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“日本病”に直面したハリル監督「ショックに似た感覚」

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[6.16 W杯アジア2次予選 日本0-0シンガポール 埼玉]

 これまでに何度も見た光景だった。一方的に攻め込みながら最後の精度を欠き、得点を奪えないまま時間だけが経過。過去のW杯予選で数々のドラマが生まれてきた後半アディショナルタイムに一縷の望みを託すも、最後までゴールネットを揺らすことはできなかった。

「この試合に関してコメントするのは少し難しい。長いサッカー人生の中で、このような試合を見たのは初めてだ」。試合後の記者会見。バヒド・ハリルホジッチ監督は信じられないといった表情で首を振った。日本代表の永遠の課題とも言える決定力不足。歴代の日本代表監督が皆、悩まされてきた“日本病”にハリルホジッチ監督が直面した瞬間だった。

「大げさに言えば、我々にとってほとんど怖くない相手だった」。指揮官はシンガポールについてそう評する。しかし、そんな相手から1点を取り切ることができなかった。「1点取ればすべてが変わったゲームだった。少し正確性を欠き、慌てた部分もあった。キーパーの素晴らしいセーブがあり、ポストやバーにも当たった」。90分間で放ったシュートは23本。しかし、DF槙野智章のヘディングはポストを叩き、FW本田圭佑のFKはクロスバーを直撃した。そして、相手GKが再三のビッグセーブを披露した。

「ショックとまではいかないが、少しそれに似た感覚を持っている」。呆然自失とした表情を浮かべた指揮官は「私は負けるかもしれないというのが怖かった。なぜなら、そういうことが起きるからだ。このような試合では、最後のチャンスに相手が得点を取って我々が負けるということはあり得る」と率直に語った。

 日本の決定力不足を解決するマジックはあるか――。報道陣の質問に「フットボールにマジックはない。マジックはなく、トレーニングするだけだ」と返した指揮官は「選手に教えるとすれば、このような試合ではPKが欲しかったということだ」と指摘した。

「我々は前半、あれだけ支配していたが、(ゴールまで)16m以内のFKがなかった。これは少し説明しがたい。ハーフタイムには『FKがないじゃないか』と言った。そういうところは彼らに教えることができるかなと思う」

 ゴール前でファウルをもらう。ペナルティーエリア内では狡猾にPKを狙う。「イタリアなら3回ぐらいはPKをもらっている。そういうナイーブなところは少し向上させないといけない」。指揮官の目には、日本人選手はずる賢さやしたたかさが足りないと映ったのかもしれない。

「魔法の杖はない。汗をかく仕事をするしかない。そのために私は日本に来た。選手を非難することはできない。もし非難するなら私を非難してほしい。勝ったら選手のおかげで、負けたら私の責任だ」

 そう選手をかばうハリルホジッチ監督は試合終了直後に選手、スタッフを集めてピッチ上で円陣を組み、言った。「顔を上げてくれ。勝つためにキミたちはすべてを出した。だから次は勝とう」

(取材・文 西山紘平)

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