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なでしこを8強に導いた2つの“初ゴール”

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[6.23 女子W杯決勝T1回戦 日本2-1オランダ バンクーバー]

 2つの“初ゴール”がなでしこジャパンをベスト8に導いた。

 まずはDF有吉佐織の先制点だ。前半10分、MF宮間あやのクロスにFW大儀見優季がヘディングで合わせたシュートはクロスバーに弾かれると、さらに相手DFがクリアしたところに右SBの位置から走り込み、冷静かつ豪快にゴールを決めた。

 代表38試合目の出場で奪った初ゴール。喜びのコメントを求められた有吉は「うれしいです」と短く答えたが、とびきりうれしそうな表情はそのゴールの意味を物語っていた。

 優勝した前回の女子W杯はメンバー外。翌12年になでしこジャパンデビューを果たすが、銀メダルを獲得したロンドン五輪ではバックアップメンバーにとどまった。27歳とすでに中堅の域ではあるが、日本を支えてきた右SB近賀ゆかりの陰に隠れていた形だ。

 この日のオランダ戦のゴールはこぼれ球に詰めたものだが、高い位置でプレーし続けたことが功を奏した。「攻撃のところは全体的にテンポが良かったので、そういった意味ではやりやすかった。前線の守備が効いていて(相手に)蹴られることがなかったので、すごく高い位置を保てていたので良かったです」。冷静に振り返りながら、次への意欲もわいている。

「とても良い経験になったので、次にも生かしたいですし、もっと良いゴールにつながるようなプレーを増やしていきたいなと思います」。得点を“良い経験”と表現するあたりに、謙虚な人間性を感じる。今大会、いくつもの起用パターンを試した中で、この日の先発11人を“ベストメンバー”と見る向きも強い。有吉には今後もチャンスが訪れるはずだ。

 そして後半33分、MF阪口夢穂が挙げたゴールも、3大会連続でメンバーに選出されているW杯での自身初ゴールだった。07年大会は出場機会がなく、前回大会はボランチとして全6試合に先発し、初優勝に大きく貢献したが、ゴールはなし。昨年9月29日のアジア競技大会準決勝・ベトナム戦以来となる代表27点目が、W杯出場9試合目で待望の初得点になった。

 オランダの攻撃が勢いを増していた時間帯。大儀見がペナルティーエリア内に進入し、左サイドを上がった宮間にパスを通すと、宮間はダイレクトでマイナスのクロス。FW岩渕真奈がスルーし、中盤から駆け上がった阪口が左足で捉え、ゴールネットを揺らした。

 胸のすくような一連の流れだったが、W杯初ゴールだったことを告げられると、「そうですね、確かに」と本人も意外な様子。グループリーグ3試合と打って変わって日本らしさの出たオランダ戦となったが、「グループリーグ? そんなんありましたっけ? W杯って今日からじゃなかったでしたっけ?」ととぼけた。

 自身とチームの出来はもちろん、フル出場がグループリーグ初戦のスイス戦のみだったことも、不本意と感じる要因なのだろう。報道陣を笑わせつつも、「いや、こんなこと言ってたら怒られる。死ぬ気で1試合1試合戦います」と切り替えた。連覇に向けて突き進むなでしこジャパン。真の大黒柱に彼女が成長する大会となるかもしれない。

(取材・文 了戒美子)

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