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[特別対談]浦和MF柏木×DF槙野「満足したら成長はない」

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 J1第1ステージを史上初の無敗で制した浦和レッズ。MF柏木陽介は攻撃の要として、DF槙野智章は守備の要としてチームのタイトル獲得に大きく貢献した。広島ユース時代からお互いを知る2人が、好調の秘密から学生時代の思い出、そして第2ステージに賭ける思いまでを語り尽くす。

マキがMVP(柏木)
陽介は努力家(槙野)


――第1ステージを無敗で制した一番の要因をどう捉えていますか。
柏木「去年までの反省が生きたと思うし、何よりも今年はチームとして我慢すべきところで我慢して、試合の中で選手が話し合い、どうしていくべきかを判断できたことが良かったと思います。もちろん(ペトロヴィッチ)監督の戦術の下での判断ですが、その中で『今はこうした方がいいんじゃないか』という話し合いが、選手同士でもできたのが一番大きかったかなと思います」

――去年までの反省点を具体的に教えて下さい。
柏木「特に僕もそうでしたが、去年までは我慢できなくなっていました。『攻めたい』『もっとパスを回したい』と、自分がやりたい理想のサッカーだけを追い求めていたようなところが、チームとしてもあったんじゃないかなと思います。シーズンの終盤は特にそうでした。ガンバ戦(第32節●0-2)などは負けない戦いをしなければいけないところで、優勝を決めにいくような戦い方をしてしまいました」

槙野「陽介の話したことがすべてですね。過去の結果、昨シーズンまでの悔しい結果が僕たちを動かす原動力になっていますし、今シーズンは監督から求められるよりも先に選手同士でお互いに要求し合うことで、高め合えていると感じています」

――去年からお互いに成長を感じた部分はありますか。
槙野「陽介はもともと、技術の高い選手ですが、気持ちの部分が求められていたと思う。今年はそれが加わったので、頼もしい存在です。自分のマイナスの部分を受け入れながら、求められていること、やらなければいけないことを人から言われる前に気付いて、努力して変えたんだと思う。こう見えて努力家ですからね、陽介は」

柏木「いろんなところで言っていますが、僕はマキが第1ステージのMVPだと思っています」

槙野「はっはっはっはっ」

柏木「僕もそうですが、マキもいろいろと我慢ができるようになったよね。監督はマキを攻撃参加させたい気持ちがあると思うけど、これまではマキとモリ(森脇良太)が上がった裏を突かれて、カウンターで失点することも多かった。でも、今年は攻撃参加を抑えて守備に重心を置いてしっかりゴールを守ってくれているし、代表でセンターバックを経験したことで自然と我慢できるようになったんだと思う。マキがちゃんと守備をしたら、やられないんだとみんながあらためて感じたと思うんですよ。第1ステージで1対1で抜かれたのは、宇賀神(友弥)いわく1回だけらしいからね」

槙野「1対1でやられたのは、ゼロだと思っていたけど」

柏木「僕もマキは1対1では抜かれてないと思っていたけど、宇賀神に言わせると松本山雅戦(第4節)で前田(直輝)くんに抜かれたらしい」

槙野「ちょっと入れ替わっただけだと思ったけど、厳しいね(笑)」

――守備に重心を置こうというのは、意識的にでしょうか。
槙野「反発心からと言ったらいいですかね。『槙野智章の良さは?』という質問に対して、やっぱり『攻撃』という言葉が出てくることが多いんですよ。でも、自分のストロングポイントは人への強さや守備の部分なので、僕の守備を知ってほしかったし、自分としても表現したかった気持ちがありました。監督の目指すサッカーが攻撃主体というのはありますし、ゴールを取る喜びはもちろんありますが、守備の楽しさや相手のキープレイヤーを抑えて完封する喜びを覚えた自分がいましたね」

柏木「マキもそうだけど、負けていたら前に前にイケイケになると思うんですよ。ただ、そういう部分で大人になれた分、チームも良くなっているのかなと感じました」

槙野「1点取られたら、2点取りに行こうと考えるのが当たり前だと思う。でも、今年はリードされても、『全然、問題ないよ』『残り10分あるから大丈夫』『最悪、引き分けでも十分だよ』という考えを持つことでチームに余裕が生まれ、落ち着いた試合運びができています。僕たち2人だけでなく、チーム全員がそういう考えを持てているからこそ、いい意味で余裕を持てて負けない試合が続けられたと思う」

柏木「ただ、正直、柏戦(第10節延期分△3-3)はさすがにこれは負けてしまうのかと感じた。でも、『負けるときはやっぱり来るのか』と思っていたら、アディショナルタイムに同点ゴールが決まって」

槙野「第1ステージでは神戸戦(第16節△1-1)は一人少なくなって追い付かれたけど、それ以外の引き分けはギリギリで追い付いた試合ばかりです。川崎F戦(第5節△1-1)に仙台戦(第11節△4-4)、それと柏戦。気持ちの余裕と考え方次第で、試合終盤にゴールが生まれる確率が高まったというのはあるよね」

柏木「去年は優勝したいという気持ちが強すぎて、自分たちに余裕がなかったんだと思う」

槙野「常にイケー!! 絶対に勝つぞー!! って感じだったからね」

柏木「今はマキが試合前にいい意味でふざけたりして、リラックスした状態で試合に臨めているのも良いんだろうなと思います」

俺、もうダメだ(柏木)
帰りたきゃ帰れ(槙野)


――広島のユース時代から一緒の2人ですが、初めて会ったときのことを覚えていますか。
柏木「15歳だっけ?」

槙野「15歳だね。中3の3学期」

柏木「ユースに入るのに転校しないといけなかったから、1月の頭だったね」

槙野「他の年代は全国から選手が集められて12、13人がユースに入りますが、僕たちの代は7人しかいなかったんです。しかも、僕を含めた6人が知り合いで、陽介が1人だけ関西からやってきたという形」

柏木「僕は人見知りだから、最初は全然しゃべれなかった。マキは同じクラスだったし、しゃべりかけてくれる方だったけど、周りから見ると半分いじめられているような感じだった(笑)」

槙野「こっちはほとんどが知り合いの中、陽介は関西人で珍しいタイプだったから『だれだよ』みたいなね(笑)」

――サッカー選手としての第一印象は?
柏木「こんなに堂々としている中3っているんだって思いました。僕はビクビクしているのに、まったく物怖じしないんですよ、マキは。中3なのに高校生相手にバシバシ声を出していたし、呼び捨てしていたから『エー』って思った」

槙野「そうだった(笑)。陽介は高1から試合に出ていたよね。最初は知らない選手だったけど、ちょこちょこ試合に出ていたから、『こいつ、うまいな』とだれもが認める存在でした」

柏木「でも中学のときはドリブルばかりしていたのに、ユースの練習ではポゼッションやパスの練習が多くて、ワンタッチとかやったことなかったから最初のうちは全然できなかった。僕は結構ネガティブなので、ある日の夜にマキと2人でストレッチしていて、『俺、もうダメだ』って話したときがあったんです。そうしたら、マキに『帰りたきゃ、帰れよ』と言われました」

槙野「そうだ。懐かしいねー。覚えてるよ。でも、陽介とは高校1年と3年で同じクラスで、ユースで練習を一緒にやって、年代別代表でも一緒だった。一緒にトップチームに上がって、陽介が浦和に移籍したら、僕も追っかけるように浦和へ来て。中3からずっと一緒だよな」

柏木「今でも普通に話すけど、周りからは『同期は仲悪いだろ』っていじられるね」

槙野「コンビの芸人さんとかだとよく言われるじゃないんですか。一緒にいすぎて、逆にギクシャクしちゃうみたいな。僕たちはそんなことないんですけどね」

――ただ、直してほしいところとかはあるんじゃないですか。
柏木「いや、特にないですよ。でも、さすがに毎日一緒にいたらうるさいなって思うかな。マキは月一くらいがちょうどいいと思う(笑)」

槙野「それ、よく言われる(笑)。お互いを知り過ぎているとは思うけど、直してほしいところって本当にないですね」

勘違いしない(柏木)
喝を入れていく(槙野)


――冒頭でも話していましたが、試合中に話し合いの場を持つなど、チームとしてコミュニケーションが円滑に取れていたことが好結果につながったようですね。
柏木「普段、話していないというわけではありませんし、近いポジションの選手とはよく話しますが、今年は試合の中で一番話し合えていると感じます。みんなが鼓舞し合いながら気持ちを高めていけたり、失点しても『ここは我慢しよう』『こう修正しよう』という良い声の掛け合いができています」

槙野「それが今まではなかったよね。もちろん、監督からの指示もありますが、ピッチ上には監督はいません。自分たちで試合の流れを読んで、何をすべきかを伝達して意志疎通を図り、みんなが同じ考えを持ってプレーできていると感じます。ボールアウトしたときや選手が倒れているときに後ろの選手は後ろの選手で話しているし、前の方の選手は陽介に任せていますね」

柏木「あと僕は去年までの自分に結構反省していることがあって、イライラするのをなくそうとしていたんですよ。これまで自分はうまくいかないとき、勝手にイライラして、自分自身を見失ってしまうことがあった。それが自分としても良い方向に進めなかったし、チームとしても良い方向に進まなかったと思っているので、まずはそれをなくそうとしていました」

槙野「陽介の理想は高いからね。僕らからしたら良いプレーだと思っても、本人としてはまだまだというのがあったんだろうね」

柏木「それに今年はボランチでのプレーが多くなったから、まずは守備をしっかり頑張らないといけないと思った。球際で負けないように戦い、セカンドボールへの一歩を意識することで味方を助ける守備もできるようになってきたし、声でチームメイトを動かせるようになってきたと思う」

――チーム内での2人の影響力は大きそうですね。
槙野「僕らは言いますからね(笑)」

柏木「そうそう、発言する方なので(笑)」

――第2ステージで浦和は、どのように変わっていくでしょうか。
柏木「大きく変わらないと思います」

槙野「変わらないね」

柏木「変えないほうがいいと思いますが、欲を言えばもっと後ろからパスをつないで、全員で崩していけるようにしたいし、それが監督の求めているサッカーだと思う。ただ、それで負けてしまってはよくないと思うので、つなぐ意識を持ちながら少しずつトライしていきたい」

槙野「ウチの選手は、一人ひとりがサッカーがうまいのは分かっています。そこに戦う気持ちや戦う姿勢がプラスアルファされたことで、第1ステージを取れたと思っています。だから、もしここで満足している選手がいれば喝を入れていかないといけないし、僕自身も責任を持った発言の中で、責任を持った行動を見せていきたい」

柏木「僕たちはまだ第1ステージを取っただけで、強いチームとは言い切れない状態です。年間のタイトルを取ったわけではないので、今ウチが強いチームだと思っていたら、それは勘違いになってしまう」

槙野「満足しないということが、今後の成長につながっていくはずなので、上を目指して第2ステージも戦っていきます」

――最後に新スパイクの印象を聞かせてください。槙野選手はピッチを魅了するゲームチェンジャーのための「X」、柏木選手はゲームを支配するプレーメーカー向けの「ACE」が新たなスパイクとなりますが、印象はいかがでしょうか。
槙野「今まで4種類あったアディダスのスパイクが2種類になったのは斬新ですよね。僕の履く『X』はアディダスの象徴でもある3本線がデザインにありませんが、代わりにかかとの部分に大きなロゴが入っています。横に入れるよりも目立つので、ロゴの大きさはかなりの注目ポイントだと思います」

柏木「僕の履く『ACE』にはポイントが43本もあるので、足の裏でボールを止めやすい印象です。試合中に後方からパスをもらったとき、足の裏で止めるプレーが増えてきているので助かりますね。あと、アッパーの部分が柔らかくてキックのコントロールがしやすそうです。プレーしていく中で、さらに足に馴染んでいくと思うので楽しみですね」

(取材・文 折戸岳彦)

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