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パトリックを封じた鹿島DF昌子「ロッカールームから流れができていた」

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[10.31 ナビスコ杯決勝 鹿島3-0G大阪 埼玉]

 鹿島アントラーズのDF昌子源にとって、気持ちの入る一戦だった。対戦相手のガンバ大阪は、ジュニアユース時代に所属していた古巣だ。そして、当時のチームメイトであるFW宇佐美貴史やMF大森晃太郎と、日本一を懸けて戦うことになったのだ。

 だが、さらに昌子の気持ちを高めていた要因がある。鹿島は14日に行われた天皇杯3回戦で、水戸にPK戦の末に敗れて敗退が決まっていた。天皇杯は決勝まで勝ち進み、J1第13節の神戸戦で左第2中足骨骨折の重傷を負ったMF土居聖真の復帰戦にする予定だったが、それが叶わなくなったのだ。

「天皇杯を僕たちがなくしてしまった。復帰の日数でいえば、天皇杯決勝は間に合う期間だったので、僕たちが(彼の復帰する)可能性を失くしてしまったのは、すごく申し訳ないなと思って、そういう気持ちを込めて、今日は彼のために戦おうと思っていました」

 攻撃力に秀でたG大阪を相手に、鹿島は90分を通してほとんど優勢に試合を進めた。試合後、宇佐美は「前線にボールが収まらなかった」と敗因を挙げていたが、基準点となるFWパトリックを大いに苦しめたのが、昌子だった。

「僕が左サイドに入ったことで、パトリック選手と結構やらないといけないなと覚悟していましたし、ここでやられたらチーム自体がやられるなと思っていました」

 過去にもリーグ戦などでパトリックとマッチアップすることのあった昌子は、時間が経過するごとに苛立ちを募らせるブラジル人FWを見ながら、勝利が近づいていると感じていたようだ。

「FWの選手はいろいろな特徴がありますが、イラついたら本来のプレーができない。特に外国籍選手はそうなのですが、パトリック選手は性格的にも穏やかで怒っているイメージがありませんでした。これまで何度かやったけど、怒らないので駆け引きは難しいかなと思ったのですが、今日の試合では怒りを感じていたので。少しずつ僕と(ファン・)ソッコのペースに誘い込めたのは一つ良かったかなと思います」

 終わってみれば3-0の完勝。MVPには中盤で闘志をむき出しに戦った36歳のMF小笠原満男が選出された。石井正忠監督がチームに持ち込んだものを問われた昌子は、このベテランの姿勢に、指揮官の要求が詰まっていると説明した。

「石井監督になって初日から言われ続けているのは、『最低限、戦う姿勢を見せてほしい』ということです。『どんな結果であれ、戦う姿勢、一生懸命ファイトする姿勢を見せてほしい』と常に言われている。そういう面で、試合でのアグレッシブさ、今日の満男さんを見てもらったらわかると思いますけど、球際でも果敢に攻める。MVPに値するプレーだったと思いますし、ああいう先輩の背中を見て僕たちも学んでいるところを示さないといけない」

 その後に「まだまだ、現役を続けてほしいなと思います」と言って報道陣を笑わせた昌子は、チームに在籍する79年組の存在の大きさを強調する。

「ソガさん(GK曽ヶ端準)はもちろんそうですし、モトさん(本山雅志)も試合に出たいのはもちろん分かっているんですけど、今日もずっとベンチから声が聞こえていました。常にムードメーカーになってくれるというか、特に僕たち後輩に、経験を伝えてくれているのが分かるし、本当に79年組は偉大だと思います」

 国内17冠目を獲得した試合後、土居の背番号とネーム入りのユニフォームを掲げた昌子は、チームにある一体感を強調した。

「石井(正忠)さんが(優勝の)流れを持ってきた。鹿島の強さを持ってきてくれたと思います。僕たちも監督を信じているし、監督も僕たちを信じていると伝わってきます。今日も試合前に(西)大伍くんがロッカールームで『石井さんを泣かせようぜ』という言葉を掛けて、なんとなくみんなそういうイメージができていました。試合に良い入りができる流れもロッカーからできていたんじゃないかなと思います」

(取材・文 河合拓)

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