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[MOM1535]香芝MF竹末蒼大(2年)_一度はスパイク置いたドリブラーが、チームの苦境救う先制弾

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.25 全国高校選手権奈良県予選2回戦 登美ヶ丘高 0-3 香芝高 香芝高G]

 打てども、打てどもシュートが入らない。香芝高は前半10本以上のシュートを放ったものの、GKの正面ばかり。前半残り10分を切ってから、「アイツのドリブルで局面を打開して、違う形を作りたかった」(米原勝監督)と、ピッチに送り込まれたものがMF竹末蒼大だった。本来はスタメンを張る選手だが、前日に体調不良で学校を休んだため、大事を取って、この日はベンチスタート。「迷惑をかけてしまったので、絶対に点を獲らないと思っていた」という彼は指揮官から、「流れを変えてこい」とシンプルな指令を受け通り、持ち味であるスピードを活かしたドリブルでサイドを何度も仕掛けて、攻撃のリズムを変えた。

 後半21分にはMF佐藤晴のパスをゴール前で受けると、「2人くらいなら、行けると思った」とドリブルでかわして打ったシュートがゴールネットを揺らし、先制点に。「初戦なので楽に点が獲れると思っていたけど、なかなかゴールが奪えず焦っていた。でも、1点を獲ってからは流れが変わった」と口にしたように、香芝は彼の得点によって悪い流れを打開し、以降2得点を積み重ねた。

「香芝は蹴ったり、サイドからクロスを入れる選手が多いけど、自分は個人技でサイドをえぐったり、ゴール前まで出るのが持ち味。1年生の頃から、『良さを活かしてプレーをしろ』と言われてきた」と口にするように、個の力を全面に押し出したスタイルは香芝の中では異色で、ひと際目を惹く。だが、小学校、中学校時代は「メンタルが弱かったので、練習は出来ているに、試合ではビビッてしまって、持ち味が出せなかった。小中ともにそれが原因で、最後の大会に出られなかった」。サッカーは中学までで辞めるつもりでいたため、中学3年生の9月以降は受験勉強に専念し、プレーから離れていたが、香芝高合格が決まった中学卒業間近のタイミングで彼の運命が変わる。

 中学時代のチームメイトであるDF玉木仁に偶然、街で出くわし、誘いを受けたため、入学前の春休みに練習に参加。半年近くのブランクがあったものの、初日に「人とは違う抜群のドリブルスピードを持っていた」と米原監督の目に留まり、翌日からはAチームへと引き上げられた。「久しぶりにサッカーをしたら、やっぱり面白かったんです」。そう振り返ると同時に、入学当初は高校サッカーとの違いに戸惑いもしたが、ドリブルの重心を低くし当りに負けなくするなど工夫を凝らしたことで今ではチームに欠かせない存在となっている。この日、自らの活躍によって、勝利を引き寄せたように、チームが3度目の選手権出場を果たせるかは彼の突破力次第と言っても過言ではない。

(取材・文 森田将義)
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