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[練習試合]久保建英のゴールなど反発力も見せたU-15代表、韓国遠征中止も確かな成果手にする国内合宿に

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 6月5日から8日にかけて、U-15日本代表が東京都と千葉県内での国内合宿を実施した。当初は韓国遠征が予定されていたが、MERS(中東呼吸器症候群)の同国での流行を受けて前日に予定変更。「韓国遠征は強化の過程で非常に重要な遠征と位置付けていた」(森山佳郎監督)だけにチームにとって小さからぬ痛手となったが、「万が一のことを思えば仕方ない」(同監督)のも確か。切り替えて国内での合宿に臨んだ。

 代わって急きょ7日に組まれたのは、柏レイソルU-18横浜F・マリノスユースとの練習試合。どちらも控え組とはいえ、ほとんどが中学生で構成されているU-15代表にとっては、明確に格上の相手である。「フィジカル的に上回る相手にどう“戦う”のか」(森山監督)がテーマの試合となった。

 非公開で行われた午前の柏U-18との試合では「思っていた以上」のプレーを選手たちが見せて相手を上回る内容で効率よく加点。FW山田寛人(C大阪U-18)、中村敬斗(三菱養和巣鴨ジュニアユース)が2得点ずつを挙げるなど、6-1での圧勝となった。

 ただ、午後の横浜FMユース戦は簡単にいかなかった。「横浜FMさんは柏戦の結果を選手に聞かせて戦意を煽ってくれた。おかげで本当に激しい試合を戦うことができた」と森山監督が言うように、立ち上がりから容赦なくフィジカルコンタクトを繰り返し、激しいプレッシャーをかけてくる相手にU-15代表の選手たちはミスを頻発。17分にビルドアップのミスからボールを奪われての速攻からFW渡辺力樹に先制点を許すと、そのまま試合の主導権を奪われてしまった。24分には再び渡辺に決められ、0-2のビハインド。日本は鈴木冬一(C大阪U-15)の強烈なシュートがGKを脅かす場面が終盤にあったが、個々の奮闘も実らず、前半のチャンスらしいはその1本くらいだった。

 後半、メンバーをほぼ総入れ替えした日本は前半より内容面で改善したものの、開始早々のCKから失点し、16分にはPKで、20分にはさらにCKで失点するなどセットプレーから次々とゴールを奪われてしまう。だが、ここで日本ベンチが長身CB瀬古歩夢をボランチに上げて、右MFで消えていることの多かった久保建英(F東京U-15むさし)をトップ下に置く配置転換を実施し、流れを変えに行く。

「中盤でボールを奪えれば、チャンスも来る。流れがグッとこちらに来た」

 指揮官がそう振り返ったように、際立ったのはボランチに入った瀬古。ルーズボールに競り勝ち、インターセプトを貪欲に狙い、コンタクトプレーでは高校生を吹き飛ばす。若かりし日の稲本潤一を思わせるプレーぶりで中盤での主導権を奪い返すと、良い守備からの良い攻撃という流れができ始める。体力の限界に達しているかに見えた鈴木が小さな体を目一杯に使って攻守で踏ん張れば、それに呼応するように周囲の選手の温度も上昇。まるで違う空気感がピッチに生まれ出す。

 その流れに前線のコンビが応える。まずは前回の候補合宿に初招集となって「昇格してきた」FW山田。指揮官自ら「最大の収穫」と評したこの大型ストライカーは、タフな競り合いを続けた末の35分、久保が繰り出した絶妙の浮き球スルーパスからディフェンスラインの裏へと飛び出す。「(久保)建英が前を向いたとき、タイミングよく行ければと思って走った」という山田がこの好機をものにして1点を返す。

 さらに37分には、久保が魅せる。中央からドリブルで持ち込むと、流したパスから味方がつぶれたこぼれ球を得意の左足でフィニッシュ。「味方がうまく競ってくれて、こぼれてきたので、『決めなければ』と思った」という一撃がゴールネットを揺らして、2点目のゴールとなった。久保は終了間際にも速攻からの独走ドリブルで絶好機を迎えたが、これは横浜FM側の意地のディフェンスもあってゴールならず。5-2で試合終了となった。

 森山監督は「収穫と課題は同じところ。激しいプレッシャーを受けたときに判断が遅くなるし、プレーの質が落ちる(ことが課題)。それに気付けたことが収穫。それに最後に反発力を見せてくれたことに光明を感じた。『今後が楽しみだな。こいつらはもっと伸びていくぞ』と思わせてくれた」と総括。思わぬ形での遠征中止となったが、それでも確かな成果を手にする国内合宿となった。

[写真]後半37分、U-15代表は久保が左足でゴール

(取材・文 川端暁彦)

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