beacon

[選手権予選注目校]跳ね返されてきた40回目の選手権切符、徳島商は今年こその意気込み

このエントリーをはてなブックマークに追加

 全国最多40回の全国高校選手権出場記録を持つのが秋田商高(秋田)。それに続くのが、39回の出場記録を持つ徳島商高(徳島)だ。徳島商は1957年からの30年間で26回全国大会に出場し、1970年からの5年間で4回ベスト8進出を果たしている伝統校。平成に入ってからは徳島市立高と県代表の座を分け合う形が続いたが、影響力は変わらず、記念すべき30回目の出場となった1996年度大会では準決勝進出した。だが、近年は徳島市立や鳴門高の陰に隠れ、39回目の出場となった2010年度大会を最後に全国の舞台から遠ざかっている。

 だが、松下洋平監督が「今年はチャンスの年。今年の3年生は入学当初から、『オマエらの学年で絶対に選手権に出なければいけない』と言い続けてきた」と話すように、40回目となる全国大会出場への意気込みは強い。今夏、ファジアーノ岡山の練習に参加したMF佐藤永望も鼻息が荒い一人。「小学校6年と中学1年の時にテレビで見た徳島商業の姿が格好良くて、僕もあのオレンジのユニフォームが着たかった」と入学を決意したものの、この2年は苦渋を味わってばかり。「最後にどうしても勝ちたいという思いが、他のチームよりも低かったのかなって思う。最後に出るのはメンタルの強さだと学んだ」と振り返る。プロ志望が強く、「チームを勝たすことができないと上に行けないよ。全国に立って、名刺代わりの活躍をしなさい」と指揮官からハッパをかけられてきた佐藤にとってはもどかしい日々だったのは間違いない。

 今年も新人戦ではベスト8で鳴門に0-6で完敗。夏のインターハイ予選も、またしてもベスト8で鳴門に屈するなど前途洋々ではない。「しても良いミスと、してはいけないミスを試合で使い分けないといけないのに、どのゾーンでも同じ感覚でプレーしてしまう。やってはいけない場面でのミスから、簡単に失点することが多かった。本当はやれる選手がいるはずなのに、今まで負け続けたことで、選手たちが自信を失っている」(松下監督)。

 ただ、苦い経験も選手たちの無駄ではなかった。夏に参加したフェスティバルでは結果こそ残すことができなかったものの、MF矢野博也、佐藤を起点としたボール回しからスピードに富んだFW鎌田冬弥を活かした攻撃は、松下監督が目指す攻撃サッカーの可能性を感じさせた。また、「2年生の子たちがしっかりしてきた」と監督が評するように2年生CB福本駿ら下級生が台頭したほか、これまで実力差があったスタメン組と控え組の実力差が埋まり、選手層の厚みを増してきたことも心強い点と言える。

「過去の先輩が築いてきた伝統を途切れさせないようにしたい」。そう佐藤が口にしたように、40回目の出場にかける想いは日に日に増している。彼らの戦いは10日に行われる阿南高専との1回戦から幕が開ける。「40」という数字への想いは実を結ぶか。

[写真]40回目の全国出場を狙う徳島商を牽引する佐藤

(取材・文 森田将義)
▼関連リンク
【特設】高校選手権2015
連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ2015

TOP