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[adidas cup in Sendai]「最後まで『富岡は強かった』と言われるように」富岡はマジメに、走り続けて選手権へ

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[8.13 adidas CUP IN Sendai 駒大苫小牧高 2-3 富岡高 アディダスパーク]

 北海道・東北、関東、東海・北信越の強豪12校が強化を目指して参加した2015 adidas cup in Sendaiは13日、最終日の試合を行った。13年度の全国高校選手権出場校である富岡高(福島)は11年3月の東日本大震災、原発事故の影響によって避難先のサテライト校での授業などを余儀なくされてきたが、このほど、17年3月限りで休校となることが決まった。震災後の13年度全国高校選手権で1勝し、試合会場を富岡町のシンボルである「夜の森の桜」のピンク色に染めるなど、震災の後遺症に悩む地域に元気を与えてきた富岡サッカー部。残り2年という判断が下された中で迎えた夏、MF池田俊貴が「最後まで『富岡は強かった』と言われるように頑張りたい。結果を出さないといけない」と意気込むように、貪欲に強化を目指すチームはadidas cup in Sendaiに参加した。
 
 今年の富岡は各選手がマジメで最後まで走り続けることができるチームだ。adidas cup in Sendaiではその強みを磨いた。佐藤弘八監督は「1日2試合を4日間やった中で、苦しい時にどんなに頑張れるかとか、余計なプレーしてこねて取られるとかやらないようにしながら、攻守の切り替えを速くして、一人ひとりが守備意識持ってゲームをつくることを言っていた。まだ1点取られると下向いてしまうのでそこは改善しなければならない。でも、(連日)2試合やった中で常に走り続けることができるようになってきている。そういう面では一生懸命やることがいいことかなと思います」と語った。

 この日もマジメにやり続けることが最後白星に結びついた。序盤からハイプレスで相手を飲み込んだ富岡は前半7分にFW千葉達也のゴールで先制。その後、プレスがやや弱まったところを突かれて前半終了間際の連続失点によって逆転されたが、選手たちは集中力の切れそうな雨の中で地道に走って、守備することをやり続ける。「『これは』、というヤツはいねんだけど、みんな頑張るから。それをやるしかない。運動量増やすとか、切り替え速くするとかは練習から徹底してやるから。そういうのをまじめに、一生懸命アイツらはやる」と佐藤監督。目立った存在こそいないが、運動量多くして長い距離を走り、責任感をもってゴール前で戦い続けることができるのは彼らの武器だ。

 その武器をこの試合でも発揮した富岡は1点差のまま食らいつくと後半26分、右FKから千葉が同点ゴール。そして29分には高橋裕司が左サイドから鮮やかな右足シュートを決めて逆転した。池田が「マジメっすね。走りますね。みんな(能力は)平均的。だから、その分頑張っていますね」と説明する富岡が3-2で逆転勝利を飾った。

 飛び抜けた選手こそいないが、誰が出場してもレベルを落とさない戦いができることも強みだ。その中でボランチ陣の献身的なディフェンスや素材感のある大型DF根本拓実、高橋ら最終ラインの粘り強い守りで接戦に持ち込んで、「去年から出させてもらっているのでそういう経験を出したい。運動量を活かして裏を取っていきたい」という池田や「ヘディングは結構強いんですよ。収めようとするところはできつつある」と佐藤監督が評する千葉らを起点に、後方から追い越す動きやサイドで数的優位をつくってからの崩しで少ないチャンスをものにする。

 選手権予選で県内最大のライバル・尚志高に勝利して全国舞台に立つことができるか。佐藤監督は「能力低くてもやっていることはスゲエし、持っているものを引き出してやりたいなと思っている。だからデカい声出しながらやっている(微笑)。最後に尚志とやらせたいという思いがある。選手権勝ち上がっていくことで力着けていくじゃないですか。オレも楽しみですよ。どれくらいできるか」。

 池田が「強いチーム、普段やらないチーム県外のチームとやれて良かったです。夏の遠征で出た課題が改善できていない。でも、自分たちの良さであるマジメな部分は出せていると思うのでもっと出していきたいです」と語った「adidas cup in Sendai」は今後への糧。今秋、仙台の地で身に着けた力も発揮して再び「強い富岡」を示す。

(取材・文 吉田太郎)

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