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愛妻の一時退院の日にゴールを届けた大久保、寿人との“直接対決”制すも「勝ちたかった」

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[10.17 J1第2ステージ第14節 広島2-1川崎F Eスタ]

 “個人対決”では勝ったのかもしれない。ただ、川崎フロンターレは後半アディショナルタイムの失点によって、1-2で敗戦。「前半の決定機を外してしまったのが痛かった。サッカーとはああいうもの。前半に決めきれないことが悪かった」。J1通算得点記録の更新に注目が集まるFW佐藤寿人との直接対決で結果を残したFW大久保嘉人だが、試合後は何よりもチームの敗戦を悔やんだ。

 1点ビハインドの後半38分、焦りが増す中で、この男は冷静だった。ミドルレンジでボールを受けた大久保は、迷わず右足を振り抜く。「シュートを打てるチャンスがあれば、どこからでも狙っていきたいというプレースタイル。あまりミートはしなかったですけど、打てば何が起こるかわからないので」。ドライブ回転のかかったシュートは、GK林卓人が目測を誤ったこともあったが、ゴール中央部分へと吸い込まれていった。

 何としてもほしいゴールだった。大久保は11日に自身のインスタグラムで愛妻が流産、さらに手術後の経過が思わしくなく、奇胎後hcg存続症を患ったことを公表した。入院、抗がん剤治療が必要になったことで、愛妻を勇気づけるために、自身と息子3人で頭を丸刈りにしたことを写真を投稿して発表。大きな反響を呼んだ。そしてこの日は奇しくも一時退院の日。「早めに抗がん剤治療をしてもらって、帰れるかもしれない」。奮起した大久保はゴールというプレゼントを届けることに成功した。

 大久保はここ5試合で7ゴールとハイペースに得点を積み重ねている。FW中山雅史のJ1通算得点記録まであと2ゴールと、あと1ゴールで5試合足踏みを続けている佐藤より先に記録に到達する可能性も十分に現実味を帯びてきた。「ゴンさんの記録に並べるかわからないですけど、そこに行けたらうれしい。寿人さんと争っていければ、自分的にもうれしい」。ただやはりチームの勝利が優先。この日は勝てば第2ステージで広島に勝ち点2差に迫ることが出来た大事な一戦を落として、リーグタイトルの可能性がほぼ消滅。またも勝負弱さを露呈してしまった。

「記録はありますけど、それは時間の問題だと思います。気にしていません。それよりも優勝争いをしていたので、誰でもいいから、点を取って勝ちたかった。まだまだ自分たちの力が足りなかったということ。もっともっと足りないところを伸ばさないといけない」

 最後は「あと3試合。精一杯やりたい」と自らを奮い立たすように話した。

 (取材・文 児玉幸洋)
●[J1]第2ステージ第14節 スコア速報

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