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[総体]PICK UP TEAM vol.4_西武文理高(埼玉2)

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特集企画「全国高校総体PICK UP TEAM」

 激戦区の埼玉から初出場校がエントリーだ。西武文理高の山口豊監督は「運も勢いもあったと思う。ある程度の勝負はできると思っていたけど、最初からインターハイ出場を見据えてきたわけではない。目の前の試合に対して最高の準備をして臨もうとやってきた結果」と無欲の勝利を強調した。

 前線にはパンチの効いたシュートを打てるFW田辺耀平、後方には180cm台後半の長身で左足のロングフィードを放つDF三ツ田啓希と攻守の要がそろい、堅守速攻をベースに勝ち上がって来た。

 セットプレーも大きな強みとなる。MF木村俊平のロングスローがあるからだ。中学生までサッカーと並行して習っていた水泳の得意種目は、バタフライ。肩関節が柔らかいようだ。高校に入学してからは、筋力トレーニングと角度を意識した投げ込みで飛距離を伸ばし、タッチラインからニアポスト程度だったものをゴール前まで届かせることに成功した。1試合で27本も投げたことがあると言う。「自分が投げて、三ッ田たちが競って、こぼれ球で決められれば良い」というロングスロワーは貴重な戦力だ。山口監督は「うちには、全部の要素がそろっている子はいない。(苦手で)へこんでいる部分もあるが、飛び出ている部分を使うように意識すれば、選手の特徴が生きると思う」と個性派の起用理由を明かした。

 しかし、当初は県1部リーグで厳しい結果にさらされた。初戦は勝ったものの、6連敗。FW田辺は「リーグ戦の序盤は無得点が多かった」と攻撃面に課題を抱えていたことを明かした。個性があるとは言っても、選手単体の戦力だけを考えれば、強豪とは言い難いのが実情だ。そんな集団が躍進した要因は、自チームのビデオ分析にある。昨季までは対戦相手の分析を行っていたが、今季は監督も選手も一緒になって、自分たちの試合を見直すことを習慣にしてきた。

 山口監督は「ビデオを見ると、子どもたちは最後の部分だけを捉えてしまう。でも、修正すべきポイントはいくつもあって、どれか1つでも改善できれば決定的なピンチには至らなかったんじゃないかと映像を見ながら話すと、選手にも分かりやすいようだった」と話した。チームキャプテンを務めるGK高田謙は「リーグ戦ではあまり良い結果が出ていないけど、内容は良くなっている。総体予選決勝で西武台に負けた試合では、相手がサイドでボールを持って少し下げたのに、DFラインを押し上げていなかったので失点した。GK、DF、ボランチのラインの間隔がピッチ横から撮っているビデオだと分かりやすい。まだ体力面の問題で終盤に間延びすることもあるけど、アップダウンをこまめにやろうと話し合って、守備は良くなってきた」と、その効果を認めた。

 一体感のある守備と、個性際立つ速攻とセットプレーを引っ提げ、待望の晴れ舞台に挑む。山口監督は「全国大会では、うちが一番弱いと思って戦おうと思っている。やる前の準備が勝負。子どもたちが楽しんで、結果が出ればOK」と笑みを浮かべた。恐れることはない。三ッ田は「僕たちは、初出場のチャレンジャー。受けて立つような立場じゃない。思い切ってやれることが多い。予選と同じように一つずつ勝っていきたい」と意気込みを語った。初戦の相手は、選手権で全国4強を経験している大分高。相手にとって不足なしだ。

(取材・文 平野貴也)
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