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リオ五輪世代の“隠し玉”川崎F4連勝の原動力、ルーキー中野が初ゴール「嬉しかった」

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[10.4 J1第2ステージ第13節 川崎F5-3G大阪 等々力]

 開始2分、MF中野嘉大の鮮やかなプレーから川崎フロンターレに先制点が生まれた。左サイドでボールを持った中野は、積極的な仕掛けからDF米倉恒貴をかわすと、エリア内に侵入。「相手が軽かった。無名だったので、僕が」と謙遜したルーキーだが、練習から求められているというスペースに送るクロスを入れると、FW大久保嘉人が蹴り込む先制点につなげる。

 そして後半10分、ドリブルでエリア内に侵入。相手を外してシュートコースを作ると、今度は直接右足で蹴り込む。「狙い通り、タイミングを外して打てました。できればすぐに打ちたかったんですけど、自分がワントラップしたことでGKが止まったので、それで上手く打つことが出来ました」。出場6戦目にして、Jリーグ初ゴール。「嬉しかったです。だから、(ゴールの後は)あまり覚えてないです」と初々しく振り返った。

 キャプテンも背番号22のプレーを素直に称えた。スタメンを見た時にサイドの攻防がポイントを握ると考えたMF中村憲剛は、最初から中野を使って、積極的に仕掛けさせようと考えていたのだという。「最初のプレーで中野をうまく使ってやろうと思っていた。そしたらアシストしたから、オォーって思って。彼はそこから乗ったね。そこからほぼ取られなかったもんね」。そのあとは初ゴールも記録。「まだ波があるなとは思うけど、すごい良かったと思うよ」とルーキーの活躍に目尻を下げた。

 中野は昨シーズン、筑波大で背番号10を背負って攻撃をけん引。大学サッカー界で力を付けて、満を持してプロの門を叩いた。ただ、大学の同期でもあるDF車屋紳太郎が開幕から出場機会を重ねるのをしり目に、中野はキャンプで負った故障の影響もあり、壁にぶつかっていた。「怪我が治ってからも状態が良くなかった。コンディションが上がらなかったのもあって、プロのレベルで自分を表現できなかった」。

 しかし自分を見つめ直すことで、ようやく夏以降、チーム内で存在感を出せるようになった。「少しずつ自分でできることを練習から消化できるようになって、持ち味を出せるようになった」。そして、8月22日の湘南戦に途中出場してプロデビュー。「チームの状態が悪かった湘南戦でデビュー出来て、インパクトを残すことができた。やっぱりそこが大きかったのかなと思います」。中野は以降の試合に出続けることになり、9月12日の甲府戦からはスタメン出場。夏場の不調から立ち直る原動力となった。

 この活躍が続けば、来年夏に開催されるリオデジャネイロ五輪代表への期待も高まってくる。本人も「もちろん出たい」と力強く話す。ただ、「今はそのレベルにない」と話すようにまだ“隠し玉”の状態。「フロンターレで出続ける。いつもレベルの高い中で練習をさせてもらっているので、絶対出続けるとつながると思う。毎日しっかり練習してレベルアップしたい。今まで全然縁はなかったですけど、そのチャンスはあると思うので、結果を残していきたい」としっかり前を向いた。

「嘉人さんだったり憲剛さんだったりが高いレベルで要求してくれる。それに応えなきゃいけなくて。最初はダメでしたけど、どんどんできるようになるのが自分でもわかる。そして試合に出続ける。チャンピンシップでも出れるように、しっかりアピールしていきたい」

 チームは中野が先発しだしてから4連勝。「僕の影響ではないですよ」と苦笑いを浮かべるも、ここ4試合で16得点という数字が、“中野効果”を物語っている。「チームの状態がいい中でやらせてもらっているのでアクセントになれている」と充実の表情を浮かべた22歳。得意のドリブルで突き進む先には明るい未来しか待っていない。

(取材・文 児玉幸洋)

●[J1]第2ステージ第13節2日目 スコア速報

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