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[選手権予選]環境面向上し、実力派の1年生たちも躍動、宇都宮短大附が初Vへあと3勝:栃木

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[10.17 全国高校選手権栃木県予選2回戦 宇都宮短大附高 2-1 國學院栃木高 日光市丸山公園サッカー場]

 17日、第94回全国高校サッカー選手権栃木県予選2回戦が行われ、全国大会初出場を目指す宇都宮短大附高が國學院栃木高に2-1で競り勝った。宇都宮短大附は24日の準々決勝で小山南高と戦う。

 主将の右SB大橋聖樹(3年)は「勘違いせずに、自分たちはまだ結果を残していないので、謙虚に受け止めて次の試合も必ず勝てるようにやっていきたい」と謙虚に次の試合へ向かうことを口にした一方で「手応えは間違いなくあります」と自信も口にした。80分間を通してではなかったものの、ポテンシャルを十分に示しての勝利。レベルの高い1年生の先発5人らを擁する“ダークホース”宇都宮短大附が全国まであと3勝とした。

 前半、宇短附は前田貴広監督が「ウチは基本的に繋ぐチーム。1回戦で相手に合わせてしまって繋ぐ修正ができなかったので、きょうは頭から恐れずにしっかり繋いで行こう、と。それを徹底していったことが上手く行った」と語ったように、ともに国体選抜であるMF大山玲とMF赤澤蓮の1年生ボランチコンビを中心に焦れずにボールを動かしていく。そして大きなサイドチェンジを交えたサイドへの配球によって相手の守りを広げて間を取る宇短附は前半13分、右オープンスペースを突いたMF栗原力翔(1年)がサポートに入った大山へ落とす。これを大山が右足ダイレクトでのクロスを入れると、ファーサイドの182cmFW花岡幸成(2年)が頭でゴールを破って先制点を奪った。

 宇短附はさらに24分にも赤澤の左CKをファーサイドの180cmFW岡本航典(3年)がDFの頭上からヘディングシュート。ポストに当たった跳ね返りを自ら頭でゴールへ沈めて2-0と突き放した。國學院栃木も突破力のあるレフティー、MF関根涯(3年)や10番FW高橋優真(3年)を起点とした攻撃で反撃。PAまで攻め返してシュートシーンをつくり出したが、宇短附が2点リードしたまま前半を折り返した。

 だが後半、形勢は逆転する。左サイドに突破力のあるMF斉藤寛太(2年)を投入した國學院栃木が左サイドからのチャンスメークで反撃。7分に斉藤がドリブルシュートを打ち込むと、10分には左サイドを破った斉藤からのラストパスを同じく交代出場のFW小仁所毅人(3年)が左足で合わせ、23分にも左の斉藤を起点とした攻撃からファーサイドのMF齋藤瑠慰(3年)が折り返し、最後は高橋が決定的な左足シュートを打ち込む。宇短附は10番を背負う左SB柳澤周作(1年)との連係から赤澤が左足シュートを打ち込んだり、大山が右足ミドルを放つシーンもあったが、後半はボランチがなかなかボールを受けられず、また運動量でも國學院栃木に上回られて苦戦。相手の連続攻撃をよく凌いでいたものの36分、相手の右SB吉田剛(3年)の突破を止めることができずにPKを献上してしまう。國學院栃木はこのPKを吉田が自ら右足で決めて1点差とした。

 ついに奪った1点によって士気上がる國學院栃木はアディショナルタイム突入後の41分にも斉藤がDF2人の間を割って入るなど得点機をつくりだした。だが、後半は我慢強く戦い抜いた宇短附が2-1で勝利。準々決勝へ駒を進めた。

 2000年創部の宇都宮短大附は13年度の選手権県予選で決勝へ進出し、昨年6月に人工芝グラウンドが完成。元々進学校でサッカーの環境面も向上した同校には勉強、サッカーの両立を目指す選手たちが多数入学してきている。特に今年は栃木ジュニアユースの主力として全国大会を経験している柳澤、大山、赤澤、MF荒井克己をはじめ、実力派の1年生たちが多数加入し、この日も「1年生が多く出て、他に出れない3年生や2年生がいるので、1年の中で『その分まで俺たちがやろう』と言ってやりました。自信がないと3年生の中では戦えないので弱気にならず、自分のプレーをやろうと思ってやっています」という大山をはじめとした1年生たちがチームの主力として堂々のプレーを見せた。そして柳澤が「人間性もかなりいいし、ボクたちがスタメンになっていることに何も言わずに応援してくれたりしますし、プレーの面でも声かけて引っ張ってくれたりガッツがあったり、負けず嫌いなところが伝わってくる」という3年生たちと噛み合っていい形のサッカーを展開している。

 さすがにこれまではフィジカル面やスピード面の難があり、赤澤が「インターハイ(予選準々決勝)の佐日(佐野日大)戦なんですけどフィジカルがかなり強くて、自分たちの力じゃまだ全然勝てないと」感じた試合もあった。また上級生に対する遠慮もあったが「きょうの試合も試合の入りから全員で声をかかっていたし、まとまってきた」(赤澤)。“3強”矢板中央、佐野日大高、そして真岡高との差は少しずつ詰めることができているという実感がある。前田監督も「(特に3強相手では)防戦一方だったり、普通にやられちゃっていた。(だが)前は『これ、ちょっとやれたね』というのが今は『大分やれたね』というように、子どもたちも実感しているところがある。名前負けはもうないですね」とチームの成長について説明した。

 まずは今年3度敗れている県準々決勝の壁を破ることに集中。大橋は「目標は自分たちが全国初出場決めて、全国でも勝てるチームを目指しています。感謝しきれないくらいの恩が学校にもありますし、そのためにも全国大会に行かなければいけない」。いきなり壁をぶち破ることは簡単ではない。それは十分に理解しているが、謙虚な挑戦者は1年生から3年生までが団結して戦い、今年、全国を驚かすつもりでいる。

[写真]前半13分、宇都宮短大附はFW花岡が先制ヘッド

(取材・文 吉田太郎)
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