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「お前の番だ」…あれから3年、東京Vの7番を背負うFW杉本竜士の思い

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[8.23 J2第30節 東京V0-1愛媛 味スタ]

「次はお前の番だから。今度はお前が7番をつけろ」。そんなメッセージを託されてから早くも3年の月日が経った。東京ヴェルディMF杉本竜士はプロ4年目を迎えた今シーズン、尊敬してやまない先輩・MF河野広貴(F東京)に“託された”『7番』を背負い、ピッチ上を恐るべき走力で駆け回っている。

 東京Vユースからトップ昇格が決まった2012年当時、杉本は河野とともにプレーすることを心待ちにしていた。しかし、2012シーズンから河野はFC東京へ移籍。夢は叶わなかった。しかし移籍発表直後、先輩から一本の電話がかかってくると「今度はお前が7番をつけろ」と激励された。

 こうしてルーキーイヤーに背番号7を希望した杉本だったが、2012シーズンの背番号は既に決定済み。自身は33番となり、7番は空き番号になった。その後も縁がないまま、3年の月日は過ぎる。2012年途中からはMF柴崎晃誠(広島)、2013年には後輩のMF中島翔哉(F東京)、2014年にはブラジル人助っ人MFニウド(札幌)が7番を背負った。

 その間の杉本は2012年から2013年はJ2通算5試合の出場に留まり、2013年夏にはFC町田ゼルビアへ期限付き移籍。東京Vへ復帰した2014年はJ2通算16試合に出場し、4得点だった。東京Vでは33番を着け続けた。

 それでもプロ4年目を迎え、ようやく7番を背負うことが決まった2015シーズン。目覚しい活躍でチームを象徴する一人に成長している。開幕当初こそ途中出場が多かったものの、第12節から今節まで連続で先発中。今季だけで、これまでのJ2出場通算22試合を上回る28試合に出場しているのだ。

 今の東京Vでは、杉本の走力が一つの武器となっている。163cmのFWは前線から激しいプレスで相手を執拗に追い回し、そのスタミナは90分間落ちることがない。もちろん攻撃では、鋭いドリブル突破をみせたかと思えば、意表をつくパスやフェイントで相手DFを置き去りにする。得点こそ3得点に留まっているものの、得点に絡むシーンは多い。その献身ぶりは相手にとって脅威だ。

 杉本は東京Vの背番号7を「ヴェルディを象徴する番号」と言う。だからこそ、生半可な気持ちではなく、「自分が引っ張っていかないとという気持ちですし、ヴェルディらしさをピッチで出す、違いを出せる選手にならないといけないと毎試合心がけてやっている」と力を込める。

 この日の試合後、U-22日本代表候補に杉本が追加招集されたと発表があった。東京Vの冨樫剛一監督は「練習から積極的にやってくれているし、その積み重ねがゲームに出ている。彼自身のゴールは取れていないけれど、チームのために何をすべきかを理解してやってくれているので。そういうところが色々な人の目に止まって、評価につながり、今回も選ばれたのかな」と杉本の評価を語る。

 とはいえ、杉本本人は代表候補入りにも表情を緩めることはない。「代表候補に入るためにサッカーをしているわけではない。あくまでチーム(ヴェルディ)が勝つためにやっているし、チームを愛してるから。今回はたまたま代表につながっただけ」とベースは東京Vにあることを強調していた。

 杉本自身は「たまたま」と話すが、東京Vでみせている献身的なプレーが評価され、U-22代表候補合宿に招集されたことは明白だ。背番号7を背負い、ピッチを駆け回る163cmのFW。緑のユニフォームでの活躍はまだ見ぬ未来につながっている。

(取材・文 片岡涼)

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