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「あの時間があったから今の僕がある」…横浜FM奈良輪の決意

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[10.11 天皇杯2回戦再開試合 横浜FM 3-1(延長) MIOびわこ 日産]

 ここまでの出場時間は限られている。しかし、横浜F・マリノスDF奈良輪雄太は与えられた時間の中で自らをアピールした。

 9月6日に豪雨で中止となった試合で、3月18日に行われたナビスコ杯グループリーグ第1節仙台戦以来、約半年ぶりに公式戦のピッチに立った奈良輪。11日に行われた再開試合までの間もリーグ戦での出場はなかったが、右SBの位置から激しい上下動を続けて正確なクロスで好機を演出した。

 すると延長前半5分、右サイドでボールを受けた奈良輪はFWアデミウソンへのピンポイントクロスで勝ち越しゴールをアシスト。「今週は中に人を集めて、外からクロスを上げる練習をずっとやっていました。イメージもあったので、それが点につながって良かったです」と充実の表情を浮かべると、「久し振りに試合に出られて楽しかった」と白い歯を見せた。

 この試合、対戦相手のMIOびわこ滋賀には、奈良輪が横浜FM加入前に所属していたSAGAWA SHIGA FCでチームメイトだったDF大杉誠人がピッチに立っていた――。

 SAGAWA SHIGAは3度のリーグ優勝を果たしたJFLの強豪クラブだったが、12年にJFLを退会すると翌年にトップチームの活動を停止。奈良輪はプレーの場を失いかけた。「あのときはショックなんてものではなかったですね。何も考えられないような感じでした」。当時を振り返った奈良輪だったが、「ただ、SAGAWAでの時間があったからこそ、今の僕があります」と3年間在籍したチームへの感謝を示している。

 元SAGAWAのチームメイトには、松本山雅に所属するGK村山智彦や金沢に所属するFW清原翔平らJリーグでプレーする選手もいるが、その数は決して多いとは言えない。だからこそ、奈良輪には強い思いがある。「今日対戦した大杉さんだったり、仕事をしながらでも本当にサッカーが好きで、SAGAWAが解散してからもサッカーを続けている人はたくさんいます。だから、Jでプレーしているムラ(村山)やキヨ(清原)や僕はしっかりサッカーをやっていくのは当然で、ここで満足したり、奢ってはいけない。それを今日、再認識しました」。

 今季は出場機会に恵まれていない。しかし、ここで腐ることはない。「SAGAWAで本当に良い仲間と巡り合えたし、SAGAWAがあったから今の僕があると本当に思っています。チーム自体は解散してしまいましたが、SAGAWAの名前を残すためにも僕はできるだけ上のカテゴリーで長くサッカーを続けていきたい。残り少ないシーズンですが、まずは試合に出ることを目標にやっていきます」。固い決意を胸にプロサッカー選手として、さらなる成長を誓う。

(取材・文 折戸岳彦)

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