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3か月に及ぶ生みの苦しみ…157ゴール到達の寿人「お待たせしました」

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[11.22 J1第2ステージ第17節 広島5-0湘南 Eスタ]

 本人もチームメイトもサポーターも、だれもが待ち望んだゴールだった。2-0の前半42分、その瞬間がやってきた。MF清水航平が左サイドを縦に突破し、ゴール前にクロス。DFアンドレ・バイアとの駆け引きから一瞬、裏を取った背番号11がヘディングでゴールネットを揺らす。サンフレッチェ広島のFW佐藤寿人がついにJ1最多得点記録に並んだ。

「自分らしいゴールだったと思う。ずっとアンドレ・バイア選手と駆け引きをしていて、おもしろかった。あの場面では一瞬、相手を上回れた。相手の背中を取って、あの瞬間、相手を無力化できた」

 8月29日の名古屋戦以来、8試合ぶりとなるゴールがJ1通算157得点目。FW中山雅史(アスルクラロ沼津)の持つJ1最多得点記録に並んだ。「日本サッカーを引っ張ってきたレジェンドの功績には遠く及ばないけど、ただ少し、数字上は追いついたのかなと」。尊敬するゴンがスタンドから見守る前で決めた157ゴール目。市原(現千葉)時代の01年3月10日、J1初ゴールを決めた相手もゴンがプレーする磐田だった。

「本当に特別な『157』という数字がここまで待たせてしまったんじゃないかなと。この試合で今季の34節が終わる。そのプレッシャーは感じていた。レギュラーシーズンの最終戦。今日取らないと、というのは思っていた。いつも目覚めはいいけど、今朝は起きてからずっと目覚めが中途半端で、そのことが頭をよぎっていた」

 あと1点に迫ってから約3か月。“生みの苦しみ”はピークを迎えていた。第2ステージ優勝と年間勝ち点1位の懸かったホーム最終節。そこで決めるのが寿人の寿人たるゆえんか。3万3210人の大観衆が見つめる前で、157ゴール目は必然とばかりにやってきた。

 得点後はゴンを意識したガッツポーズで喜びを爆発させ、控え選手からは「157」の数字がプリントされたユニフォームを手渡された。そして、チームメイトによる胴上げ――。

「相手のベンチ前で、試合中で、申し訳なかった」。対戦相手に対し、申し訳ない気持ちを感じながらも「青山選手と千葉選手が数試合前から『157』のユニフォームを準備してくれていた。チームメイトの心意気に応えることができてうれしかったし、素晴らしい仲間と喜びを共有できたことがうれしかった」と率直に語った。

「僕は体も大きくないし、そういう選手でもこういう記録を残せるということは、今のサッカー少年にとっても、希望を持ってサッカーをやっていってもらえるんじゃないかなと思う」

 そう胸を張った170cmの小柄なエースは、自分を囲む大勢の報道陣に向かって「お待たせしました」と頭を下げた。「今日取らないと、多くの方の期待が流れてしまうなと思っていた。王手をかけてから毎試合毎試合、足を運んでくれていたメディアの方々の期待も感じていたので」。そう言って屈託のない笑みを浮かべた。

(取材・文 西山紘平)

●[J1]第2ステージ第17節 スコア速報

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