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[総体]1年生FW白井が大仕事!名門・清水商の伝統受け継ぐ清水桜が丘が開校3年目で初優勝!:静岡

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[6.7 全国高校総体静岡県予選決勝 清水桜が丘高 2-0 浜松開誠館高 エコパ]

 平成27年度全国高校総体「2015 君が創る 近畿総体」サッカー競技静岡県予選は7日に決勝を行い、清水桜が丘高が1年生FW白井海斗とMF杉本隼主将(3年)のゴールによって、浜松開誠館高に2-0で勝利。名門・清水商高の伝統を受け継ぐ清水桜が丘は13年4月の開校から3年目で初の全国大会出場となった。

 清水商で3度の全国高校選手権優勝、4度の全国高校総体優勝、5度の全日本ユース選手権優勝を成し遂げている清水桜が丘の大瀧雅良監督は「ずっと決勝までは来る訳だけども、そこからもうひとつ山を登るのが難しい。まさに2度と勝てないかなと。勝つ方の気持ちは味わえないかなと思ったけれど、今年の子たちは頑張る」と選手たちを讃えた。清水桜が丘開校後の13年度選手権予選決勝、14年度総体予選決勝と静岡のファイナルまでは来ていたが、いずれも準優勝で全国への第一歩を踏み出すことはできていなかった。それが今年は新人戦で準々決勝以降の3試合連続延長戦で勝利して優勝。そしてこの日、「頑張る子たち」はまた歴史を塗り替えた。「新しいページをつくるんですね。後ろを振り返ってもしょうがないから。前を向いてどういうページに書き込んでいくかということですから、大きいですね」と名将も素直に清水桜が丘の全国初進出を喜んでいた。

 試合はまさに「頑張りの勝負」。今大会無失点で初の決勝へ勝ち進んできた浜松開誠館、そして清水桜が丘もともに再三訪れた空中戦、そして地上戦で体を張り続けて一歩も引かない。清水桜が丘は4バックが奪ったボールをダイレクトで前線へ入れ、「来た時はこぼれ球つくれるように壊せればいいかなと。どんどん前に向かっていく姿勢が持ち味です」という最前線のFW山田柊斗(3年)が競り合って味方へのセカンドボールを生み出そうとする。一方、浜松開誠館は前線のFW中川諒真(3年)やFW鈴木理久(2年)がダイレクトでボールを落とし、そこからスピード、パワーを活かした攻撃。だが、清水桜が丘のCB大森圭一郎(3年)やCB石井智大(3年)が空中戦、そのこぼれ球の攻防で負けない姿勢を見せれば、浜松開誠館もCB山下隼輝主将(3年)を中心とした3バックがロングボールを跳ね返し、中盤ではMF大場正輝(3年)とMF永田陸(3年)が怖れることなく球際で厳しいチェックを繰り返すなど簡単には穴をつくらせない。

 立ち上がりは浜松開誠館が積極的なシュートを連発。中川や大場の鋭い一撃がゴールを脅かす。18分には右中間から斜めにドリブルした大場のスルーパスに連動して斜めに走り込んだ中川が反応。こぼれ球を鈴木が右足で狙った。一方の清水桜が丘も杉本、山田を起点とした攻撃で獲得したセットプレーから大森や山田がゴールを狙うが、相手を崩し切るようなシーンは見られなかった。それでも後半、清水桜が丘は「元々片瀬(晴城)先生に『中盤のボランチの背中を見て受けろ』と言われていた。前半は蹴ることが多くてそういう場面がなかったけれど、ハーフタイムにまたそれをしっかりと言われて、それでボールが来る場面が増えたので受けられるようになった」という1年生FW白井がボールを受ける回数を増やすと、わずかにDFを外してから出す角度あるパスや相手の急所を突くドリブルなど、この試合随一のスキルを見せる白井が存在感を放ち、清水桜が丘が流れを引き寄せていく。

 21分、25分と白井のドリブル、パスからシュート、クロスのシーンが生まれると27分に待望の先制点。右サイドでセカンドボールを拾った山田が「思い切ってシュートを打つつもりで。1対1仕掛けて上手く抜けたので」と切り返しでDFを外してから強引に左足シュートを放つ。これはDFに当たったが、ニアサイドのゴールエリア方向にこぼれたボールに反応した白井が右足ダイレクトで合わせて均衡を破った。殊勲の1年生を清水桜が丘イレブンが手荒い祝福。速攻で反撃する浜松開誠館も32分に中川、38分にも交代出場のFW水津蓮(3年)がスルーパスからチャンスを迎えるが、追いつくことができない。杉本が「(浜松開誠館は)球際の部分とかやってくるので頑張り負けないように」という清水桜が丘は相手の反撃を体を張って阻止。PAにボールがこぼれるようなシーンもあったが、交代出場のMF大屋寛太(1年)の好クリアなどで難を逃れていく。逆に清水桜が丘はアディショナルタイム突入後の44分、交代出場のMF長田健吾(3年)の右CKのクリアボールを杉本が右足ダイレクトで打ち抜くと、渾身の一撃はクリアしようとしたDFの頭を弾いてそのままゴールへ吸い込まれた。

 2-0で優勝した清水桜が丘だが、今年は決してタレントのいる世代ではない。技術レベルが特別高いチームでもない。それでも「すべての力をチームのために」というスローガンの下、一致団結して静岡の頂点に立った。山田は「とにかく自分たちのできることをやろう。とにかく自分たちが全力でやることを考えています。自分たちがしっかり一つひとつできればいい」。その姿勢を貫き、歴史を変えた。次は全国。清水商時代の栄光を振り返らずに、チームは前を向いて戦う。杉本は「すべての力をチームのために。チームのためにやることを意識している。まずは(球際で)頑張ることからしっかりやって、1試合1試合勝ちたいです」。名将・大瀧監督が「一人ひとりが大人になってきたから、少しずつサッカーそのものをやれるようになってきた。競争のようにドーンと行くのではなくて、しっかりものを見て判断できるようになってきたから、ちょっと面白いですね」と目を細めるように、頑張り以外の部分での成長も見えるチームが初の全国でも「清水桜が丘らしく」戦い抜く。

(取材・文 吉田太郎)
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