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[MOM1550]佐賀商MF松尾明篤(3年)_大会開幕当日に選手登録された復活のエース

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.31 全国高校選手権佐賀県予選準決勝 佐賀商高 2-1 塩田工高 佐賀県陸上競技場]

「このチームのキーマン」と佐賀商高・相良利朗監督が言い切る男が左サイドハーフに位置するMF松尾明篤(3年)だ。チームのために勇猛果敢なハードワークを行い、ボールを持てば得意のドリブルで相手陣内に侵入。後半20分に奪った得点も、高い位置でボールを奪ってから一気にゴール前に持ち込んだことで生まれたモノだった。

 元々、このチームを牽引する存在だった松尾だが、メンタル面で課題を抱えていた。「ウチのチームでは一番上手いのですが、気持ちのムラがあったし、生活面でもルーズだった。自分は彼の担任もしているのですが、その観点から見てもルーズでした」と、相良監督も未熟だったと口にする。「私生活ではやらかしてしまった」と本人が話すように、これくらいならいいだろうという行動が見られていた。チーム全体での合宿中に先生たちよりも先にシャワーを浴びてしまい、スタッフから叱られることもあった。しかし、決められたことを守れないということは、チームスポーツであるサッカーでは大きな影響を及ぼす。その結果、得意な攻撃面では存在感を見せても、守備の部分を疎かにしてしまいチームに迷惑を掛けることとなった。

 迎えた最後の冬。「お灸を据えるという意味も合った」と言うように、相良監督は今大会の選手登録から、10番を背負っていた松尾を外すことを決断する。当然、チームにとって痛手ではあったが、彼の奮起や成長を促すという意味で最後の荒療治であった。「メンバーを外された瞬間は外れてしまって、どうしようと思った」と松尾が振り返るように、最後の大会に出られないという絶体絶命の状況。しかし、怪我人などが発生すれば、当日の朝までに3人まで選手変更が認められるということで彼はそこに掛けた。課題であった精神的な部分の弱さと向き合い、チームのためにできることを行ったのである。

 結果として、その頑張りが認められ、大会開幕当日の朝に松尾はメンバーへとエントリー。怪我人が出たというアクシデントがあったためではあるが、彼が見せた最後の頑張りを評価してのことでもあった。怪我をした仲間のためにという思いから、責任感も向上。実際に今大会は守備での貢献度も高く、「今大会は本当に守備で頑張ってくれている」と相良監督も彼の頑張りに太鼓判を押す。この準決勝でも高い位置から守備を行い、「そこまでやらなくてもいいってくらいやっていた」と指揮官が驚く程のハードワークでチームの勝利に貢献。背番号13を背負う復活のエースは、間違いなく決勝戦進出の原動力になっている。「アイツは絶対に点を決めてくれる」と主将のDF小山修司が話すように、チームの信頼を勝ち得た男が佐賀商を全国舞台へと導いて見せる。

(取材・文 松尾祐希)
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