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[選手権予選]厳しい前評判を「ひっくり返そうぜ!」昨年度優勝の第一学院、境の猛反撃に苦しむも8強入り:茨城

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[10.28 全国高校選手権茨城県予選3回戦 第一学院高 2-1 境高 ひたちなか市総合運動公園スポーツ広場]

 第94回全国高校サッカー選手権茨城県予選3回戦が28日に行われ、昨年度優勝校の第一学院高は境高に2-1で勝利。水戸啓明高と戦う準々決勝進出を決めた。

「リーグ戦勝てていないので今年弱いと思われていると思う。それを『ひっくり返そう』と言っています。誰もウチが来るとは思っていない。それを『ビックリさせようぜ』、と」。選手権予選開幕前に江副良治監督はそう選手たちに言葉をかけたという。通信制・単位制高校の第一学院は昨年度の選手権予選で初優勝を果たしたが、主力がほぼ全員入れ替わった今年は総体予選こそベスト4へ進出したものの、県1部リーグでは第15節までわずか2勝と低迷。それだけに周囲の前評価は上がっていないが、「白ツインズ」の兄で主将のCB白将大(3年)が「周りの人を驚かせたいです」と語るなど、発奮した選手たちは評価をひっくり返すつもりで選手権に臨んでいる。

 その初戦で境と対戦した第一学院はの序盤に持ち味のスピードを活かした攻撃とセットプレーの強さを発揮してリードを奪う。9分、MF政氏健瑠(3年)の右CKからMF杉野和矢(3年)がゴールマウス直撃のヘディングシュート。跳ね返りを繋いで政氏が右サイドから左足クロスを入れると、ファーサイドのCB小島一希(3年)が頭で先制ゴールをねじ込んだ。

 けが人も出て不振だった夏、第一学院は江副監督が「チームのやり方を統一したところがある。ボールの運び方を徹底した。より速さを出していこうと。それで良さが出てきたところがある」というように攻撃陣のスピードを活かした配球、攻撃へシフト。この日もスペースをつくり出してからのオープン攻撃によって、政氏、MF松田拓巳(3年)の両翼やFW権田陸、FW高土憂希の2年生2トップ、左SB高沢成(3年)がスピードに乗った状態で相手DFラインに攻撃を仕掛けてチャンスをつくり出した。

 21分には右サイドを突破したMF笠原伶(3年)の折り返しを受けた政氏が左足シュート。これは境GK金久保正也(3年)の好セーブに阻まれたが、直後の左CKをファーサイドの小島が頭で折り返すと、松田が左足を振りぬく。最後は混戦から権田が左足でゴールへ押し込んで2-0とした。

 前半を0-2で終えた境だったが、推進力あるドリブルを見せるFW藤平翔也(2年)が前線で存在感。加えて、後半は相手の逆を取るドリブルで第一学院DFを苦しめていたレフティー、FW安達郁哉(3年)やMF為我井雅揮(2年)が攻撃にタメをつくり、3列目から駆け上がってくる10番MF佐藤司宜(3年)がシュートシーンに絡む。16分、右サイドの安達が入れたラストパスに藤平が飛び込み、決定的な左足シュート。さらに17分にはこぼれ球に反応した佐藤の右足シュートが右ポストをかすめる。

 第一学院は白将大のインターセプトからカウンターを仕掛けて高辻が左足シュートを放つなど追加点のチャンスもつくったが、後半は境の勢いに飲まれて落ち着きを失ってしまう。小島は「勝っているのに落ち着いていない。チーム全体が攻撃するのか、守備するのかはっきりしていなくて、隙ができた」。クリアが中途半端になり、セカンドボールを拾われてまた攻め込まれる苦しい展開。一方の境もチャンスこそつくるものの、1点を奪い取ることができない。26分に佐藤の右クロスに藤平が合わせたヘディングシュートもゴール右外へ外れてしまう。

 それでも34分、境は交代出場のMF木村光希(2年)がゴールライン際から右クロスを放り込むと、クリアボールを佐藤が右足で合わせる。これが混戦のゴール前を抜けて右隅へ決まり1点差。勢いを増した境は直後の35分、左サイドを突破した藤平の意表を突くループシュートがクロスバーを叩く。さらに右SB島田昂太(2年)のロングスローなどで必死の反撃を見せる境は39分に木村の右クロスが相手のミスを誘ったが、第一学院は右SB山本大地(3年)が間一髪クリア。境は終了間際にも木村が右サイドを破ったが、クロスはわずかに合わず。第一学院は苦しい終盤だったが、杉野や小島の高さ、白将大、GK白将士(3年)の好守などで1点リードを守り切って準々決勝への切符を掴んだ。

 崩されていないようなシーンでもバタバタしてしまうなど経験不足が出た第一学院だが、それでも押し込まれた終盤は守備に集中。10番FW上原智哉(3年)を負傷で欠く中での戦いだったが、何とか乗り切った。白将大は「勝ったことで自信になったし、次からは落ち着いてやれると思います。結果残したいんで。みんな地方から来て親とか喜ばせたいし、地域の皆さんを喜ばせたい」。結果が出ずにバラバラになりかけた時期も全員で乗り越えてきた。昨年は同じく苦しんだ3回戦を1点差で制してから勢いづいて初優勝。第一学院が今年も選手権予選で周囲を驚かせる。

[写真]前半9分、第一学院はCB小島が先制ヘッド

(取材・文 吉田太郎)
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