚監督に全国高校総体予選に向けて話を聞くと、こう返ってきた。

「インターハイ予選では多分、1年生が食い込んでくるよ。楽しみだね」。

 大塚監督が見せた不敵な笑み。手応えがあるチームに、期待のルーキーがどうマッチするか。もしかしたら、復活をかけたこの予選でさらに進化を遂げる富山一を見ることが出来るかもしれない。

(取材・文 安藤隆人)
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