beacon

[選手権予選]広島内定の四日市中央工MF森島司、伝統を背負って身に付けた強さとしなやかさ

このエントリーをはてなブックマークに追加

[11.14 全国高校選手権三重県予選決勝 四日市中央工高4-2海星高 三重交通グラウンドスポーツの杜鈴鹿]

 練達の四日市中央工高・樋口士郎監督をして「ナンボやっても難しい」と言わせるのが、高校サッカー選手権の「予選」。昨年、四中工はこの県予選決勝でまさかの敗北を喫してしまった。「普段通りにできないのが予選」(同監督)と言うが、2年生ながらチームの中軸を担ったMF森島司もまた、普段のプレーを出せぬまま、それどころか決定的な失点につながるミスまで犯し、失意のどん底に突き落とされることとなった。

 今年もまた予選決勝は独特の試合になった。前半から圧倒して4点差をつけながら、後半は完全に相手のペースに巻き込まれ、2点差にまで詰め寄られた。「奇跡」を予感して高まる試合会場のボルテージと比例して四中工側には焦燥感が募る。終了のホイッスルが鳴ると、伝統校のキャプテンマークを巻いた男、森島は肩の荷を下ろしたような表情を一瞬浮かべて、そのあとは何とも渋い顔になった。

「最後まで内容が良く終わってみれば、もっとみんなでワッと喜ぶ感じになったとは思うんですけどね」と笑いつつ、「でも勝てて良かった」と語る。昨年の決勝での悔恨は、もちろん忘れていない。「あれを機に、『自分がチームを勝たせるんだ』という気持ちが強くなったのは間違いありません」と、個人としての練習に打ち込みつつ、チーム全体のことをより考えて振る舞うようにもなってきた。それは樋口監督から森島に出された「課題」のようなものでもある。「アイツには背負ってもらわないとアカン」ということ。それはかつて、浅野拓磨に対して発せられたのと同じ言葉でもある。

 自覚はある。この日も「最初の5分はロングボールを多用して相手を押し込む」という狙いだったが、思った以上にそれが効果的だと見るや、あえて蹴り続けた。前半の4得点に直接絡んだのは1点目のCKと2点目の起点となったサイドチェンジだが、ゲームの流れを作るという意味で、4得点は森島の戦術的な判断が冴えた結果でもある。逆に劣勢だった後半は2失点目を喫した時点で「ここは耐えよう」と守備重視でチームの意思を統一。「去年は失点から崩れて、また崩れてという感じだったので」と流れをせき止めて、勝ち切ってみせた。

 来たる全国大会ではチームの主将として戦い、その上で「個」として何を見せられるか。加入の決まっているサンフレッチェ広島ではすでに練習にも参加し、「オフ・ザ・ボールの部分、二人目、三人目の動き出しとかサポートの意識とか勉強になったし、それをチームにも持ち帰っています」と言う。プロのステージに臨む前の最終舞台。恐らく広島のサポーターからも視線を集めることになるであろう選手権に向けて、「僕が軽いプレーをしたらダメなのは分かっているし、一つの球際、一つのパスにこだわっていきたい」と静かに意気込んでいる。

(取材・文 川端暁彦)

※↑別サイトへ移動します
【特設】高校選手権2015
連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ2015

TOP