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[プレミアリーグWEST]全国総体連覇にも「ブレない」東福岡、AT2発でG大阪ユースに逆転勝ち!!

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[8.22 高円宮杯プレミアリーグWEST第11節 G大阪ユース 2-3 東福岡高 ガンバ大阪練習場]

 8月22日、高円宮杯U-18サッカーリーグ2015 プレミアリーグWESTが夏休みの中断期間を終え、再開を迎えた。この日の試合は2位・ガンバ大阪ユース(大阪)と4位・東福岡高(福岡)の一戦のみ。結果的に「再開マッチ」となったゲームは、両陣営の予想や思惑を超えた何ともドラマチックな試合展開となった。

 G大阪がFW武田太一、MF食野亮太郎、DF初瀬亮を負傷で欠いていたのに対し、東福岡もGK脇野敦至がU-17日本代表の欧州遠征で不在の上、総体決勝で先発したDF福重達也、MF毎熊晟矢が負傷離脱中。さらにこの日はG大阪がDF松岡秀平を、東福岡がMF藤川虎太朗を出場停止で欠いており、穴を埋める選手がいるかどうかを競う、ある意味でリーグ戦らしい戦いでもあった。

 立ち上がりからMF市丸瑞希を中心にボールを動かすG大阪が主導権を握る展開。ポゼッション時には4トップ気味になる攻撃陣への縦パスを組み合わせながら攻め立てた。ただ、東福岡も小気味良いサポートからしっかりとパスをつなぐ時間帯を作るなど、“持たれっぱなし”には決してしない。前半は決定機の数でG大阪が少々上回ったが、東福岡も藤川に代わって出場のMF三郎丸瑞基が惜しいミドルシュートを放ち、CKからフリーになったDF福地聡太が際どいヘディングシュートを放つなど、堂々と渡り合った。

 ポイントは自信だろう。昨年のチームに比べて個々の能力で劣ると言われた今年のチームだが、夏の高校総体では苦しい試合を拾いながらチームワークで優勝まで辿り着いた。優勝することで雰囲気が悪くなることもあるものだが、「ブレる選手たちではない」と森重潤也監督は言う。総体後にはオフも与えたが、そこでコンディションを崩して合流してくるような選手もおらず、「言われなくとも自分たちがどうすべきか分かっている」(同監督)。基本的に辛口の指揮官がサラッと示した信頼に、今年のチームの強さの秘密は凝縮されている。

 そして先制点は後半7分。「必要のないファウルだったし、相手がしたたかだった」とG大阪・梅津博徳監督を嘆かせたシーンからだった。PA内でボールを収めたFW餅山大輝をDF吉岡裕貴が引きずり倒す形になってしまい、PKの判定が下る。これをMF中村健人が冷静沈着に決めて、1-0。東福岡がリードを奪った。

 とはいえ、G大阪もこのまま無得点で終わるような凡庸な攻撃力のチームではない。攻撃を加速させてアグレッシブにゴールへ迫る姿勢が強まる中で後半18分にMF大原俊輔が1点を返すと、直後の21分にもCKからオウンゴールが生まれて逆転成功となった。さすがに東福岡側のムードも沈み、「あきらめたのかと思った」と梅津監督も振り返る。

 だが、東福岡は死んでいなかった。「今年のチームに、うまくいかないときに『何だよ!』となったり、腐ったりする選手はいないので」(森重監督)。選手交代のカードを切りつつ、反攻を継続。守っても、脇野に代わって先発したGK前島正弥が試合を通じて好守を連発しており、G大阪に追加点を許さない。そして迎えたアディショナルタイムだった。「相手のスタミナがなくなっていた」(森重監督)、「ちょっと落ちていたのは確か」(梅津監督)と両指揮官が分析する時間帯に、試合はひっくり返った。

 まずはお家芸であるサイド攻撃が得点に結び付く。「サイドからの攻めはずっと揺るがず、東福岡が取り組んできている形」(森重監督)。ドリブルで持ち出した中村が右サイドのMF三宅海斗にパスを散らし、これを三宅が速いクロスで折り返す。飛び込んできたのは何とMF鍬先祐弥。中盤守備に専心していた男の一発で同点ゴールが生まれる。

 そして、さらにその直後、CKからのカウンターだった。最初の攻勢はよく戻ったG大阪側に阻まれたかに見えたが、サイドからパスをつないで、最後は中央からMF高江麗央。総体ではメンバー落ちを経験している交代出場の男が、見事なミドルシュートを突き刺して試合は終了。「あれは本当に素晴らしいシュートだった」(梅津監督)。敵将も脱帽する一撃で、なんともドラマチックな試合は終幕を迎えた。

「ラッキーなだけ。甘いところがたくさんある」。試合後、森重監督はいくつものチャンスを作られ、戦術的にもピッチ内で修正できなかった点を厳しく指摘し、気を引き締め直した。一方、梅津監督は「詰めが甘い」と嘆きつつ、「まだ何もあきらめるところではない」と、逆襲を誓った。プレミアリーグは残り7節。まだまだ何かが決まる段階ではない。

[写真]後半アディショナルタイム、東福岡は交代出場のMF高江が決勝ゴール

(取材・文 川端暁彦)
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