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[選手権予選]前半30分11秒から2日ぶりに再開された秋田決勝、「いい表情」で迎えて攻め勝った秋田商が41回目の全国へ!

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[10.26 全国高校選手権秋田県予選決勝 秋田商高 1-0 西目高 八橋陸上競技場]

 第94回全国高校サッカー選手権秋田県予選は26日、当初行われた24日に雷雨中断、延期となった決勝戦を中断した前半30分11秒から再開。0-0から2日ぶりに再開した試合は後半24分にFW菅原晟也(3年)が決勝ゴールを決めて秋田商高が1-0で西目高に勝ち、2年ぶり41回目の全国大会出場を決めた。

 ともに何としても手にしたい全国切符を懸けた決勝。雷雨で中断された2日前に比べてコンディションがよくなったことは間違いないが、それでも仕切り直しの難しさがあったはずだ。だが、秋田商の小林克監督は「凄い不思議なんですけど、きょうここに来て、ロッカールームにいる中の表情が今までと全然違ったんですよ。なんでそうなったか分からないですけど。硬さもなく、『これからやるぞ』というようなオーラが湧き出ていたような感じだった。自然とそういう雰囲気になっていた。きょうはいい入りができるんじゃないかと」感じたという。一方の西目もCB山崎嘉樹主将(3年)が「硬くなりすぎず、前の日までリラックスしてミーティングからまた気持ち高めていって、西目も結構いい状態だった」と振り返る。

 互いにいい精神状態で迎えたリスタートの時。秋田商陣内深い位置、西目のスローインから再開されると、西目はいきなりCB高橋紘平(3年)がロングスローを投げ込む。そして押し込んだまま立て続けにFW加川綜太郎(2年)、FW長谷川光(3年)が連続シュート。残り時間10分の“短期決戦”となった前半をフルスロットルで戦って先制点をもぎ取ろうとする。対する秋田商もすぐに押し返して左クロスなどからゴールへ迫る。ハイテンションな10分間の攻防は互いに譲らず0-0のまま前半を終えた。

 ハーフタイム、秋田商の小林監督は「(選手たちは)またいい表情だった。スイッチを自分らで入れられたんですね。自分たちで切り替えられた。下手に何かを言う必要のない表情だった」と賞賛。指揮官も選手たちに多くを求めるのではなく、テンポ良くボールを繋ぐことなど最小限のアドバイスだけ送ってピッチに戻した。すると、主将のMF{山本隼(3年)が「みんなあまり緊張していなかった。アップでもいつもよりも声出ていた。全て出しきろうとしていた」と振り返り、FW青山和樹(3年)は「みんな全国行くと考えているのは当たり前なんですけど、西目も行きたいので難しくなってくる。それでも、自分たちが絶対に行く、50分でも自分たちが勝つという気持ちで過ごしてきた。いい準備ができた」と語った秋田商が後半、自力の差を示して猛プッシュした。

 開始直後にサイドチェンジから好トラップした菅原晟が決定機を迎えると、4分には左サイドから単騎仕掛けた高橋がPAまで運んで右足シュート。その後もセットプレー、クロスからゴールを狙い続ける。西目は高橋がゴール前での空中戦で奮闘するなど踏ん張るが、秋田商は23分にも西目DFのバックパスをインターセプトした菅原晟がGKをかわす。だがコントロールがわずかに大きくなってしまったところを必死に戻った山崎が奪い返してスーパークリア。秋田商スタンドにため息が漏れた。

 それでも直後に秋田商がスコアを動かした。24分、青山が動き出しよく右中間でCBとSBの間を突いてFW加賀谷昴貴(3年)からのパスを受ける。そして「足下に入って、それにDFが食いついてくるとミーティングでも言っていて、(自分が)裏に回って、あとはタイミング合わせて上げるだけだった」とすかさずGKとDFラインとの間にラストパスを入れるとファーサイドで反応した菅原晟が右足でゴールへねじ込んだ。待望のゴールを決め、「自分のゴールが決勝点になって嬉しい。気持ちよかったです」という菅原晟中心に大興奮の秋田商イレブン。だが、西目も30分にビッグチャンスをつくりだす。右サイドを突いたFW林拓弥(3年)のクロスから中央へフリーで走りこんだ加川がヘディングシュート。だが、決定的な一撃はGK堀田尚樹(3年)の正面を突いてしまい、同点に追いつくことができない。

 秋田商は終盤も攻め続けて西目に反撃の機会を与えない。小林監督が「西目に攻撃力があるので、攻撃させないためにウチがボールを支配して相手を押し込めれば、同時に守備も成立するんじゃないかと思うところがあった。これまではできていそうで、できていなかった。でも、きょうは本当に後ろも集中していたし、前も押し込めていたので良い展開だったと思います。もう一回やれと行ってもできないと思います」と頷く内容。攻めて主導権を握り続け、CB佐藤嘉幸(3年)を中心とした守備陣も相手に反撃機会を与えなかった秋田商が、経験したことのないような80分間の戦いを制した。

 試合後、会場の外では西目の選手たちが秋田商の選手たちに歩み寄り、言葉をかけていた。ライバルも期待するのは現在秋田県勢が10連敗中の全国初戦で勝利することだ。菅原晟が「全国意識したトレーニングというか、『そのパスは秋田では通用するけど全国ではどうなんだ』とか、『チームのシュート練習では入ったけれど全国では止められる』とか、チームで意識することで全国との差を埋めてきた」と説明したように秋田商は全国で通用するかどうかを基準にチームを成長させてきた。山本は「これまで惜しい年もあったんですけど、今年は惜しいで終わるのではなく、勝ち切って少しでも上に上がって行きたい」と宣言。まだまだ球際での厳しさなど課題はあるが、山本、青山を中心に全国でも戦える陣容がある。最多41回目の出場を決めた伝統校が今冬、1勝だけでは終わらない活躍を全国で見せる。

(取材・文 吉田太郎)
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