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[クラブユース選手権(U-18)]柏に「回させて」勝つ、徹底して戦った千葉U-18がダービー制して8年ぶりの4強進出!

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[7.28 日本クラブユース選手権(U-18)大会準々決勝 柏U-18 1-2 千葉U-18 前橋総合]

 7月28日、日本クラブユース選手権(U-18)準々決勝で「千葉県ダービー」が実現した。柏レイソルU-18ジェフユナイテッド千葉U-18。因縁深い両チームの激突は、火花散る熱いバトルの末、千葉に軍配が上がることとなった。

 一般にスポーツの世界で理想の精神状態は「チャレンジャー」のマインドを持つことだとされる。対戦相手の良さ・強さを理解した上で、それを恐れることなく自分の良さ・強さを出し切るために立ち向かっていける、そんな状態である。そして、この試合における千葉の心理状態はそれに近かった。

「(育成に関して)いまは柏さんが一歩も二歩も三歩も先を行っている。そのことを認めた上で、では勝つためにどうすべきなのか。『勝つためにはこれしかない』形だったと思う」

 千葉の江尻篤彦監督はそんな言葉で試合に臨んだ心構えを形容した。「本当はもっと(ボールを)握って戦いたいんだけどね」と笑いつつ、しかし現実を見据えてディフェンスから入る戦術を選択。柏に「回させて」勝つ。ヘタにボールを持って動かすことはせずにボールを奪ったらシンプルに攻め切る。狙いは明確で、意思統一も確かだった。

 一方、柏側にしてみると、ここまでの徹底は予想外だったかもしれない。下平隆宏監督は「もう少し(ボールを)持たれる時間帯もあると思っていた。割り切った戦いをやられてしまった」と肩を落とす。そして同時に悔やんだのは「ゲームの入りが悪かった」ことである。

 ゲームの流れは開始5分の攻防で決まった。ボールを持った千葉FW伊藤大将が、チェックの甘い柏の守備をかいくぐってスルーパス。タイミング良く抜け出したMF大塚一輝がGKとの1対1からコースに流し込んで先制点を奪い取る。「『ゆるい』と言われても仕方ない」。柏の指揮官を嘆かせたこの1点は、柏に重くのしかかることになる。

 以降は柏のポゼッションゲーム。ボールを左右に振りながらスキをうかがう柏に対し、しかし千葉も粘り強く対応を続ける。「千葉さんの守備は本当にしっかりしている。そのチームが先制点で『守り切る』とハッキリしてしまった」と下平監督が指摘するように、柏はボール支配で圧倒しながら思ったようにフィニッシュまでは持ち込めない流れに陥っていく。関東予選で守り勝っている経験も心理面で千葉側へポジティブに作用した。

 ただ、後半に入ると気温の上昇が千葉の足を止め、徐々にスキも見え始める流れになる。江尻監督が14分に最初の交代カードを切ったのは、まず守備の穴をふさごうというニュアンスが強かった。FWの伊藤に代わって投入されたのは、DF菊池俊吾。本来はレギュラー格の選手だが、大会前日に急性胃腸炎で離脱しておりこの試合もベンチスタートだった頭脳派のユーティリティープレーヤーである。そんな男が投入された位置は「Aチームの試合ではやったことがない」というインサイドハーフ。「あのサイドからやられ始めていた」(江尻監督)ことを受けて、高い位置に守備で気の利く選手を置く。そんな采配が、しかし攻撃面で決定的な場面を生み出す。

 20分、FW氣田亮真がサイドからドリブルで仕掛ける。「(氣田)亮真くんならきっと抜く。これは絶対来るなと思った」という菊池がゴール前へ動き出すと、その位置へピタリとクロスが合う。ダイレクトで放ったシュートは必ずしも狙いどおりに飛んだわけではなかったが、ゴールラインをしっかり割って、千葉に待望の追加点が生まれた。

 殊勲の菊池は「監督もまさか自分が決めるとは思ってなかったと思うし、自分も決められると思ってなかった」と破顔一笑。高校年代の公式戦で「初めて決めた」という得点は、押し込まれていた千葉にとって宝石のように貴重な1点となった。

 柏もこのまま終わるチームではなく、25分にFW浮田健誠が1点を返してなおも攻勢を持続。今大会で大きく成長したと下平監督も認めるメンタルの強さを見せてくれたが、菊池が決めた追加点は重かった。結局、スコアは動かず。2-1でダービーを制した千葉が、07年大会以来となる4強進出を決めた。

[写真]後半20分、千葉U-18は交代出場のMF菊池(左)が決勝ゴール

(取材・文 川端暁彦)
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