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[総体]「今年は1冠も育英に取らせるつもりはない」桐生一が選手権準Vの前橋育英破り、全国へ!!:群馬

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[6.21 全国高校総体群馬県予選決勝 前橋育英高 0-2 桐生一高 正田スタ]

 21日、平成27年度全国高校総体「2015 君が創る 近畿総体」サッカー競技群馬県予選決勝が行われ、1月の全国高校選手権準優勝の前橋育英高桐生一高が対戦。MF木暮一樹(3年)とFW滝沢昴司(3年)のゴールによって桐生一が2-0で勝ち、8年ぶり3回目となる全国総体出場を決めた。

 選手権準Vの前橋育英を予選敗退に追い込んだ。立ち上がりにスーパーゴールで先制し、押し込まれた時間帯も耐えた桐生一は押し返した後半にFKで追加点。相手に決定機をつくらせないハードワークと球際での強さ、そしてカウンターから決定機を連発するなど堂々のゲーム内容で前橋育英に土をつけた。滝沢昴が「選手権であそこまで行ったのは刺激になりました」というように、昨年無冠だった桐生一にとって前橋育英の全国での活躍は活力になっていた。新人戦決勝に続いて目標の前橋育英撃破を果たして県内2冠。守備の柱・一宮憲太主将(3年)は「インターハイなんで・・・」と喜びは控えめながらも、「今年は1冠も育英に取らせるつもりはない」と力強く宣言した。

 前半8分に生まれたスーパーゴールが桐生一を乗せた。桐生一はMF井上翔太(3年)の左クロスのクリアボールをコントロールした木暮が、身体に巻き込むように左足を振りぬく。ゴール正面左寄りの位置から放たれた一撃は前橋育英の名手・GK山岸健太(3年)の伸ばした手の先を抜けてゴールを破った。本来、桐生一はボールを繋ぐスタイル。今季、関東大会やリーグ戦で守りを固める相手に弱かった桐生一は、田野豪一監督が「まずミドルシュートを打え、背後を取ろうと。ただ(裏へ)蹴るのではなくて、意図のあるフィードで相手の守りを伸ばすんだよと。そこで手前で諸部。あとは強さを出すためにクロス。(攻撃を作り直すのではなく)仕上げろと」と説明したように、今大会初戦から続いた守りを固める相手への対策としてクロスとミドルシュートのトレーニングを積んでいた。その結果、準決勝までの5得点中4得点はクロスから。決勝ではスタイルの全く異なる前橋育英が相手だったが、トレーニングしてきたミドルシュートが先制点をもたらした。

 先制後もMF滝沢和司(3年)、滝沢昴の「滝沢ツインズ」のドリブルを交えながら大きな展開を活用する桐生一に対し、前橋育英も前半半ばごろから攻撃の圧力を強めていく。PAで跳ね返される展開の続いた序盤から徐々に幅を使った攻撃を増やした前橋育英は、右サイドから決定機を作り出す。25分、DF3人を置き去りにしたMF関川優太(3年)の折り返しをFW金子拓郎(3年)がヒールパスで中央へ流し、FW高沢颯(3年)が飛び込む。37分にはMF井上滉斗(3年)が右オープンスペースへ展開。これを受けた高沢が切り返しでDFを外し、左足を振りぬいた。そして39分には左FKからGKの手前に飛び込んだFW野口竜彦(3年)が決定的なヘディングシュート。選手権決勝でゴールを決めている野口の一撃に会場が一瞬沸いたが、枠を捉えることができない。

 後半、前橋育英はCBとして先発した尾ノ上幸生主将(3年)をボランチへ上げると7分、尾ノ上が右足アウトサイドキックで右サイドへ絶妙な展開。カットインした関川が左足を振りぬいたがこれは桐生一DFがブロックし、14分には中央から野口が仕掛けてPA左へこぼれた球にMF大塚諒(2年)がフリーで走り込んだものの、桐生一はGK休石陸(3年)がビッグセーブで弾き出す。12分に10番MF横澤航平(3年)を投入した前橋育英が攻勢に出ていたが、田野監督が「育英相手に下がっちゃうと好き勝手やられちゃうから。押して、押していかないと」というように、桐生一は引かない。また一宮が「新チーム発足してからタフなチームをテーマにやってきた。みんなハードワークして相手よりも走るということを言っているので、良くやっていると思います」という桐生一は運動量多く前橋育英のパスワークに食い下がり、球際で諦めずにスライディングしたり、身体を当てるなど最後の一歩で相手の攻撃をわずかに狂わせる。

 滝沢ツインズはじめ個々のレベル高い桐生一は、攻撃面でも相手のプレッシャーをDFが剥がして前進すると、MF島田祐輔(3年)の配球から滝沢和や井上がドリブル、クロス。そして17分、桐生一はカウンターから滝沢和が個人でPA手前まで持ち込んでFKを獲得する。これを滝沢和の双子の弟、滝沢昴が右足で狙うと、ボールはゴール左隅へ吸い込まれた。大きな、大きな2点目を奪った桐生一はその後もチャンスを連発。21分には今泉とスイッチして抜け出した木暮が決定的な右足シュートを放つ。GK山岸のビッグセーブでこれを阻止した前橋育英は24分、26分と野口にチャンスが訪れたが、決めることができない。桐生一も相手のミスを突いた滝沢和がGKと1対1になるなど仕留めるチャンスをつくりながら試合を決定づけることができなかった。1点奪い返すことができれば前橋育英にも勝機は十分にあったが、35分にPAで横澤が放った振り向きざまの右足シュートはGK正面。選手交代を繰り返しながら「相手にやりたいことをやらせずにできたと思います」(滝沢昴)と前橋育英の反撃を振り切った桐生一が2-0、全4試合無失点で試合終了の瞬間を迎えた。

 「(育英は)強かったです」と振り返った一宮は全国大会へ向けて「育英が準優勝したんで超えるには全国制覇しかない。インターハイ出るのは久々なので一戦一戦目の前の試合に勝つことを目標にして、もちろん全国制覇を目指していますし、とにかくチーム一つになって選手権へ向けていい経験ができればと思っています」。また木暮は「昨年の選手権準優勝の育英を破ったということで自信になりましたし、全国へ向けていい弾みになりました。持ち味のハードワークとか活かして走りだけでは負けないように、(全国では)優勝狙いたいです」と意気込んだ。最大の目標は選手権で三度前橋育英に勝ち、そして今年は自分たちが主役となって日本一になること。それへ向けた経験を積むための夏だが、群馬代表は高い目標を持って全国舞台に立つ。

(取材・文 吉田太郎)
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