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[選手権予選]風雨と光星の勢いに苦しむも王者揺るがず!青森19連覇の青森山田が全国出場一番乗り!

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[10.24 全国高校選手権青森県予選決勝 青森山田高 1-0 八戸学院光星高 青森県総合運動公園陸上競技場]

 24日、第94回全国高校サッカー選手権青森県予選決勝が青森県総合運動公園陸上競技場で行われ、大会19連覇を狙う青森山田高と19年ぶりの優勝を目指す八戸学院光星高が対戦。FW鳴海彰人(2年)の決勝ゴールによって青森山田が1-0で勝ち、19年連続21回目の全国大会出場を決めた。青森山田は今冬の全国大会出場一番乗り。全国大会の出場48校は11月15日に出そろう予定となっている。

 過去10年の決勝で青森山田が対戦相手に最も接近されたのが07年度決勝と11年度決勝の2-0。それ以外は昨年度決勝の6-0など全て5点差以上をつけて圧倒的な優勝を果たしていた。だが、この日は試合前から強さを増した風雨に加えて八戸学院光星が力をつけてきていることもあって黒田剛監督も「拮抗するゲームになるんじゃないか」と覚悟していたという。その前半、青森山田はベガルタ仙台内定のCB常田克人(3年)が「ピッチも濡れていたこともあって相手の勢いを受けてしまったのもあった」と反省したように、相手に思い切りの良いサッカーを許してしまう。

 八戸学院光星はMF和山吏玖(3年)の配球からスペースへの動きでボールを引き出すFW福原幸太(3年)とFW及川隆史(3年)の2トップ、そして左サイドで危険な存在になっていたFW三浦匡人(3年)がクロスを上げきったほか、今大会3戦6発の福原や左SB坂下公輝(3年)がミドルシュートを狙って行く。一方の青森山田はサイドから打開を図るが、この日は相手の守りが分厚いところへの配球が増えてしまい、なかなか効果的な攻撃をすることができない。湘南ベルマーレ内定のMF神谷優太(3年)がDF3人のマークを受けながらも強引に突破を図るなど前への姿勢は見せるが、記録における前半のシュートはサインプレーのFKからMF高橋壱晟(2年)が放ったシュートと右CKをCB岡西享弥(3年)が合わせたシーンの2本だけ。前半終了間際にはスルーパスから八戸学院光星の1年生FW吉田幸生に決定的なシュートを打たれてしまう。このピンチはU-18日本代表GK廣末陸(2年)のファインセーブで阻止したものの、冷や汗をかかされた。

 CB堤賢太主将(3年)を中心とした守備を含めて八戸学院光星の健闘が光った前半だったが、それでも高円宮杯プレミアリーグEASTで首位に立っている青森山田の方が自力は上。後半2分には、前半終了間際から左サイドに投入されていたMF田中優勢(3年)が中へボールを運んで横パス。これを受けた鳴海がやや強引に右前方へ持ち出してから右足を振りぬく。黒田監督が「思い切って自分でいけ。スリッピーだし、入るよと言っていた。前半は多少、高橋とか神谷を意識してボールを落とすことを意識していたのがアイツの判断で前を向いてシュートを打てた」と讃えた鳴海の一撃がゴールを破って青森山田が先制した。

 この後、左サイドの田中がポイントになって、インナーラップ、オーバーラップを繰り返す左SB北城俊幸主将(3年)が縦に鋭く切れこむシーンも増えた。先制したことで落ち着いて試合を進めた青森山田だが、逆にゴール前で手数をかけ過ぎて奪われるなどリズムが上がらない。八戸学院光星はやや急ぎすぎた攻撃を常田に跳ね返されるなど相手の懐に入っていけなかったが、いい形でボールを奪ってからの攻撃でチャンスをつくる。19分には右SB青島雄大(3年)が深い位置までえぐってクロス。24分には左サイドを崩して決定機を迎え、最後はゴール前にこぼれたボールに交代出場のFW中野捷吾(2年)が飛び込む。それでも青森山田はGK廣末が素早い反応でボールを収めて得点を許さない。この後も八戸学院光星が必死の反撃を続けたが、経験豊富な青森山田は相手の勢いに飲まれることなく1-0で勝利。「最後1点だけは絶対やるなというコンセプトだけは成功したところ」と黒田監督が評したように、苦しみながらも挑戦者をしっかりと仕留めた青森山田が19連覇を達成した。

 プレミアリーグではJクラブユース、高体連の強豪を押しのけて首位に立ち、初優勝へ前進している青森山田。そのチームにとっても選手権の厳しさを味合うゲームだった。北城は「プレミアリーグと全く違って、選手権にぶつけてくる3年間の思いもあって、本当にゴール前で守備していても相手の気迫を感じました。周りから見たら技術の差とかあるように見えるかもしれないですけど、自分自身はそう思っていなくて『自分たちは力はない』『光星と五分なんだ』ともっと早く気づいて戦っていってやらければいけなかった。まだまだ『もう、走れない』というくらい走った選手もいないですし、プレミアリーグではあれだけ走れていてもこれだけ走れないのは、これが選手権なんだなと痛感しました」と反省の弁を連発していた。

 それでも黒田監督が「一人ひとりがみんなスイッチを入れるということと、スイッチを入れたらブレーカーが落ちるから、ブレーカーが落ちない作業していく。そこでオレが(チームを)前に進めていく。スイッチを入れ続けることは凄く大変なことなので、だから『人にブレーカー落とさせないような作業をさせるな』と良く言うんだけど、ただこれはやらないといけないこと。それが(一人ひとり)できているのが今年のチーム」とメンタル面を讃え、「(プレミアリーグでは)取られても今までにないような神がかった逆転劇があるので。そういう意味では神様も味方してくれている年なのかなと。もうひとつ取ろうという意欲が今年のチームは凄く見える。原山のロングスローだったり、(いろいろな)武器もあることも今年の強味かなと思う」と評するチームはU-18年代トップレベルの試合で勝ちきるための強味、勝負強さも兼備。プレミアリーグの覇者として選手権との2冠に挑戦する可能性が十分にある。

 北城は「本当に一人ひとりGKも代表レベルで(原山)海里もロングスローがあったり、CBも高さがあったり、神谷も一人で行けたり、個性があるので戦う闘志だったり、思いをベースにそういう選手の個性を活かすサッカーができれば日本一も夢ではないと思うので、これから練習で磨いていきたいと思います」。楽な戦いで予選を終えるのではなく、ここで厳しい試合を経験できたことは間違いなくプラス。より勝つための術を磨き、甘さ、緩みを排除して青森山田は冬を迎える。

(取材・文 吉田太郎)
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