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山口移籍で芽生えた責任感…J3で得点量産の岸田が古巣に完璧な恩返し

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[9.20 J3第29節 町田1-3山口 町田]

 これほどまでに完璧な恩返しはない。前半36分、MF小塚和季のロングパスで裏に抜けたレノファ山口FCのFW岸田和人は、ワンタッチでGKも外すと、左足で押し込み先制点を奪う。同点とされて迎えた後半23分には、鋭い突破からPKを獲得。「福満(隆貴)が蹴るのは決まっていた」ということでキッカーを譲ったが、同35分のMF平林輝良寛へのパスでアシストを記録。「この一戦にかける思いは、人一倍強かったと思っています」。エースは3得点すべてに絡み、大一番を勝利へと導いた。

 岸田は福岡大を卒業後、13年に町田に入団。大学4年生で出場した全日本大学選手権で大会ベストFWを獲得するなど、鳴り物入りでプロの舞台へと足を踏み入れた。しかし1年目はJFLで15試合に出場するも4得点と不本意な成績に終わる。翌年にはJFLに昇格したばかりの山口に武者修行の旅に出ることになった。

 しかし、この移籍が大きな飛躍へとつながった。14年シーズンはJFLで17得点を記録して得点王を獲得。チームをJ3昇格への導くと、今季はJリーグ記録の9試合連続ゴールを記録するなど、破竹の勢いを見せる。シーズン前に「1試合1ゴール」の目標を掲げた通り、27試合で26得点とほぼ宣言通りの活躍を続けている。

「成長したかは分からないですけど、チームのためにやらないといけないなという責任感が出てきたんだと思います。町田にいた時は(鈴木)孝司さんとか絶対的な選手がいたので、自分はサブに回るしかなかった。責任感が芽生えにくかった。でもそういう選手を追い抜かなきゃいけないと思った。そして移籍して、使ってもらうようになって、チームのために頑張んなきゃなと思うようになった。心が成長した部分がプレーに出ているんじゃないかな思います」

 この日の勝利でチームはJ2昇格に大きく前進した。9月29日に判明するJ2ライセンスが取得できれば、1年でJ3突破という快挙がさらに現実味を帯びることになる。

 ただ、J3で圧倒的な存在感を見せた25歳のストライカーの去就は、今オフの注目ポイントになることは間違いない。「J1でやりたい気持ちはあります」と岸田も素直な気持ちを話す。それでも「自分はまだそのレベルにないと思っている。呼ばれるようになってから考えたい」と冷静な分析もしている。

「正直まだ分からないですが、レノファに対しての気持ちはすごく強いので、一番はレノファでのプレーを考えることになると思います。まだ今はJ3優勝が決まって、J2昇格が決まったわけではないので、まずはしっかり勝ち取りに行きたいです」

 最後までチームプレーを強調した岸田。ステップアップを続けたその先に、夢は大きく広がっている。

(取材・文 児玉幸洋)


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