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[選手権予選]京都橘のU-18代表FW岩崎悠人が先制弾!右肩上がりの成長曲線描く2年生エース

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[11.14 全国高校選手権京都府予選決勝 京都橘高 1-1(PK6-5)洛北高 西京極]

 先制点の行方は試合の行方を占う上で重要だ。さらに言えば、いつ、誰が、どのように決めたのかということも影響してくる。この試合、京都橘高の先制点はそれらが全てプラスへと作用するものだった。

 時間は前半26分。京都橘は試合の入り方が良くなく、相手の攻撃に耐えていたが、リズムをつかめないでいた。そんな中、前線で虎視眈々とチャンスをうかがっていたU-18日本代表FW岩崎悠人(2年)は、この試合のファーストチャンスを逃さない。中盤のMF内田健太(1年)からの縦パスに反応してエリア内へ侵入。飛び出してきたGKを左へと交わして、無人のゴールへ蹴りこんだ。「(パスが)思ったよりインサイド(内側)に入ってきたので、ボールタッチというより(スペースへ)流しました。“GKを交わせばいい”と思っていたので」と、一連の流れを説明。GKを交わした際のドリブルは少し外へ流れたが、軸足となる右足をしっかり踏み込み、腰を回して左足でシュートを放つ身体の強さでゴールネットを揺らしている。それまでは洛北高が攻勢を仕掛けていが、この得点を機に試合の流れは一気に京都橘へと傾いた。ボールの奪いどころが定まらなかった守備が徐々に機能し始め、中盤で奪って攻撃へ転じる場面が増えていく。単発だった攻撃も、敵陣で組み立てる場面が生まれはじめた。エースの一撃は、先制点の持つ意味を充分に感じさせるものだった。

 ただし、その後はチャンスを生かせなかった。後半25分にはカウンターでFW梅津凌岳(1年)からパスを受けてPA内でシュートを放つも、枠を捉えられず。パスが外へ流れて簡単な状況ではなかったが、これ以降、後半の京都橘は決定機を作り出すことができていない。追加点を奪えなかったことで、相手の反撃を受け続けることとなった。1-1で突入した延長戦の後半5分には、右サイドからのクロスを決めてみせたが、胸でトラップした際にボールが腕に当たってノーゴールの判定。3度のチャンスで1得点に終わったことについては「天候(雨)もあるけれど、この中でも京都橘のサッカーをできるようにしたい」とチームとしての反省を口にしている。雨に伴うピッチ状況の悪さに加えて、決勝戦という大舞台で1、2年生がスタメンの半数以上を占める京都橘は、3年生だけで挑んできた洛北に押される時間帯が長かった。いかに自分たちで試合をコントロールするかは、全国大会へ向けての課題といえそうだ。

 今年の岩崎は、どんな試合展開においても得点を決めてきた。例えば、この京都大会では全5試合に出場。U-18日本代表からチームに合流したのは初戦の1週間前だったが、シード校として登場した3回戦・鳥羽高戦では全員で守備を固める相手から先制点を奪取。準々決勝・大谷高戦では自陣から70mをドリブルで突き進んだスーパーゴールを決めている。準決勝・久御山高戦ではチームに勇気を与える同点弾。そして冒頭で述べた決勝での先制点だ。年間を通して戦うプレミアリーグでも数少ないチャンスをゴールに直結させるなど“よい試合展開の中でゴールを決める”だけでなく“よくない試合展開でもゴールを決めて、流れを引き寄せる”という仕事を度々やってのけているのだ。2年生FWに多くを背負わせるのは酷なことではあるが、今年の彼の成長を目の当たりにすれば、そうした期待が集まるのは自然なことともいえる。決勝では前半に足を痛め、後半には一時ピッチから離れる場面もあった。軽度の負傷であったとはいえ、米澤監督は「(岩崎)悠人を交代させる選択肢はなかった」と信頼を口にしている。

 ただし、全国大会はそれだけで勝ち抜けるほど甘くはない。岩崎が述べたように、チームとしての反省点を改善していく必要がある。今年は代表招集によりチームを離れる機会が多かった。本人は「今年は若いチームで思い切りがある。そこに僕があわせていけばいい」と捉えており、米澤監督もコンディションなど状態を考慮して個別のメニューを与えるなど配慮もあったが、チームの構築に岩崎を組み込んでいく時間が限られていたのは事実だ。ここからの1か月半は代表の活動もない。一体感を持って選手権へ向かっていく中で、チームとしてのプラスアルファを積み上げていく時期だ。それができれば、右肩上がりの成長曲線を見せるエースの輝きは更に増すに違いない。

(取材・文 雨堤俊祐)
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【特設】高校選手権2015
連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ2015

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