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[MOM346]早稲田大FW山内寛史(3年)_約1か月ぶり弾が決勝点、背番号10が存在意義示す一撃

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.24 関東大学1部リーグ第19節 早稲田大2-1慶應義塾大 西が丘]

 存在意義を示すに十分な一撃だった。早稲田大慶應義塾大に2-1で勝利。一度は同点に追いつかれたものの、後半35分にFW山内寛史(3年=國學院久我山高)が決めたゴールが決勝点となり、勝ち点3を重ねると、首位の座を奪取した。

 1-1で迎えた後半35分、右サイドをドリブルで上がったFW宮本拓弥(4年=流通経済大柏高)が「相手(DF)の高さがあったので。浮かさずにゴロで低いパスを出せば」との狙いでグラウンダー気味のボールを折り返す。

 宮本がパスした瞬間。ゴール正面へ走り込んだ山内は「スルー!」と声を張った。ニアサイドでこの声に反応したMF小林大地(3年=流通経済大柏高)は触るふりを見せると冷静にスルー。「思い切り、(足を)振る準備はしていたので決められるかなとは思いました」。その言葉通り、山内の右足から強く放たれたシュートはネットを揺らした。仕事を果たしたFWは、一目散にスタンドの仲間に元へ駆け寄り、勝ち越し弾を喜んだ。

 早稲田大で10番を背負う山内だが、直近4試合は無得点。2得点を挙げた9月19日の第14節・中央大戦(2-0)を最後に約1か月、ゴールから遠のいていた。待望の5戦ぶりの得点に山内は「最後の最後でチャンスは来ると自分に言い聞かせていた。試合を決めるゴールを決められたのは嬉しい」と安堵の表情。

「点を取ってくれという言葉に応えるのが自分の仕事。それを今日は証明できた。今までのマイナスを取り返せたかな」と微笑んだ。

 得点がない約1か月。山内の心境には変化があったという。これまでは自分の好きな“きれいな形”にこだわってプレーしてきた。しかし試合を重ね、マークが厳しくなる毎にゴールからは遠ざかった。「シュートさえ打つのが厳しい状況」に置かれると簡単に得点を奪えなくなった。

 そんななか古賀聡監督やチームスタッフ、OBからの言葉を受け、「泥臭く中へ入って決めたり、相手よりぎりぎり一個前でボールに触って決めたり、色々な得点パターンを持っていないと。つぶされたり、マークが苦しくなる中で点を取れないようでは、これから先に一段階上にはいけない」と思い至った。

「自分が好きだったり得意なプレーができなくても、ゴール前に入っていって。何度も中へ入っていって、一回でもチャンスがあれば。それを決めてチームが勝てば、それでいいい」

 得意なプレーにこだわるよりも、様々なパターンで点を量産できるFWになるべく、自ら意識改革した。そして、新たな気持ちで臨んだこの日の試合。決勝点という結果を残した。

 殊勲の一撃を決めた山内は「自分自身が一番点を取りたかった。FWで10番をつけさせてもらっているのに結果がついてこなくて、このチームでの自分の存在意義は保てないと思っていた」と胸中を明かし、安堵した。

「今日の試合に関してはある程度、自分の存在意義を証明できた」と手応えを語った背番号10。しかし言葉を続けると「でも優勝することが本当の目標なので。自分の得点で大事な試合に勝って、優勝できるようなプレーをしていかないと。まだまだです」と貪欲に語った。

[写真]桐蔭横浜大戦時のもの

(取材・文 片岡涼)

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