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[MOM354]高知大FW藤川真也(3年)_「サッカーできる足ではない」…苦難乗り越えた165cmの小兵

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.8 全日本大学選手権1回戦 高知大 2-1 愛知学院大 ギオンス]

 近年、初戦敗退が続いていた高知大を勝利に導いたのは、165cmの小兵FW藤川真也(3年=C大阪U-18)の活躍だった。

 初戦の緊張によって、チーム全員に堅さが見られた前半の役割は、「僕と勝田(一秀)が積極的に動くことで、ボールを引き出して、高知大の時間を作る」こと。「思ったよりもできた」と手応えを口にしたように、後方から入るロングボールに対し、積極的に絡みチャンスを引き寄せると、前半11分には中央でボールを受け、右SB帷智行(4年=西宮高)の攻め上がりを促がすポストプレーを披露。18分には、MF藤井勇大(3年=三田祥雲館高)の縦パスを胸でおさめると、右サイドに流れながらシュートを狙った。

 攻撃面での貢献もさることながら、「長いボールを入れても勝田が競り勝ってくれたし、相手DFの裏にこぼれても藤川が拾って抜け出してくれた。二人が前線でボールをおさめてくれたから、DFラインを下げる必要がなく後ろとしては楽だった」とDF西岡大志(4年=初芝橋本高)が評したように、奮闘は守備にも好影響を及ぼしていたのは間違いない。

 持ち味は背後への飛び出し。前半から果敢に相手DF裏に飛び出し、相手DFの手を焼かせたが、得点に至ったのはもう一つの売りである「身長が高くなくて、テクニックがあるわけでもない。ちょっとでも頑張るプレーというか、皆が嫌がるプレーを意識している」という動き。

 35分にDF山下宏輝(4年=都城泉ヶ丘高)の縦パスをPA手前で受けると、「一発勝負なので、相手が隙を見せたら“やってやるぞ”と思っていた。ここしかないと、死ぬ気で頑張った」と相手の激しいマークを背負いながらも、粘り強くボールをキープ。藤川の粘りに屈する形で、相手が体勢を崩すと、ボールが手に当たって、FKを得た。

 このキックをMF下園直輝(2年=東海大五高)が直接決めて、先制に成功。後半に入り、一度は相手に追いつかれ、藤川自身も「ボールが触れず、守備に回る時間が長かった」が、サイドに流れてパスを引き出し、強引な突破で好機を作るなど最後まで奮闘を続けた。

 今でこそ11番を背負い、チームに欠かせない存在となっているが、セレッソ大阪U-18に所属した高校時代は苦難の連続だった。一年目の6月に左足の第五中足骨を骨折。手術を受けた際に入れようとしたボルトの熱で骨が腐ってしまい、「サッカーできる足ではない」と医師に言われるほどの重傷を負った。懸命なリハビリを続け、高2の冬にはピッチに立てる状態まで回復したが、体重が最大で10kg増加したせいで、思うようにプレーできず。それでも、懸命に練習を続け、3年次にはプレミアリーグ出場を果たすまでに回復した。

 大学に入ってからも怪我の影響で、小指の骨が繋がっていない状態でプレーを行う。だが、満足にアピールできなかったC大阪時代とは違い、高知大では1年時のインカレ前からAチームに昇格。以降は交代の切り札に定着するなどサッカーを思う存分楽しんでいる。当初は、「流れを変えられるか不安を抱えてのプレーばかりだった」ものの、スタメン出場が増えた今季は「自分ができることが明確になっているので、やりやすい」と持ち味を存分に発揮し、チームに貢献。今ではチームになくてはならない存在だ。

 2トップを組むFW勝田一秀(2年=C大阪U-18)もC大阪時代は出場機会が少なかった選手。二人は、「試合に出られているだけでなく、今日みたいにこれまで経験できない相手と対戦できているのが嬉しい」という話をするという。「全国の強いチームに勝って、『俺たちは実力があるんだ』ってことを示したい」。この日の活躍は、そんな強い意志が実った形だったと言える。

(取材・文 森田将義)
●第64回全日本大学選手権特集

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