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[選手権予選]監督不在のピンチを乗り切った鳴門が徳島市立を下し、3年ぶり4回目の選手権へ

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[11.15 全国高校選手権徳島県予選決勝 徳島市立高 0-1 鳴門高 徳島市球技場]

 第94回全国高校サッカー選手権徳島県予選決勝が15日に行われ、2年連続で選手権出場中の徳島市立高と3年ぶりの出場を狙う鳴門高が対戦。後半37分に奪ったFW坂本一真のゴールによって、1-0で勝利した鳴門が4回目の選手権出場を手にした。

 序盤から試合の主導権を握ったのは徳島市立。前半3分に右CKを得ると、ゴール前にパスを転がし、MF岸田大世がファーストシュートをお見舞いした。10分にも左FKから、ゴール前での競り合いに持ち込み、こぼれ球をDF上野謙太朗が頭で押し込んだが、枠を捉えることができない。以降もMF高畑勇人を起点に右から好機を作ると、17分には自陣中央でボールを奪ったDF吉川航平がそのままドリブルで前進し、相手PAめがけてスルーパス。フリーのMF金丸雅に渡ったものの打ち切れず、一度はクリアされてしまう。それでもDF鏡洋人が高い位置で拾って、再びゴール前に展開したが、後一歩が届かない。23分にもスルーパスからFW山本史弥がゴール前に抜け出したが、徳島市立GK河野匠哉の飛び出しに阻まれた。

 前半に徳島市立が放ったシュートが8本に対し、鳴門のシュートはFW川添晃の2本と坂本一の1本。耐える時間が続いた鳴門だったが、後半の立ち上がりは攻撃に転じる。8分には右CKのこぼれ球をMF南野心がボレー。それでも、「20分を過ぎてから相手を怖がって、DFが下がってしまった」(鳴門・計盛健一コーチ)ため、再び流れを失うと、21分には左サイド崩され、肝を冷やす場面も。24分には岸田をPAで倒し、PKのピンチを招いたが、河野が読みを的中させ、失点を回避した。

 延長戦も視野に入る中、試合が動いたのは37分。中央の引いた位置でパスを受けた川添がワンタッチで相手DF裏にボールを流すと、中央にいた坂本一がエリア右に猛ダッシュ。GKとの1対1に持ち込んで放ったシュートがゴールネットを揺らした。残り時間わずかとなってからは徳島市立のパワープレーを受けたが、鳴門は河野を中心に身体を張った守りで逃げ切り、タイムアップ。少ないチャンスを物にした鳴門が、3年ぶり5度目の選手権出場を掴んだ。

 3年ぶりの選手権出場を手にした鳴門だが、この一年は決して楽な年ではなかった。新人戦を制し幸先の良いスタートを切ったものの、県総体の決勝戦では、徳島市立に1-5と大敗。直後には3月末で定年退職した香留和雄元監督の後任が体調不良により、チームから離れたため、指導者不在の事態に陥った。春にチームを離れた8月に計盛コーチが復帰するまでの間は、「どんな練習をして良いかもわからないし、見る人がいないとダレてしまう奴がいたり、めっちゃ大変でした」(MF坂本優)とチームが一つにまとまらず、不穏な空気が流れていたという。

「チームメイトを信頼できなかったり、諦めてしまうことが癖になっていた」(計盛コーチ)というチームに手を加えたのは、メンタル面の立て直しと試合での約束事の見直し。加えて、香留監督が植え付けた「球際を激しく行く。高校生らしく諦めずに走る」鳴門らしいサッカーを土台に、一勝必勝で選手権予選を勝ち上がってきた。「全国で試合が出来るだけで、子どもたちにとってはご褒美。ここから先はあまり考えていない」と計盛コーチが口にしたように、全国でどれだけ戦えるかは未知数だ。だが、この日見せた粘り強い戦いぶりなら、白星がついてきても不思議ではない。

(取材・文 森田将義)

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