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[選手権予選]部員約160人が応援でひとつに、全国8強の歴史持つ八千代松陰が千葉16強入り

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[10.11 全国高校選手権千葉県予選決勝T1回戦 白井高 0-1 八千代松陰高 八千代松陰高G]

 第94回全国高校サッカー選手権千葉県予選は11日、決勝トーナメント1回戦6試合を行い、関東大会予選、全国高校総体予選でいずれもベスト8の八千代松陰高と1次予選から勝ち上がってきた白井高との一戦はCB上島貴喜(3年)の決勝ゴールによって1-0で八千代松陰が勝利。八千代松陰は10月25日の2回戦で、若松高対船橋二和高戦(12日開催)の勝者と戦う。

 1978年の創立から3年目の1980年度予選で初の千葉制覇。同年の全国大会でもベスト8へ進出するなど全国選手権出場2回、全国総体出場3回の歴史を持つ伝統校、八千代松陰がまずは千葉16強入りだ。立ち上がりは相手コートで試合を進めるという狙いと裏腹に白井に押し込まれる展開。3分にMF柳田直樹(3年)の左CKがニアポストを叩いたが、その後はMF荒木優雅(3年)の右足シュートなどで攻める白井ペースとなった。15分には荒木の右クロスがファーサイドまで届き、MF先崎海人(2年)がヘディングシュート。GKの指先を抜けたボールはクロスバーをヒットした。

 人工芝グラウンドを所有する利を活用してパスワークを磨いてきた八千代松陰だが、この日は不得手な蹴り合いに。CB佐野秀斗(3年)が対角線の左足キックを蹴りこむなど前線にボールを入れるが、白井のMF戸張隆也(3年)やCB松島翔平(3年)、CB石山千尋(3年)に跳ね返されてまた攻めこまれた。それでもMF加藤尚瑛主将(3年)が「もっとコンパクトにして、自分たちのパス回しは練習してきているので、自分たちのパス回しでペースを握って行こうと指示が出たので、そこをしっかりやって、ペースを取り戻せたのは良かった」という八千代松陰は、丁寧にショートパスを繋いで徐々に攻撃のリズムを掴むと33分、左コーナー付近で粘ったMF清水秀斗(3年)がFKを獲得する。

 このFKを柳田が右足で蹴り込むと、ニアサイドへ飛び込んだ上島がヘディングシュート。タイミング良く合わせた一撃がゴールを破り、先制点となった。「自分はあんまり競り合い強くないので、ニアに飛び込んでそこで合わせようと思いました。まさか、入るとは思っていなかった。びっくりしました」という上島は冬の新人戦以来というゴール。小嶋卓哉監督が「練習させて、練習させて。個人の責任じゃないですか、PKも、FKも。サッカーっていうとみんなの責任にボカされてしまうけれど、他のスポーツは全部個人の責任でやっているんだぞ、と。キックもちゃんとしたキックができるまで、そこまでやらせないといけない」と徹底してトレーニングさせたというキックがゴールに結実し、指揮官も「出ましたね。良かったです」と微笑んでいた。

 1-0で前半を折り返した八千代松陰だったが、県立校の白井もなかなかの好チーム。ドリブルで局面を打開するMF丸聖音(2年)や左右両足からクロスやセットプレーのボールを放り込んでくる先崎がチャンスメークする。だが、八千代松蔭は左SB、CBで好守を見せるDF三輪拓実(3年)や加藤が空いたスペースを巧みに埋めながら、相手の攻撃を紙一重のところでかわしていく。白井は後半9分、右CKからファーサイドのMF押田達己(2年)が頭で合わせたが、これはGK美好健太(3年)が右へ跳んでビッグセーブ。17分にも後方からのFKを戸張が頭でコースを変えた一撃がゴールを襲ったが、八千代松陰は再び美好が好反応で阻止して見せる。

 その八千代松陰は交代出場の選手たち含めてそれぞれが持ち味を発揮。また加藤が「誰が出てきても、誰が出ていても、出てきた選手で(守備に重きを置いたり、攻撃の狙いを変えたり)プレーを変えられるようにという話をしている。(対応力を要するが)みんなで声掛け合って。個人じゃなくてみんなで、自分たちのいいところを最大限に活かしていかないと(強豪相手では)1対1では勝てない」というように、ポジション変更にも柔軟に対応してわずかな差をつくり出す八千代松陰は28分に怪我の影響でベンチスタートとなった主力CB茂呂駿佑(3年)を投入する。小嶋監督が「あの子は身長は高くないけれど、めちゃくちゃヘディングが強い。信頼するプレーヤー」という茂呂が加わり、守備がより安定した八千代松陰は中盤でテンポよくボールが繋がるようになり、終盤は決定機を連発。白井GK杉山尚斗(3年)の好セーブの前に追加点を奪うことはできなかったが、1-0で勝ち切った。

 八千代松陰は部員約160名の大所帯。私立の進学校だが、その中で3年生52人は夏の総体予選後も1人も引退することなく、サッカーを続けてきた。全国大会に出場していた頃ほどタレントが入学してきている訳ではなく、主力も半数以上が中体連出身だ。それでもチームには一体感がある。特に昨年の3年生たちは地域リーグのクラブの応援を全て調べてそれを自分たちの応援に活用。今では他校が真似するというほどのバリエーションある応援歌、チャントでピッチの選手たちを後押ししている。小嶋監督は「凄いですよ、良くやってくれた」と目を細める先輩たちから受け継いだ応援が、この日も会場に鳴り響き、選手たちに力を与えていた。加藤は「去年の先輩たちがつくってくれて、それを受け継いだんですけど、応援の力はすごく強くて。元々、自分たちは部員数が多くて、バラバラになりがちなんですけど、応援があることで一つにまとまっている」。この日もチームがひとつになって難しい試合をものにした。

 まずは次の2回戦突破に集中。そしてターゲットは準々決勝で対戦する可能性のある昨年度全国4強の流通経済大柏高だ。上島は「チームワークはいいんで、練習でこれからも厳しくやっていって、流経まで行って勝ちたいですね。これからは我慢の試合が多くなると思うので、中盤から最終ラインの組織力を高めていきたい」と誓った。仲間たちの応援と自分たちの武器を力に、ひとつでも多くの白星を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
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