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終盤投入で一撃決めたFW鈴木武蔵「勝ちきれる日本を」

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[11.26 練習試合 湘南 1-1 U-22日本代表候補 BMWス]

 焦る気持ちを抑え、わずかな出場時間に勝負をかけると鮮やかなゴールを決めた。負傷明けのU-22日本代表候補FW鈴木武蔵(水戸)は0-1の後半40分に投入されると、わずか3分後の43分に同点弾。ミドルレンジからの華麗な一撃でゴールネットを揺らした。

 左股関節痛などの負傷から復帰したばかりの鈴木。前日行われたフィジカルテストの数値も良くはなく、コンディションは「7割くらい」で「息もすごく切れた」という状況だった。それでも0-1で迎えた後半40分、手倉森誠監督から「裏に抜けたり、斜めに走ったり。足元にもらったら仕掛けろ」と指示を受けて、3トップの左に入ると、敗色濃厚なチームの希望となるゴールを奪い、存在感をみせつけた。

 出場から3分後の後半43分、鈴木にとっては最初のチャンスが訪れる。MF原川力からのボールがPA左の鈴木の前にこぼれてきた。「ルーズボールを先に触ろうと思っていて、こぼれたときは相手も引いていたし、ゴールへの軌道が見えた。打つことに迷いはなかった」と個人技で持ち込むと、右足から放たれたボールはネットを揺らした。

「怪我が長くて復帰して、また怪我をしてを繰り返していたので。ゴールからも遠ざかっていたし、試合をするのもあまり満足できる状態ではなかった。そんななかで点を取れたというのは嬉しかった」と殊勲のFWは微笑んだ。

 チームは土壇場のゴールで1-1のドロー。鈴木は「負けないことも大事。勝ちは絶対ですけど、負けないというのも大事なので、そこは良かったかな」と話しながらも、「勝ちきる強さが出てこないと。予選では悪い内容でも勝てば結果オーライなので。強く、勝ちきれる日本を求めていかないと」と力を込める。

 わずかな時間での起用について、手倉森監督は「今日は本当は使いたくなかったというのと、ピッチにも立たせたいという半々の思いがあったなかで、彼は5分しかできないだろうなと。5分あれば点が取れそうだなというところで実際に取ってくれた」と説明。「あの時間でも決められたことに対しては、アタッカー陣の競争に火を付けてくれたんじゃないかなと思う」と労った。

 今年8月にアルビレックス新潟から水戸ホーリーホックへ期限付き移籍した鈴木だが、故障が続いた。11月11日の天皇杯・F東京戦(0-2)で途中出場を果たすも、再離脱となり実戦から離れていた。苦しい時期を振り返ったFWは「他のFW陣が点を取ったり活躍しているのを見て、焦りがありました」と胸中を明かす。

 なかでも同世代のFW浅野拓磨(広島)の活躍を受けては、「拓磨とかは途中出場でたくさん点を取ってるし、年間首位にも貢献しているし、そこはすごく刺激になったというのはあります」と話すとおりだ。

 実戦から離れる日々。同年代のライバルの活躍はプレッシャーとなり、焦りが募った。「もちろん危機感はありましたし、怪我をして、サッカーができないときに焦っていた部分もあった」と言う。それでも「代表へ呼ばれた時には、もっとアグレッシブに自分の持ち味を最大限に見せていくことが大事かなと思いながら過ごしていました」と前を向き、日々のトレーニングに取り組んだ。

 すると負傷明けにも関わらず、約3か月ぶりに代表候補合宿に招集されると、ゴールという結果を残した。それでも本人はまだまだ満足してはいない。「これを続けてやっていくのが大事。この1点じゃさすがに満足できない」とキッパリ。「自分が目指しているところに向けて、チャンスをもらったところでは毎回結果を求めていくというのがFWとしては普通のこと。チャンスをものにしたいという思いがある」と貪欲に語る。

 1月にはリオ五輪出場をかけ、AFC U-23選手権が始まる。存在意義を示す一発を沈めたストライカーは「第一はコンディションを戻して、いい状態をアピールすることが大事。競争も激しいので自分の色を忘れずに特徴を出していきたい」と誓った。

(取材・文 片岡涼)

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