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[大学選手権]想定通りの1点勝負で守り勝ち、13年王者・大阪体育大が慶應義塾大撃破!

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[12.10 全日本大学選手権2回戦 大阪体育大 1-0 慶應義塾大 江戸陸]

 アパマンショップPresents第64回全日本大学サッカー選手権大会は10日に2回戦を行い、13年大会優勝の大阪体育大(関西5)と慶應義塾大(関東2)との一戦はMF久保田駿斗(4年=長崎日大高)の決勝ゴールによって大体大が1-0で勝利。大体大は12月13日の準々決勝で阪南大(関西2)と戦う。

 大体大の坂本康博監督は試合後、「120パーセント力を出してくれた。ディフェンスの意識を高めようと(宿泊地の)御殿場でやってきて、それを出してくれた」と選手たちを賞賛した。「上手い連中多いからかわされてしまう」(坂本監督)という理由から相手に対して距離を取って守るのではなく、鋭いアプローチをかけて自由にボールを持たせない。カウンターから素早いパス交換を見せた慶大に入れ替わられるシーンも何度かあったが、それでもゴール前では187cmの注目ルーキー、CB菊池流帆(1年=青森山田高)とCB羽田昇平(2年=金光大阪高)が跳ね返し続けてほぼ決定的なシーンをつくらせなかった。

 慶大はボールを保持してリズムをつくる狙いを持ちつつも、CB久保飛翔主将(4年=済美高、岡山内定)が「まず押し込んで。裏に行って、それを拾って押し込んでやりたかった」と語ったように、荒れた芝で繋ぐリスクを負うのではなく、長いボールを交えて攻撃を展開した。だが、それを多用しすぎたことでロングボールの応酬を得意とする大体大のステージで戦うことになってしまう。前半25分にはダイレクトのパス交換からFW田中健太(2年=横浜FMユース)が右サイドを一気に抜け出し、MF手塚朋克(2年=静岡学園高)がクロス。28分には右サイドで脅威となっていた手塚が突破から折り返し、最後は流れたボールを拾ったMF渡辺夏彦(2年=國學院久我山高)の強烈な右足シュートがゴールを捉えた。

 対して、速攻からクロスまで持ち込んでくる大体大は31分に全日本大学選抜のエースFW澤上竜二(4年=飛龍高、C大阪内定)がPAでDFを背負ったままリフティングしてバイシクルショット。また、35分にも積極的に左足ミドルを狙う。澤上には慶大のCB望月大知(3年=静岡学園高)とCB久保のどちらかが常にマークしている状況で自由はわずかだったが、それでも破壊力を示したことが相手への警戒心を強めさせて味方がフリーになる状況をつくり出していた。その効果もあったか、38分には久保田が素晴らしいランニングコースのドリブルで中央突破。最後はボールを受けたFW山田貴仁(2年=帝京長岡高)がフィニッシュまで持ち込んだ。
 
 そして後半8分、大体大が先制点を奪う。MF安田圭佑(4年=京都両洋高)の右クロスをファーサイドの澤上が中央へ折り返す。これを「(DFを引きつけてくれていたので)決めるだけだった」という久保田が左足でゴールへねじ込んだ。慶大も全日本大学選抜MF端山豪(4年=東京Vユース、新潟内定)やMF山田融(4年=横浜FMユース)、渡辺を中心にボールを保持しながら攻めるが、大体大はカウンターからそれを一気に裏返してシュートまで持ち込もうとする。慶大は29分に手塚が右サイドでDF2、3人を置き去りにしてクロスを入れるがこれも大体大の厚い壁に阻まれた。

 30分、大体大は菊池が治療のために一旦ピッチを離れ、坂本監督の指示で澤上をCBに配置。押し込んだ慶大は端山が澤上とのマッチアップから左足ミドルを打ち込んだが、これはクロスバーを叩いてしまう。諦めずにゴールを目指し続ける慶大はアディショナルタイムに右SB溝渕雄志(3年=流通経済大柏高)のロングスローから最後はPAの久保がシュート。だが身体でブロックした大体大執念のディンフェンスの前にゴールを割ることはできず、慶大は初戦敗退となった。慶大の端山は「ピッチ状態、試合展開でスピードアップしてお互いにオープンになっていって、それをコントロールできなかったことにひとつ敗因があるのかなと思っている」と唇を噛み、大体大・澤上は「(慶大は)繋ぐよりは自分たちに似たサッカーをしてきた。初めから1点差の勝負になると言っていた。守備から入って、守備をしっかり頑張ったから勝てたと思います」と胸を張った。

 大体大は準々決勝で阪南大と対戦する。後期の関西学生リーグ1部では0-6で完敗している相手。澤上は「しっかり守備して1点取って、1-0で勝つイメージでやっていきたい」と力を込めた。2年前の王者・大体大だが、今季はリーグ戦の後期11試合で2勝3分6敗と大ブレーキ。最終節、澤上が後半アディショナルタイムに決めたゴールによって、勝ち点、得失点差で並んだ立命館大を総得点で上回り、何とか5位で全国切符をもぎ取った。紙一重の差によって全国で戦うチャンスを得たチームは、守備面をより高めて今大会2試合は無失点勝利。狙い通りの試合運びで勝ち上がってきている。2年前の再現への期待も高まるが、それでも澤上は「2年前は結構余裕あったんですけど、今は余裕ない」と微笑み、坂本監督も「全ての条件が揃わないと勝てないですよ。力があるから勝てるわけ無い。力があっても勝てない。このトーナメントは」とインカレを勝ち抜くことの難しさを口にする。油断はせずに勝つために徹底し、勝つための条件を揃えるだけ。前々回王者は挑戦者として、一戦一戦を戦い抜く。
 
[写真]後半8分、大体大は久保田が決勝ゴール

(取材・文 吉田太郎)
●第64回全日本大学選手権特集

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